外装パーツに使われるABS・FRP・カーボンの違い




バイクのエンジンや足回りには頑丈な金属が使われている。一方、カウルやカバー類には、軽量なABSやFRP、またはカーボンなども用いられる。各素材の違いをチェックしてみましょう。

樹脂パーツの普及により「鉄馬」から「軽快馬」に変身

かつてバイクは「鉄馬」と呼ばれていました。これは鉄(金属)で出来た馬という意味です。フレーム、エンジン、足回りはもちろん、フェンダー、カバー類など、あらゆる箇所に金属が使われていました。

80年代前半、カラフルなプラスチック製のカバーで覆われたスクーターは日常の足として人気を獲得。80年代後半には市販車へのカウル装着が認可され、レーシーなプラスチック製のカウル類を装着したレーサーレプリカは、若い世代を中心に爆発的なヒットとなりました。

スズキRG250ガンマ

カウル付きの市販第一号はスズキRG250Γ(ガンマ)。

フェンダー=ハンマーで叩いて直す時代から、フェンダー=補修剤で直す時代へ。硬派で重厚な「鉄馬」というイメージから、オシャレでスポーティーな「軽快馬」へと姿を変えていったのです。

80年代当事、プラスチック製品が多用されたレーサーレプリカやスクーターを見て「プラモデル」と揶揄していた“鉄馬世代”のライダーもいました。

スクーター&レーサーレプリカの登場により、外装系アフターパーツも飛躍的に発展。オリジナリティーに跳んだFRP製カウルなど、工夫を凝らした外装パーツが豊富にラインナップされました。90年代には超軽量なカーボン素材も多数加わり、外装系アフターパーツはますます充実化しています。

ホンダタクト

写真上はスクーターブームの黎明期に登場したホンダタクト(初期型・1980年)。カラフルなプラスチック製の外装に身を包んだこのモデルは、性別や年代を問わずに大ヒット。スクーターの登場により、バイクのイメージは大きく変わりました。

CR110カブレーシング

写真上は1962年に登場した市販レーサー、CR110カブレーシング。レーサーながらロケットカウルはプラスチックでもカーボンでもなく、何とアルミの叩き出し。

DOHC4バルブエンジン搭載のCR110カブレーシング

外装パーツに使われる人気の素材

バイクのカウルやフェンダーには、下記の素材を用いるのが一般的です。

ABS樹脂

ABS樹脂

プラスチックの定番ともいえる合成樹脂。カウルなどの外装パーツに多用される。耐熱性、耐油性、耐衝撃性に優れ、光沢も良い。着色も容易、切削加工のしやすさも大きな特徴。プラスチック素材の中では比較的安価。正式名称はアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン (Butadiene)・スチレン (Styrene)。純正パーツに多用。

耐衝撃性  ★★☆ 
 軽量さ  ★★☆
 補修のしやすさ   ★★★
 パーツの価格   ★☆☆

FRP

FRP

ナイロン繊維の約7倍もの強度を誇るグラス繊維で強化された特殊プラスチック。正式名称はファイバー(Fiber・繊維)・レインフォースド(Reinforcesd・強化)・プラスチック(Plastic)。ABS樹脂と同じく切削加工しやすく、素材の価格も比較的安価。第二次世界大戦前のアメリカで生まれ、当初は戦闘機の外観素材などに使用。社外のアフターパーツに繁用されています。

耐衝撃性  ★★☆ 
 軽量さ  ★★☆
 補修のしやすさ   ★★★
 パーツの価格   ★

カーボン

カーボン

味のある独特の網目模様が特徴的な、カーボン繊維と樹脂の複合素材。ロケットなどの宇宙事業や航空業界などの分野で発展・活躍してきました。ABS樹脂やFRPよりも高強度かつ超軽量なので、外装パーツに多用。耐熱性にも優れているため、マフラーのサイレンサーカバーなどにも用いられています。ABS樹脂やFRPに比べ、価格はやや高め。軽量化とカスタム度アップを狙った社外のアフターパーツに繁用。製法の違いによりドライカーボンとウエットカーボンがあります。

耐衝撃性  ★★★
 軽量さ ★★★
 補修のしやすさ   ★☆☆
 パーツの価格  ★★★

なぜ純正の外装類はABS樹脂がメインで、社外品はFRPが多いのか?

ABS樹脂は大量生産向き

一般的にABS樹脂でパーツを製作する場合、オス型とメス型の金型に加え、プレス機を使用。素材となるABS樹脂をメス型に流し込み、オス型でプレスすれば早くて簡単に、しかも大量に生産できるのが大きなポイントです。

ただし金型とプレス機は非常に高価なもの。またプレス機の設置には一定の場所も必要。バイクメーカーからABS樹脂製カウルを受注している工場は、数千個・数万個単位を短時間で生産することによって金型やプレス機などの設備投資費を賄い、儲けを出しています。

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少量生産向きなFRP

FRPは一般的にABS樹脂製パーツを生産するような広い工場でなくても、一定の広さがあればOK。また高価なプレス機や金型の設置の必要がなく、メス型のみで成形できるのがポイントです。

生産方法はメス型に粘土状になった素材を「塗り付ける」ような要領で作業。基本的に職人によるハンドメイドとなります。大量生産には不向きながらも、少数であれば即時に様々なタイプに対応できる「小回りの効きやすさ」が大きな特徴です。

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インナーカウルとアウターカウルは、見た目も手触りも違う…

樹脂の種類が違います

一般的に純正のアウターカウルにはABS樹脂が使用されていますが、スクーターのインナーカウルやインナーパネルには「PP樹脂」と呼ばれる黒色の素材を採用。

スクーターのインナーカウル

ややザラザラした手触りのPP樹脂は、ABS樹脂よりも弾力性に優れているため、スクーターのリアフェンダーなどにも採用。

ABS樹脂に比べ、PP樹脂は表面が白っぽく色あせしやすいのがネックです。専用のPP樹脂用復活剤などを使ってこまめにメンテナンスしましょう。

FRP製カウルなどに採用の「ゲルコート仕上げ」とは何?

塗装するための樹脂コーティングです

メス型から剥がしたFRPの表面は、ザラザラとした繊維質。表面は無数グラス繊維で構成されているため、素手で触れると繊維の一部が指に突き刺さることもあります。そんなFRPの表面を、滑らかな塗装向きにするための樹脂コーティングが「ゲルコート」です。

ゲルコート仕上げのパーツはキズを防ぐため、装着前に塗装するのが基本。なお社外パーツのゲルコートには、一般的に白ゲルコートと黒ゲルコートがあります。

ゲルコート仕上げ

白ゲルコート仕上げのリアカウル。

FRPカウル

白ゲルコート仕上げを塗装したもの。

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