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ヤマハ RZ250は正統派2スト250スポーツの元祖! 市販レーサーTZ250の血統を継承

既存の常識を覆した2スト250スポーツ。それはヤマハRZ250!

ヤマハ RZ250……1980年(昭和55年)8月発売 当時の価格:35万4000円

RZ250

峠道ではナナハン(750cc)をカモる速さを誇ったヤマハRZ250。写真は初期型のホワイト。

ヤマハが誕生して25年。高性能なバイクづくりに邁進してきた同社は、世界を舞台にしたレースでも活躍。「4ストのホンダ」に対し、「2ストのヤマハ」として世界に名を轟かせた。

1970年代後半、バイク先進国である欧州を中心に、排気ガス規制が強化。そのため、世界のバイク市場では、徐々に2ストローク車の規模は縮小されつつあった。

そんな世界情勢の中で、ヤマハは250ccの新時代を提唱。250ccクラスの頂点を目指したリキッドクール(水冷)&ザ・エクストラ2ストロークモデルが、このRZ250だ。

RZ250は、既存の2スト250クラスの存在意義を見事に覆し、市販車の常識を打ち破ったともいえる先駆者的な1台。

RZ250は1979年の東京モーターショーにて参考出品され、大きな話題を呼んだ。市販時はモーターショーでの展示モデルに比べ、市販モデルはウインカーが丸く変更された程度。カラーリングを始め、外観上はほぼそのままの状態でリリースされた。

ヤマハの市販レーサー・TZ250のテクノロジーを投影

写真は初期型のホワイト。

写真は初期型のホワイト。

RZ250最大の特徴は、何といっても“2ストのヤマハ”の意地ともとれるこだわり。これまでヤマハが培ってきた2ストのレーシングテクノロジーを、この1台に凝縮したともいえる。

パワフルな水冷2ストロークツインエンジン、強靭でしなやかなフルダブルクレードルフレーム、軽量化にも貢献するモノクロスサスペンションなど、当時の世界最強市販レーサー・TZ250のディメンションを随所に投影しているのがポイントだ。

その荒々しい乗り味から、荒馬、じゃじゃ馬などとも呼ばれたカワサキ マッハⅢなど、当時の過激な市販2ストモデルには、かなり粗削りな部分があった。具体的には、ストッロルを不用意に開ければ、フロントが浮いて竿立ちになるほどのパワーを発揮する一方で、直線番長(直線のみ速い)、止まらない(ブレーキが貧弱)、曲がらない(フレームや足周りが貧弱)等々。

しかしRZ250は、最強市販レーサー・TZ250の血統を受け継ぎながらも、スポーツ性、安全性、快適性を高次元でバランスよく確保。乗る者を選ばない(とはいってもRZ250は非常に過激だった)、市販車に相応しい、正統派2ストミドルスポーツの地位を見事に確立した。

初期型のRZ250は、現在でもリスペクトされ、程度の良い中古車は驚異的な価格で取り引きされている。

クラス最強の35馬力!水冷2スト並列2気筒247ccエンジンを搭載

写真は初期型のブラック。

エンジンは水冷2ストローク並列2気筒ピストンリードバルブ247cc。ボア×ストロークはΦ54mm×54mmのスクエア型で、圧縮比は6.2。点火方式はCDI。キャブレターは250ccクラスとしては小径のVMΦ26がチョイスされている。

当時の2ストマシンレベルとしては、振動も高次元で抑制。ブラックコーティングされた精悍なラジエターによって象徴されるパワーユニットは、エアロダイナミックスを極めた流麗なスタイリングを形成。

RZ250はそのスタイリングを見ただけで、過激さをイメージさせるが、実際そのパフォーマンスは想像以上に強烈。最高出力は250ccクラス最強の35ps/8500rpm(最大トルクは3.0kgm/8000rpm)。また充実の装備ながら、車体重量は139kgまで軽量化。パワーウエイトレシオ=3.97kg/psという、当時としては驚異的な数値を達成した。

ミッションは峠やサーキットでも強みを発揮する、レーシーなクロスレシオの6速。燃費はカタログ値で37km/Lとし、経済性も吟味されている。ちなみに市街地での実燃費は、15km/L前後が目安だった。

リアショックはオフロード車に導入されていた、オンロードモデル初のモノクロスサスペンションを採用

市販レーサー・TZ250のテクノロジーを投入したRZ250。暴力的とも言える速さゆえに、RZ250に乗るライダーには、テクニックとともに強い自制心が要求された。

ストレートはもちろん、ワインディングロードで、より確かな走りを確実に支えるのが、軽快なデザインのイタリック・アルミキャストホイール(前後とも18インチ)。前後タイヤはバイアスのチューブレスタイプを選択し、サイズは前3.00-18、後3.50-18を選択。

フロントブレーキはシングル式の油圧ディスクを採用(リアはΦ180mmドラム式)。139kgの軽量な車体を安全にコントロールするには、十分なポテンシャルを発揮。

フロントフォークはスタンダードな正立タイプ。リアショックはオフロード車に導入されていた、オンロードモデル初採用のモノクロスサスペンション。RZ250のモノサスは、ホイールラベルを110mmに設定。イニシャル荷重は5段階調整可能で、ソフトな乗り心地と卓越したロードホールディングを確保。

水冷エンジンのメリットを最大限に活かし、走行音の低減化にも成功。新設計のマフラーにより、排気音は高周波音を大幅にカット。また、コンピューターに基づく振動吸収式エンジンマウントにより、全域に渡って振動を低減。ハイパフォーマンスなスポーツマシン=静かであるという新しい基準を示し、社会環境への対応も図られた。

ライディングポジションは、熟成されたモノクロスサスペンション、ニーグリップ部に逆アールを付けた大容量の16Lガソリンタンク、790mmの低いシート高との組み合わせにより、スリムなイメージに設定。また、後退したフットレストやヨーロピアンスタイルのハンドルポジションにより、一体感のあるスーパースポーツライディングを演出。

メーター類は見やすさを考慮し、55度傾斜にセット。新設のテンプメーターは、タコメーターにビルトイン。各種インジケーターはスモークドレンズを使用して高級感をアップ。

ヘッドランプは明るさで定評のある、ハロゲン球60/55Wを採用。テールランプの断線警告灯と合わせ、夜間走行の安全性を向上させた。

市販レーサー・TZ250の血統を誇るRZ250は、前身の「RD250」とは明らかに異なる特性。峠道では、ナナハン・キラー!

写真は初期型のホワイト。

RZ250のベースとなったのは、前身モデルの「RD250(最高出力30ps/7500rpm。重量150kg)」や「RD400」ではなく、市販ロードレーサーのTZ250。RZ250の各部にはTZ250のノウハウが各所に生かされており、それは走りにも直結。

低くブラックにカラーリングされたコンチネンタルハンドル、55度に傾斜した大きめのスピードメーターが印象的。フルスケール1万回転のタコメーターの下部には水温計が設置済み。

アルミプレートに接続されたステップは、ヤマハの空冷2ストモデル「RD250」に比べると、かなり後退しており、軽い前傾姿勢のポジションとの組み合わせにより非常にスポーティー。

セルフスターターは付いておらず、始動方式はキックのみ。ヤマハが造り慣れた2ストローク・インダクション吸気のツインエンジンだけに、どんな時でも基本的に1発で始動OK。スロットルを少し煽ると、パランパラン! という静かな2ストサウンドを奏でる。

ブラックに仕上げられたRZ250のマフラーは、塗装ではなく黒メッキ仕様。排気音はRD250に似ており、アイドリングも1000回転くらいで安定。2点支持という異例のエンジン・マウント方式を採用したRZ250は、アイドリングから2000回転あたりまで、ユニットが振動でブルブルと震える。特に静止状態でスロットルを大きく煽ると、振動はさらに大きくなる。

低速域のトルクはスカスカだが、走行時の振動は無し。6000回転以上は暴力的な加速力を発揮!

1982年にはRZ350風のカラーリングに変更。写真はホワイト。

1982年にはRZ350風のカラーリングに変更。写真はブラック。

ところが一旦走り出すと、静止時にあった振動は消去。クラッチやシフトチェンジは軽く、マシンの完成度の高さを感じる。最高出力35ps/8500rpmのハイパワーエンジンだけに、低速トルクは無いに等しく、4ストのようにラフなクラッチ操作は禁物。3000~4000回転付近では、半クラッチをうまく使わないとギクシャクしてしまい、下手をするとエンストする。具体的には、ストッロルの反応が悪いのだ。

5000回転~6000回転付近でトルクの谷間があるが、このラインを超えてからの驚異的な加速力は、2ストロークエンジンの真骨頂。タコメーターの針は、あっという間にピークパワーの8500回転を過ぎ、9500回転のレッドゾーンに突入。2ストレーサーを彷彿させる甲高い排気音もGOOD。

テストコースの最終コーナー(100R、150Rの複合)を4速135km/hで抜け、長いストレートを走行。スピード&タコメーターはジリジリと上がり、フルスケールの160km/hスピードメーターを振り切り、さらに上昇。タコメーターは9100~9200rpmでピタリと静止したまま。この時点で、実測ではおそらく165km/h以上に達していると思われる。

RZ250はTZ250譲りの優れた足周りもポイント。タイヤがグリップをつかむ、グリップ力が異様に高いのが特徴。バンク角も深く、走行中にステップが設置するまでバンクさせると、まるでレーサーマシンに乗っている時と同じくらい、地面が近くに迫っているのが分かる。

ブレーキはRD250のようなカツン! とした鋭さが消え、扱いやすさが向上。効きも十分で、マシンコントロールも良好だ。

なお、レッドゾーンを超えると、急激にトルクが低下するため、シフトアップは早めに実施するなど、パワーバンドのキープは必須。6速ミッションのレシオも適切で、これぞスーパースポーツと思わせるアグレッシブな走りが楽しめる。

排気音はマフラーが共鳴するようなイメージで、レーサーのTZ250を彷彿。TZ250の雰囲気を漂わせるエンジンは、クランクケース右側、オイルポンプ外側にウォーターポンプを持った強制潤滑方式を採用し、サーモスタッドは無し。

とはいえ夏などの暑い日は、エンジンを始動すれば即座に水温計が作動し、2分程度で60℃に到達。ちなみに夏の渋滞路でも、60℃を大きく上回ることなく、オーバーヒートの恐れは感じない。

街中では扱いづらく、燃費も悪いRZ250。しかし当時のユーザーが、RZ250に魅了された理由とは?

新設計で構成されたRZ250は、前進的存在のRD250とはまったくの別物。高速域での性能を伸ばし、中速域も可能な限り活かすというイメージに仕上げられている。

RZ250は5000回転以下のトルクがスカスカで、低中回転域を多用する街乗りではシフトチェンジの回数が増え、クラッチミートにも気を使わねばならず、明らかに不向き。また、実燃費も13km/L前後と、4スト車に比べて決して経済的とはいえない。

しかし4ストにはない、ここ一発のドッカンパワーを活かし、軽い車体を最大限に活かしてコーナーを駆け抜ける。軽量かつ瞬発力のあるRZ250。峠道においてはテクニック次第で、ナナハン(750cc)をブチ抜くポテンシャルを秘めている。これがRZ250の最大の魅力であり、醍醐味といえよう。

写真は国内でカウル装着が認可され、限定発売された貴重なYSPモデル。ビキニカウル、アンダーカウルを装備。

ヤマハ RZ250(初期型) 主要スペック

メーカー:ヤマハ
車名:RZ250
型式:4L3
全長:2080mm
全幅:740mm
全高:1085mm
ホイールベース:1355mm
最低地上高:170mm
シート高:790mm
乾燥重量:139kg
最小回転半径:2.5m
乗車定員:2名
燃料消費率:37.0km/L(50km/h走行時)
エンジン:水冷2ストローク2筒並列(直列)
排気量:247cc
吸気形式:ピストンリードバルブ
内径×行程:Φ54mm×54mm
圧縮比:6.2
最高出力:35ps/8000rpm
最大トルク:3.0kgm/8000rpm
燃料供給方式:キャブレター燃料供給装置
形式:VM26
燃料タンク容量:16L
燃料の種類:レギュラーガソリン
エンジン始動方式:キックスターター式
点火装置:C.D.I.式点火
プラグ標準搭載・型式:B8ES
搭載バッテリー型式:12N5.5-3B
バッテリー容量:12V-5.5Ah
エンジン潤滑方式:分離給油(2スト)
2ストエンジンオイルタンク容量:1.60L
クラッチ形式:湿式多板
変速機形式:リターン式6段変速変速機
操作方式:フットシフト
1次減速比:2.869
2次減速比:2.562
変速比:1速 2.571/2速 1.776/3速 1.317/4速 1.082/5速 0.961/6速 0.888
動力伝達方式:チェーン
スプロケット歯数・前:16
スプロケット歯数・後:41
チェーンサイズ:530
標準チェーンリンク数:102
フレーム型式:ダブルクレードル
キャスター角:26°50′
トレール量:101mm
ブレーキ形式:F 油圧式ディスクブレーキ形式/R 機械式リーディングトレーリング
ショック:F テレスコピック正立フォーク/R スイングアーム式モノショック
タイヤ:F 3.00-18 バイアスタイヤ/R 3.50-18 バイアスタイヤ

ヤマハ RZ350……1981年(昭和56年)2月発売 当時の価格:38万9000円 250とはタンク&サイドカウルのデザインが異なる。350は欧州仕様と同じく、フロントフェンダーにもラインが入っているのが特徴。250のフロントブレーキはシングルディスクだが、35馬力から45馬力にパワーアップした350はWディスク化。写真は定番のホワイト。 写真は希少なレッドカラー。1980年(昭和55年)8月、既存の常識を覆した2スト250スポーツ「RZ250」が衝撃的にデビュー。わずか半年後の1981年(昭和56年)2月に登場したのが、RZ350だ。国内発売に先駆け、欧...
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