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レースの視点から見たインナーローターとアウターローター

モンキーやエイプの場合、ストリートではアウターローター、レースではインナーローター、これは常識。レースの視点から見たインナーローターやアウターローターの良さを、4ミニチューンのスペシャリスト「ファルコン」と「キタコ」に伺った。

ストレートの長いロードコースではアウターローターが有利か!

– ファルコンは、これまで数々のスプリントレース仕様、耐久レース仕様、ドラッグレース仕様を手掛けてきました。レースでは、やはりインナーローターを使っているんですか?

ファルコン(以下、フ) 「灯火義務のある耐久レースなどを除き、インナーローターを組み込んでいます。レース仕様の場合、クランク軸は軽くなるほうが断然いい。レースは基本的に保安部品が必要ないですから、アウターローターは使いません。ちなみにクランクもウエイト部などを削り込んだ、軽量型のレース用を使用しています」

– インナーローターとレーシングクランクでレスポンスはどのくらいアップします?

フ 「それはもう、シビれるくらい違います。インナーローターは高回転までスルスルとよく回りますよ。余分な贅肉がそぎ落とされ、軽くなったような感じです」

– レースとは少し話はそれますが、市販の軽量型アウターローターを装着するメリットは?

フ 「ノーマルよりも低中速回転域のトルクが細くなりますが、保安部品の機能を維持しながら鋭いレスポンスが味わえる。これに尽きるでしょう」

– サーキットでもアウターローターは使えますよね。

フ 「もちろん使えます。特にストレートが長く、高速コーナーも多いロードコースでの耐久レースでは、アウターローターが重宝しますよ。インナーローターに比べ、発進加速やコーナーの立ち上がり加速などは劣りますが、車速が乗りやすいし燃費も伸びる。ただし大幅にパワーアップした4ストミニの場合、注意点がひとつあります」

– それは何でしょう。

フ 「ヘビーなノーマルのアウターローターを取り付けた状態で、何度も急激にエンジンブレーキを利かせたとする。するとクランク軸が金属疲労を起こし、最悪の場合、クランク軸がねじ切れたり、折れたりする場合があります。クランクシャフトは回転をやめようとするんだけど、アウターローターは慣性の法則で回り続けようとする。これが原因です」

– ノーマルのアウターローター(フライホイール)はヘビーですから。

フ 「ノーマルのアウターローターは約1kgの重さ。高回転で回るIkgの金属を、たった1本のクランク軸が支えている。この負担は相当なものです。チューニングエンジンにノーマルのフライホイールを使用する時は、高回転域でのエンジンブレーキやシフトダウンなど、”急激な”動作を避けるべきですね」

ファルコンが手掛けたDE耐出場のモンキーR改。このマシンは、燃費よりもエンジンのレスポンスや加速を優先。その結果、インナーローターを採用した。

フライホイールの削り過ぎに要注意

「レスポンスを極限まで上げたい。でも灯火類を生かしたいので、インナーローターは使わない」というユーザーの中には、旋盤やボール盤を駆使し、ノーマルまたは市販のフライホイールを限界まで削り込み、軽量化する者もいる。

この時に注意したいのが、削り過ぎによる強度の低下。金属疲労を起こしたフライホイールが回転中に破損すると、コイル、フィッティングプレート、クランクシャフト、ジェネレーターカバーなど、周辺のパーツがすべて壊れてしまう可能性があるので要注意だ。

アウターローターとインナーローターの違い

大径のフライホイールがコイルの周りを回転するアウターローターは発電量も多く、プラグ点火用コイルも基本的に1つでOK。

一方、コイルの内側で小径ローターが回るインナーローターは、発電量が少なく、またコイルはすべてプラグ点火用となるため、保安部品は使えない。

ただしクランクシャフトへの負荷が少なく、アウターローターよりもレスポンスが鋭くなるのが大きな特徴。

タイトなコースでのスプリントレースではインナーローター有利?

『レースにおいてインナーローターの装着は常識』と思いがちだが、必ずしもそうでない場合がある。レースの視点から見たインナーローターに関するエピソードを、パーツメーカーの老舗「キタコ」に伺った。

エンジンが回り切ると、スピードが乗らなくなる!?

– レースシーンにおいて、インナーローターよりもアウターローターのほうが有利になるということはありますか。

キタコ(以下、キ) 「かつてX4-Rという0-50m用のドラッグマシンで0-400mにアタックしたことがあります。そのマシンは0-50m用ということで、レスポンスも良く、ピックアップに優れたインナーローターを採用していました」

– 結果はどうでしたか。

キ 「パワーがMAXに達した時点でも、エンジンはさらに回り続けようとしました。しかし速度は頭打ちになり、それ以上伸びなかった。ある程度までエンジンが回り切ると、スピードが乗らなくなるという感じですね」

— 遠心力がある程度必要だったのでしょうか。

キ 「これはあくまでもX4-Rに限った話ですが、例えば0-200m以上の距離ならば、適切な重量のアウターローターを使用したほうがいいかもしれません」

– 遠心力をフル活用してMAXスピードを上げる作戦ですか。

キ 「単純に遠心力をフル活用するというよりも、フライホイールの重量や点火タイミングなどをバランスよく煮詰めてタイムを縮めるという作戦です」

写真は2000年から2005年に活躍したキタコのワークスマシン、「X4-R」(2000年後半の仕様はカウルを装着)。モンキーをベースに、キタコ製ウルトラSEシリンダーヘッドなどで124ccにフルチューン。50余mの短距離を走るにあたり、ピックアップやレスポンスを重視。そのため、アウターローターではなくインナーローターを採用している。

【インナー/アウターローターの関連ページ】

→ インナー/アウターローターの基本

→ アウターローターの分解・取り付け

 

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