モンキーやエイプのフロントフォークやリアショックには、サーキットや走りに応じて自由自在にセッティングできるモデルもある。各部の働きやサスペンションの構造、セッティング方法などを探ってみよう。
リアショックのセッティング箇所
ハイパワーエンジンにも対応する本格的なレース用リアショックは、走りやマシンの仕様に合わせて細かくセッティングできる調整機能を装備。自分流のセッティングが可能だ。オーリンズ製モノショック用リアサスペンションを例に、セッティング箇所とそれぞれの特徴を見てみよう。
<1> 車高アジャスター
リア部の車高調整が可能な箇所。ネジ式になったアジャスター部分を回せば、上下に伸縮するしくみ。
<2> 圧側減衰力アジャスター
サスペンションが沈み込む速さを調整する機能。リヤショックの沈み込みが早いと感じる場合はダンパーを効かせ(オイルの流れる速さを上げる)、逆に沈み込みが遅い場合はダンパーを抜いてやる(オイルの流れる速さを下げる)。
<3> プリロードアジャスター
イニシャルアジャスターとも呼ばれる。「イニシャル」とは縮めた状態で組み付けられているスプリングのセット荷重の初期数値のこと。イニシャルアジャスターはセット荷重の数値をライダーの体型や乗り方に合わせて設定することで、乗り心地が自由に変更できる機構。イニシャルをかける(バネを縮める)と、乗り心地が硬く感じる。
一方、イニシャルを抜く(バネを緩める)と乗り心地が柔らかく感じる。多くは専用工具で調整。ネジ式なった無段階調整式モデル、段階的に調整できる段階式調整モデル(5段階調など)などがある。
<4> 伸び側減衰力アジャスター
沈み込んだサスペンションが、伸びる(戻ってくる)速さを調整する機能。伸びが早いと感じる場合はダンパーを効かせ(オイルの抵抗を上げる)、逆に伸びが遅い場合はダンパーを抜いてやる(オイルの抵抗を下げる)。
※ガス入りショックとは?
ショックアブソーバー内にオイルと窒素ガスを封入したタイプ。空気に比べ、窒素ガスは熱膨張率が少ない。衝撃を長時間、しかも連続で吸収し続けても、ショックアブソーバーの性能に変化が少ないのが特徴。
サスペンションの構造
フロントフォークの構造を見ながら解説しよう。フォークスプリングは衝撃を吸収・緩衝した際に、伸び縮みし続ける特性を持つ。その特性を抑制するのが、フォークオイルによる抵抗力だ。
フロントフォークの場合、フォーク内に密閉されたフォークオイルが「オリフィス」と呼ばれる小さな穴を通過し、抵抗力を発生。縮んだバネが急激に伸びようとする力を和らげてくれる(伸び側の減衰力)。オリフィスが発生するこの抵抗力を「減衰力」、またこの装置を「ダンパー」と呼ぶ。減衰力は、主に伸び側にて重要な働きをしている。
フォークオイルの粘度も重要なポイント
フロントフォークは中にあるフォークオイルの粘度を硬くしたり柔らかくするすることで、減衰力が微妙に変化する。街乗りレベルでは体感しづらいだろうが、限界ギリギリの走りを要求されるレースではフォークオイルの粘度は重要なポイントとなる。大型バイクレースはもちろん、ミニバイクレースでも季節やコースによってオイルの粘度を変更するというレーサーは多い。
アウターチューブ、ボトムケースとも呼ばれる。この中にインナーチューブやオリフィスを備えたシリンダーなどがセットされる。
<2> インナーチューブ
インナーフォークパイプとも呼ばれる。この筒の中にフォークスプリングがセットされる。
<3> シリンダー
シートパイプとも呼ばれるフォークオイルに浸されたパーツ。減衰力を生み出す「オリフィス」という小さな穴を設置。
<4> リバウンドスプリング
シリンダーに取り付ける小さなスプリング。フォークスプリングの伸びをサポートするパーツ。
<5> オイルロックピース
フォークブーツ下部からのフォークオイル漏れを防ぐパーツ。シリンダーの下に取り付ける。
インナーチューブの中にセットされた、路面の衝撃を吸収するフォークスプリング。ロードコース用のフォークスプリング等々、走りに応じた社外品もラインアップ。
シリンダーに取り付けられたリバウンドスプリング。フォークスプリングよりも小さくて巻数が少ない。
フォークオイルに浸されるインナーチューブ部。くびれ部の内側にバルブが設置されている。
上部から見たフォークブーツ内。フォークブーツの上部(インナーチューブとの動作部)には消耗部品のダストシール、オイルシール、ガイドブッシュ、スライドブッシュなどがセットされる。
フロントフォークのプリロードアジャスター
ストリート走行を前提とした多くのノーマル車は、フロントフォークのセッティング機能を持っていない。しかしレース専用モデル、NSF100のフォークには、トップキャップ上の調整ボルトをマイナスドライバーで締め込むor緩めるだけでフォークスプリングの固さ調整が行える、プリロードアジャスター機能を装備。
プリロードアジャスター機能のないフォークでも、社外のプリロード調整用アジャスターキットが取り付けできる場合もある(NSR50/80用フォークなど)。走りを重視するユーザーは、ぜひチェックしてみよう。
ノーマルエイプのフロントフォークはプリロード調整のできない固定式トップボルトを採用(写真左)。写真右はプリロード調整が可能なSP武川製のフォークアジャストキット。同社製φ27正立フロントフォーク専用。
NSF100用フォークなどレーサーやスポーツモデルに採用のプリロード調整機能。先端部にあるネジ式のアジャスター部を締め込むと、後端部が下降してフォークスプリングを短縮。このスプリングの伸び・縮みにより体重、路面、コース等に合わせたセッティングが可能となる。
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