一見、ノーマル用シリンダーヘッドと高性能シリンダーヘッドは同じように見える。しかし細部をじっくりと見てみれば、両者はまるで別物。12Vモンキー用シリンダーヘッドを参考に、2つの違いを確認してみよう。
ノーマル用シリンダーヘッドのポイント
ノーマル用シリンダーヘッドは、49ccの排気量、3ps強のパワーでいかに効率良く、しかも低燃費で走れるかを研究し尽くして設計されたもの。つまりパワフルさよりも、実用性が重視されているのだ。→ モンキー用エンジンの人気の秘密
仮にノーマルヘッドのまま、大幅に排気量をアップしたらどうなるのだろう? 各部のバランスが崩れ、まともに走らなくなってしまう。
そこで必要なのが社外シリンダーヘッド。75cc程度のボアアップならノーマル用シリンダーヘッドでも間に合うが、88ccまでアップするとヘッドの交換が必要となる。
高性能シリンダーヘッドのポイント
ノーマル用シリンダーヘッドとの違いは、まずスムーズな吸気と排気を可能にする、形状を最適化&大径化した吸排気ポート。また、エンジン内に大量の混合気を送り込む大径の吸気バルブ、排気効率を大幅に向上させた大径の排気バルブなどを装備していること。
燃費を重視したノーマルヘッドに対し、高性能ヘッドはパワーを重視したアグレッシブな仕様。スポーティーな走りが思う存分楽しめるというわけだ。
4ストエンジンの吸気ポート
写真上はノーマルの吸気ポート。この孔にキャブレターのマニホールドが接続される。ポート径は14mm。
大幅に大径化された高性能ヘッドの吸気ポート。サイズは23.5mm。
4ストエンジンの排気(エキゾースト)ポート
写真上はノーマルの排気ポート。この孔にマフラーが接続される。ポート径は14mm。
こちらは吸気ポートと同じく、大幅に大径化された高性能ヘッドの排気ポート。サイズは23.5mm。
4ストエンジンの燃焼室
シリンダーとの合わせ面。中央には半球状の燃焼室が設置。燃焼室とはピストンの上下運動によって混合気が圧縮され、爆発が起こる場所。燃焼室内には吸気バルブ(写真左側)と排気バルブ(写真右側)がセットされている。
12Vモンキー用ノーマルヘッドの燃焼室。写真左側の吸気バルブフェイス径は19mm、写真右側の排気バルブフェイス径は16mmというサイズ。高性能ヘッドに比べ、ノーマルの燃焼室は50cc用の39mmピストンに合わせた小径のもの。
高性能ヘッドの燃焼室。写真左側の吸気バルブフェイス径は27mm、写真右側の排気バルブフェイス径は23mmまで大径化。写真はピストン径を拡大した排気量アップ用のため、燃焼室の径はノーマルよりもやや大きめに設定されている。
4ストエンジンの吸排気バルブ
燃焼室から取り外した吸排気バルブ。バルブステムとは、バルブフェイスまで伸びる棒の部分のこと。12Vモンキー用ノーマルのバルブステム径は5.5mm。
写真の高性能ヘッド用バルブは、軽量かつ高い剛性を誇るチタン製。また、バルブステム径は4.0mmまで小径化。フリクションロスの低減化、レスポンスの向上、エンジンの高回転化などのメリットがある、贅沢でレーシーなアイテムだ。
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