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キャブレターのセッティング方法 – キャブレターの基本

キャブレターのセッティング方法

キャブレターのセッティングは難しそうだが、作業自体は至って簡単

マフラー交換、シリンダーヘッドチューン、ボアアップ、ボア&ストロークアップなど、エンジンチューニング時に必要となるキャブのセッティング。一見難しそうだが、作業自体は至って簡単。ジェット類の交換・テスト走行・交換~の繰り返しだ。セッティングが決まった時の喜びは、何物にも変えがたいはず! モンキーやエイプにも人気のケーヒンPE24φキャブレターを例に説明しよう。

キャブレターの特徴

キャブレターは非常に繊細なもの。マフラーの抜け具合、排気量、エアクリーナーの有無などによって、セッティングは異なる。

また天候、気温、気圧、湿度などによっても違ってくる。特にチューニング車の場合、季節や天候によってジェットの番手を変更するのは常識となっている。

夏場…気温が高くて湿気の多い夏場は、酸素の密度が低下。混合気は濃くなる。

冬場…気温が低くて湿気の少ない冬場は、酸素の密度が上昇。混合気は薄くなる。冬場のエンジン始動時、チョークレバーを引いて混合気を濃くしてやる主な理由はこれ。

雨の日…湿度が上昇して酸素密度が低下。混合気は濃くなる。

STEP・1 エンジンが冷えている時に使用するチョークレバー

黒いレバーは、冬場や早朝などエンジンが冷えた状態の時に使用するチョークレバー、略してチョーク。エンジンを始動させる前に、レバーを上側に引いて使用する。気温が下がれば酸素密度が上がり、混合気は薄くなってしまう。チョークを引くことで、空気の通路を一時的に遮断。混合気が濃くなるというしくみだ。

チョークを戻した状態。チョークはエンジンが温まると、必ず戻すことが前提。チョークを引いたままだと、エンジンがギクシャクしてまともに走らない。

チョークを引いた状態。エンジンが冷えてかかりが悪い時は、チョークを引いて始動後、しばらくアイドリング。エンジンが温まり、安定してきたらチョークを戻してやる。

STEP・2 スロットルストップスクリューでアイドリングを調整する

左右に回転させてアイドリングの回転数を設定する、アイドリング調整用のネジ。スロットルバルブの開き具合を微調整するしくみ。

★セッティング方法

時計回りに締めれば、アイドリング回転数は上昇。反時計回りに緩めれば、アイドリング回転数は下降する。エンジンが温まった状態で徐々に緩め、エンジンが停止しない位置に調整する。一般に1000rpmから1500rpmあたりが目安。インナーローター、社外アウターローター、軽量アウターローター装着車は一般に~3000rpmあたりが目安となる。

STEP・3 エアスクリューで混合気の濃さを調整する

スロージェットにつながる、低回転域の混合気調整用スクリュー。時計回りに締め込むと混合気は濃くなり、緩めると混合気は薄くなる。

★セッティング方法…暖気運転後、エアスクリューを全閉の状態(時計回りに締めた状態)にする。少しずつ緩め、アイドリングの回転数が高くなる位置で停止。スロットルを軽くあおり、吹き上がりの良い位置にエアスクリューを微調整する。全閉の状態から、1回転+1/2回転緩めたくらいが目安。

★スロージェットはこんな時に要交換…たとえば3回転緩めてもアイドリングの回転数が高くならない=混合気が濃い場合はスロージェット(パイロットジェットとも呼ぶ)の番手を下げる。また、全閉から1/2回転緩めたあたりで回転数が上昇してしまう=混合気が薄い場合はスロージェットの番手を上げてやる。濃いままだとスタート時のレスポンスがもこつき、薄いままだとスロットルのツキが鈍くなる。セッティング終了後は、再度スロットルストップスクリューでアイドリングを調整する。

STEP・4 スロージェットを交換する

スロージェットを交換するには、フロートチャンバーボディーを取り外す。取り外すその前に、必ずガソリンコックをOFFにしておくこと。フロートチャンバーボディーの取り外しはPE24φの場合、プラスの取り付けネジ2個を緩めるだけでOK。取り外したら、浮き沈みによってガソリン量を一定に保つフロート(黒い部分)が姿を見せる。

ガソリンが溜まるフロートチャンバーボディー内。中央付近にある上方に伸びた管(矢印)は、ガソリンが一定量以上になった場合、外へ流し出すためのもの。ガソリンが溢れるのを防いでいるのだ。

マイナスドライバーを使い、左右のフロートの間に固定されているスロージェットを取り外す。ネジ山を潰さないよう、ドライバーをしっかりと押し付けながら緩めるのがポイント。また、取り付けの際は、あまりきつく締め過ぎないことが大切。

取り外したスロージェット。左から♯42、♯45、♯48。スロージェット及びメインジェットには、様々な番手(♯で表記)がある。番手とは口径、つまりガソリンの通路のサイズ。「番手を上げる」とは、口径を広げたジェットに交換して燃料を濃くすること。「番手を下げる」とは、口径を狭めたジェットに交換して燃料を薄くしてやることを示す。

STEP・5 ジェットニードルのクリップ位置を変更する

ジェットニードルは、低中回転域~高回転域に作用。筒状のニードルジェットの中に、針状のジェットニードルを出し入れして混合気の量を調節している。ジェットニードル先端部に固定されているクリップの高さを変更してやることで、混合気の量が調整できるしくみ。トップカバーを取り外すと、スプリングが姿を見せる。キャブレターを逆さに向ければ、挿入されていたスロットルバルブが外れる。

円柱状のスロットルバルブ(FCR28φやTM24φは板状のフラットバルブを採用)。中央にジェットニードルが固定されている。

ジェットニードルは、スロットルバルブの上部に“ひ”の字型のクリップで固定。ラジオペンチでクリップを取り外す。

分解されたスロットルバルブ、ジェットニードル、クリップ。

★ジェットニードルのセッティング方法…クリップを上げる=ジェットニードルの取り付け位置が下がり、混合気が薄くなる。
逆にクリップを下げる=ジェットニードルの取り付け位置が上がり、混合気が濃くなる。

★こんな時にクリップ位置を変更…混合気が薄い場合は低中回転域から高回転域にかけてのトルク感がなくなり、濃い場合はエンジンの回転が不安定になる。

STEP・6 メインジェットを交換する

メインジェットは“メイン”という名の通り、中高回転域を担当。スロットル開度1/2から全開域までをつかさどる。PE24φキャブレターのメインジェットは、ニードルジェットとともにスロージェットの上に固定されている。

★こんな時にメインジェットを変更…混合気が薄いと高回転域でのトルクがなくなり、加速が鈍る。その場合はジェットの番手を上げて、混合気を濃くする。逆に混合気が濃すぎる場合は高回転域でスロットルレスポンスがもたつく場合が多い。その場合はジェットの番手を下げ、混合気を薄くする。

ニードルジェットとメインジェットを分離する。取り外しにはボックスレンチや小さめのモンキーレンチなどの工具を使用する。

すべてメインジェット。左から♯102、♯105、♯108。番手はジェット横もしくは頭の部分に刻印されている。メインジェットは1個単位、もしくは異なった番手が数個セットになったものがリリース。

ほとんどのキャブレターは車両に装着したままメインジェットの交換ができるよう、フローとチャンバーボディーの底にホールディングボルトを採用。

ジェット交換後は、スパークプラグの焼け具合もチェック

キャブレターのセッティングはテスト走行も重要だが、スパークプラグ先端部にある絶縁体の焼け具合(○内)の確認も非常に重要。これを見れば、混合気の燃焼状態がすぐに分かる。

キツネ色…燃焼状態は良好。
黒く湿っている…混合気が濃すぎてカブリ気味。
白っぽい…混合気が薄くて焼け過ぎの状態。

スパークプラグの先端部(○内)は、歯ブラシ等のナイロンブラシで定期的に掃除することが大切。ネジ部はワイヤーブラシでOKだが、先端部は電極や絶縁体に傷が付く恐れがあるのでNG。なお、プラグは何度もカブらせる(湿らせること)と寿命が急激に低下するので注意が必要。

→ スパークプラグやキャブレターをチェックする方法 | バイクのエンジン始動不良

★各ジェットの役割分担

★症状と対処法の一例

全開時にエンジンがボコついてパワーが出ない…ガスが濃いメインジェットの番手を下げる

全開時にエンジンが息継ぎをする、またはノッキングを起こす…ガスが薄い→メインジェットの番手を上げる

中回転域で息継ぎや失速を起こす…ガスが薄い→ニードルジェットのクリップ位置を一段下げる

中回転域でもたつき、加速が鈍い…ガスが濃い→ニードルジェットのクリップ位置を一段上げる

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