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4ミニツーリング体験記 – ゴリラで450km走破

モンキー・ゴリラのツーリング

一般的に原付一種(50cc未満)の移動範囲は片道10km、原付二種(125cc未満)は片道20kmが妥当だといわれます。今回は“片道20km以内が妥当”な88ccのゴリラを使い、片道225km、往復450kmを走破。道中、エンジンがぶっ壊れないことを祈りつつ、いざ出発しました。

■日時:2015年9月21日/23日(シルバーウィーク) ■天候:晴れ

良くいえばチャレンジ、逆にいえば無謀か…

筆者は定期的に2011年3月11日の震災で被害に逢われた方々が暮らす仮設住宅へボランティアに行っています。そこで知り合い、以来親しくさせていただいている福島県いわき市在住のSさんより、「9月21日から23日の連休に、長野県の松原湖にあるキャンプ場でバイクのツーリング会があります。私も愛車のハーレーで行きますのでぜひ来てください」とのお誘いを受けました。

しかし当方、あいにく高速道路が利用できるビッグバイクは所有していません。なので長野県まで車でのんびりとドライブ。現地で大自然を満喫し、キャンプ場でバーベキューを楽しもう!ということになりました。

ところが出発3日前の18日(金)夜、ふと考えた。「88ccのモンキーやゴリラで、長野まで行けるだろうか?」と。のんびりとはかけ離れた、良く言えばチャレンジ、人によっては無謀ともとれる計画が、頭の中にボヨーンと浮かんだのです。

翌朝早速、妻に相談。「あんな小さなバイクで!?」という当初の予想を裏切り、妻は「面白そう」とあっさり快諾。この瞬間、一般道のみを利用した片道225kmの長い旅が始まったのでした。

ホイールをノーマル8インチから10インチに大径化したゴリラ。足回りはNSR50用フロントフォーク、フロントディスクブレーキ、160mmロングスイングアーム、クアンタム製リヤショックで強化。エンジンは49ccから88ccにボアアップされています。

片道200kmは未知なるゾーン

ゴリラでの長距離走行といえば、都内までの片道50km。つまりこれまで1日100km以上の走行をしたことがありません。片道200kmなどは、完全に未知なるゾーン。ましてや今回は、群馬県と長野県の県境にある、登り坂の続く峠をせっせと越えなくてはいけないのです。

ゴリラのエンジンは、優れた吸排気効率を誇るデイトナ製ハイポートシリンダーヘッドに、放熱性の高いアルミ製の52φシリンダーを組み込んだフルチューン仕様。また真夏の走行でもエンジンオイルをクールダウンしてくれる、大型のオイルクーラーを追加装備しています。

これらはすべて自分で組んだもの。ただし私はバイク屋さんでもなければ、カスタムの専門家であるチューナーでもありません。おまけに横型エンジンをフルカスタムしたのは、ゴリラに搭載しているこのエンジンが初めてです。

妻には「オレはゴリラで行く」と豪語したものの、少し冷静になった私は自分に問うた。「お前、いきなりそんな長距離を、しかもたった一人で走るなんて本当に大丈夫か?」と。「山ん中でレッカーを呼ぶ時に携帯の電波が立たなかったら一人ぼっちになるぞ」「鹿やイノシシに遭遇するのは嫌だろう?」守りに入ろうとする“女房・子供持ち”のもう一人の自分が囁きます。ボンネットから煙を上げる愛車の前で呆然と立ち尽くす、堤真一の憔悴した顔(“頼れるねぇ”の保険のCM)が頭をよぎりました。

とはいえ、「やる」と決めてしまったものは仕方がない。不安を抱きつつも「最低限のことはやっておこう」と思い、出発前日、奮発して100%化学合成油の高性能エンジンオイルに交換。またガソリンスタンドで空気圧をチェックし、各部の増し締め、グリスアップなどを実施して長旅に備えました。

視認性を考慮し、バックミラーを右側のみのカスタムタイプから、左右付きの純正タイプに交換。これで後方確認はばっちりです。

回転を抑えつつスローペースで走行

出発当日。まずは荷台にリュックをセット。今回は自転車用の長さ3mのゴムひもを使い、荷台とリュックをグルグル巻きにします。

私はツーリングの途中、脱いだカッパや上着などの荷物を落としてしまった経験が多々あります。恐らく括り付けが甘かったのでしょう。あるはずの荷物が、気が付けば無くなっているのです。

青信号に変わった瞬間にバイクをフル加速させた結果、後ろに乗っていた“人間”を落下させたこともあります。幸い振り落とされた(らしい)友人の男にケガはなく、彼はフルフェイスヘルメットを被ったままカール・ルイス、今風にいえばウサイン・ボルトのごとく両腕を豪快に振りながら、物凄い勢いで私の乗るバイクを追いかけてきました(そのまま置いていかれると思ったらしい)。

その姿をバックミラーに捉えたものの、私は瞬時に状況が飲み込めず、「むむ、アイツは一体何をやっているんだ?」と思い、しばらく他人のフリをして徐行し、ようやくバイクを停止させるに至りました。

残念ながら荷物は友人のように追いかけてはきません。また後続車にも危険が及ぶので、しっかりと括り付けます(※注1)。次にガソリンタンクへマグネット式になったタンクバッグを装着。タンクバッグの中にはレーシングマシンのように“マスの集中化(※注2)”を狙い、重量のあるものを入れます(というよりも単に落下防止のためです 笑)。シートの前後に荷物を配置したため、ポジションはややきつめ。「無事に帰ってこられますように!」と祈りつつ、朝7時に自宅を出発しました。

埼玉方面に向け、国道16号線を北上。左側レーンをスローペースで走る自動車を見つけては、まるで金魚のフンのように背後を走ります。これはエンジンの回転を抑えるため、また走行風による疲れを防ぐためです。自動車による強引な追い抜きから逃れることができるのもポイントだと思います。事故なく故障なく目的地に辿り着くため、金魚のフン走行でペースを抑えてきましたが、10時半には埼玉県熊谷市に到着。

続いて13時半には世界遺産に登録された『富岡製糸場跡』のある群馬県富岡市に着きました。休憩を兼ね、富岡製糸場跡周辺をしばし散策します。

※注1:固定していても路上に荷物を落下させ、後続車等の走行に危険を与えた場合は『転落積載物等危険防止措置義務違反』となります。反則金は自動二輪6000円、原付5000円。違反点数は1。(2015年9月現在)

※注2:重い物を車体の中心に集めることで、倒し込みや加速・減速時の制御が良くなること。

出発して約2時間が経過した朝9時頃。埼玉県さいたま市のコンビニで休憩中。積載スペースに限りがあるため、今回のツーリングでは極力荷物を減らしました。

朝10時頃。田園風景が広がる埼玉県羽生市郊外のバイパスを走行中の一コマ。周囲では稲刈りが行われています。

10時半、埼玉県熊谷市に到着。写真は熊谷駅前。真夏には38度まで上昇する「日本一暑い街」も当日は23度。空はどんより曇っていますが結構蒸し暑い。

12時半、埼玉県と群馬県の県境にある国道254号線沿いの「道の駅 神川」で休憩。連休のためビッグバイクでツーリングする人も多い。

13時半、世界遺産に登録された『富岡製糸場跡』のある群馬県富岡市に到着。富岡製糸場跡周辺の人の多さに唖然!中に入って見学したかったのですが、あまりの行列の凄さに早々と撤収しました。製糸場跡周辺には様々なお土産屋さんが新登場している模様。

やや回転を上げながら峠を越える

富岡市を抜けると、いよいよ峠越えです。事前に調べた情報によれば、群馬県と長野県を結ぶ国道254号線の峠は、往路がほぼ登り。トルクの細い88ccのゴリラは、高回転をキープして走る必要がありそうです。

実際に走ってみたところ、この峠道の勾配は想像していたほどきつくない。ただし50~60km/hで走り続けるため、4速もしくは3速で回転数は6000rpm以上をキープ。当日は休日ながら、交通量はかなり少なめ。後ろから煽ってくる意地悪な車両や強引に抜いていく車両もなく、四輪も二輪も非常にマナーが良くて助かりました。

写真上は峠の入り口付近。写真下は30分ほど走ったところにある頂上付近。平地に比べるとかなり冷え込んでいます。

帰りは高回転を多用。ショートストローク型エンジンは面白い!

無事に峠越え完了。エンジンに負担を掛けぬよう、再び回転を抑えながら目的地を目指します。市街地を抜け、目的地に辿り着いたのは、夕方の17時頃。スローペースかつ2時間に一度は休憩を取っていたので、到着までに10時間を要しましたが、予想していたよりも身体の疲労はありません。

翌々日の復路は往路とは一転し、高回転を多用してペースを上げました。8時半頃に長野県を出発し、16時には千葉の自宅に到着。高回転まで気持ちよく回るボア52φ×ストローク41.4mmの88ccショートストローク型エンジン(ノーマルはボア39φ×ストローク41.4mmの49ccロングストローク型)の面白さと楽しさを思う存分、堪能することができました。

登り坂の多い峠を越え、長野県佐久市に入ったのは15時頃。山を降りるとコスモス街道で「コスモス祭り」が行われていました。峠に比べて温かく、緊張感もやや解けました。

17時頃、目的地のキャンプ場に到着。日が暮れる前に到着したのでほっと一安心。

■ツーリングの走行ルート■

<今回のツーリングで気付いたこと>

1、ツーリング車両はハーレーが多い。次にカワサキのZ系が多い。

2、ロードタイプの自転車が多い。峠を走る車両も多数あり。

3、道路を走る車両のマナーが良い。無茶苦茶なスピードで走るバイク、また煽ったり強引に抜いていくクルマはいなかった。

キャンプ場でバーベキューを堪能。自然の中での食事はとにかく美味い!最高のゼイタクです。

キャンプ場の最寄り駅となるJR松原湖駅を訪問。のどかな無人駅です。

<今回のツーリングで感じたこと>

1、原付2種を使った一般道のみの片道225kmのツーリングは決して無謀ではなく、計画を立て、休憩さえしっかりととれば実に楽しいものだと感じた。ただし回転数の上がりやすい、油温が上昇してエンジンに負担のかかりがちな峠の登り坂には気を付けたい。

2、モンキー・カブ系のエンジンは頑丈である。

3、故障した時のためにJAF(会員証1枚でクルマにもバイクにも対応)、もしくはレッカーサービスのある任意保険に必ず加入しておくこと。

 

パワーのあるビッグバイクに比べると、小さくて非力な原付2種でのロングツーリングは精神的及び肉体的な疲労がどうしても大きくなります。出かける前にはしっかりと計画を立てておきましょう。(レポート:北 秀昭)

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