4ストロークエンジンは「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」の4工程を、ピストン二往復で完結させる方式。一方、2ストロークエンジンは「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」の4工程を、ピストン一往復で完結させる方式。エンジン停止時の混合気吸入から排気ガス排気までの工程を、順を追って見てみよう。
4ストとは異なるシンプルな構造が特徴
4ストよりも部品点数が少なく、パワーも出しやすい2ストエンジン。吸排気バルブやカムシャフトを持たないため、特にシリンダーヘッドは4ストよりも見た目はシンプル。
そのシンプルなエンジン構造は、ボアアップ用パーツなどにも反映。4スト用よりも安価に設定されているのが特徴だ。「4ストよりも安価で、しかも4ストを上回るパワーが獲得できる」ということから、まだまだ2ストは根強い人気を誇っている。
4ストのシリンダーヘッド付トゥディ用ボアアップキット(93.4cc)。シリンダーヘッドに吸排気バルブやクランクシャフト等を装備するため、2ストよりも構造は複雑。しかも重量はヘビー。また価格も2スト用各種ボアアップキットよりも大きく上回るのが一般的だ。
2ストエンジンの動き
①エンジン停止時
吸気と排気をピストンで、しかも吸気と排気をピストンで同時にこなす2ストロークエンジン。まずはエンジン内の動きを見てみよう。イラストはエンジンが停止した、エンジン内に混合気がまったく吸い込まれていない状態。
②キック始動またはセル始動を開始、リードバルブ開放
クランキング(キックを蹴る、またはセルフスターターを回転させてクランクを回転させる)を開始。するとピストンの上昇による負圧によってリードバルブの弁が開き、エンジンのクランク室に混合気が吸入される。
リードバルブはシリンダーの吸気孔(シリンダーとキャブレターの間)に装着する、4ストにはない2ストならではのパーツ。クランク室に吸入された混合気がキャブレターに逆流するのを防いでくれる。
③混合気をクランク室に密閉
ピストンが上死点(もっとも高い位置)に到達すると負圧がなくなり、リードバルブが閉じられ、混合気はクランク室に密閉される。
シリンダー内で上下運動を繰り返す2ストエンジン用ピストン。2スト用ピストン(写真)の頂上部には、4スト用ピストンのような吸気・排気バルブフェイス(傘の部分)を逃がすための切り込み(バルブリセス)が設けられていないのが特徴。
④掃気ポートが開いて混合気が燃焼室側に移動
ピストン下降に伴い、掃気ポートが開放。ピストン下降によって行き場を失った混合気が、シリンダーヘッド方向に移動する。
水冷エンジンのシリンダー。中央の丸穴はピストンが上下するスリーブ部。シリンダーの内側に見える3つの孔は、キャブレターやリードバルブにつながる掃気ポート。周りの空間は、シリンダーを冷やすための冷却水通路。
⑤混合気を圧縮、同時に混合気も吸入
ピストンが上昇。ピストンによって掃気ポートと排気ポートが塞がれ、密閉した混合気を圧縮。これを2次圧縮と呼ぶ。同時にピストン上昇による負圧によりリードバルブが開かれ、エンジン内に混合気が導かれる。
混合気の通路となるリードバルブ。シリンダー側の吸気孔(シリンダーとキャブレターの間)に装着する。
⑥プラグが着火して混合気が爆発
混合気が圧縮(2次圧縮)され、上死点付近で着火。燃焼室内(半球形状の凹んだ部分)で爆発する。その反動でピストンは一気に下降。今度はクランク室に密閉された混合気が、ピストン下部で圧縮される。これを1次圧縮と呼ぶ。
混合気の爆発運動が行われるシリンダーヘッドの燃焼室。中央の穴はスパークプラグの取り付け穴。
スパークプラグの電極部分。理想的なタイミングで火花を飛ばすことにより、混合気を爆発させる。
⑦排気ポート・掃気ポートが開く
ピストンが急激に下降するとともに、排気ポートと掃気ポートが開放。1次圧縮によって混合気が燃焼室側へと一気に移動する。「混合気の燃えカス」である排気ガスは、新しい混合気に押し出されるかたちで勢いよく排出。
なお、真ん中が膨らんだチャンバーは、新しい混合気が排気ガスと一緒に外へ出てしまうのを防ぐため、サイレンサー手前の“絞り”の部分で排圧を反転さている。以下は⑤~⑦の繰り返し。
シリンダー内に設けられた掃気ポート。この角度では3箇所が確認できる。
中央の孔が排気ポート。両脇の穴は掃気ポート。
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