こんにちは、4ミニ.net運営の北です!
9月の連休に、千葉~長野まで往復450km(宿泊先でのツーリングを含めれば合計637.5km)のツーリングに行ってきました。
ゴリラはボア52Φの88cc(ストロークはノーマルの41.4mm)。峠道では高回転域を多用し、急激なシフトアップ&ダウンを繰り返し。「回して楽しめる」ショートストローク型エンジンならではの面白さを思う存分体感できました。
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4ミニツーリング体験記 – 88ccゴリラで標高2127mを越える
「高回転域だのシフトダウンだの、バイクのことはよく分からん…」という方へ。自動車で例えると、以下のような状況です。
目次
【マニュアル車の場合】
急激な坂道を2速全開で駆け上っているとします→坂道が余りにも急なので失速してきた(汗)→すぐさまミッションを1速に落として加速→エンジンの回転が上がる(エンジン音がブォーンと大きくなる)。
【オートマチック車の場合】
急激な坂道を駆け上っているとします→坂道が余りにも急なので失速してきた(汗)→すぐさまアクセルペダルを一瞬戻し、再び踏み込んで加速→エンジンの回転が上がる(エンジン音がブォーンと大きくなる)。
つまるところ、
随分と酷使した。
かなり無茶苦茶な使い方をした。
もっと加減というものを知るべし。
というアンバイです(反省してます)。
このようなことを繰り返していると、当然エンジンやミッション等々、関係各所に物凄く負担がかかります。僕自身、シフトダウン&アップを繰り返しながら、「ペースダウンしなければ、絶対に壊れるぞ…」と思ったものです。
しかしゴリラは壊れず、長野~群馬~埼玉~千葉へと元気に帰ってきました。
「いやはや、いい旅だったねぇ。やっぱり横型エンジンは頑丈だな。ウチへ帰る前に、ビールでも買ってくるべぇ!」
僕は自宅から100mほど離れた近所のスーパーで買い物を済ませ、ビールの入った白いナイロン袋をぶら下げ、ゴリラを発進させたのでありました。散々酷使したことなど、すっかり忘れて。
悲劇はその直後に起こったのです。
1速にシフトしたミッションが、2速に入らない
本来ならばガチャリという感触がして2速3速へとチェンジできるはず。しかし左手でクラッチをしっかりと握り、左足のつま先から血が出るほど何度も何度もシフトペダルをかき上げてみても、ミッションはウンともスンともいいません。足がダメなら手でどうだ! チェストォ~! しかしまったくの無反応。ゴリラよ、目を覚ませ…。
…今のゴリラを例えるのなら、微動だにしない無表情な奈良の大仏様です。
よく見れば、薄目を開けた大仏様。ゴォーン(鐘の音)。自宅まで残り100mでご愁傷さま。残り100mで。これ、実話です。では今回、僕がこうむった「被害の確率」を計算してみましょう。
637.5km=6375m。6375m÷100m=63.75
「壊れてしまった」と後ろ向き・ネガティブに考えるよりも、前向き・ポジティブに考えましょう。僕は63.75倍もの確率を潜り抜け、運良く帰ってきたのです。不幸中の幸い。自宅近くで本当に良かった。
ところでもしもバイクが出先で壊れた場合、自宅まで引き上げてくるのにどのくらいの費用がかかるのでしょう?
旅先でのバイクの引き上げ料金はHow Much?
- JAFの場合
2005年よりロードサービスの対象車種にバイクを追加。原付、スクーター、ビッグバイク、サイドカー、三輪などバイク全般に対応。1枚の会員証で自動車だけでなくバイクも自動車と同じ内容のサービスが受けられる。24時間・365日、全国どこでもサポート。入会金+年会費:1年6000円/2年9500円。
≪主なサービスと料金・会員の場合≫
バッテリー上がりやチューブレスタイヤのパンク応急処理:無料。
レッカー搬送:15kmまで無料
15km超過1km毎に720円
≪主なサービスと料金・非会員の場合≫
バッテリー上がり:1万2880円(基本料+作業料)
チューブレスタイヤのパンク応急処理:1万2880円(基本料+作業料)
レッカー搬送:1万2880円(基本料+作業料)+1km毎に720円
※各料金は2015年11月現在のもの
いやあ、結構なお値段ですね。ちなみに上記は昼間(8時~20時)の価格。夜中や早朝の場合は割増となります。
「もしも故障したら?」について事前に考えていたこと
僕が想定していたのは、レッカーで現場からもっとも近い駅まで搬送してもらい、駅前にある駐輪場に駐車。駐輪場がない場合はガソリンスタンド等の店舗にお願いして一時的に預かってもらい、電車で自宅に帰宅。後日、自動車で車両を引き取りに行くという方法。
ただし現実問題として、地方の駅には電車(ディーゼル車)が1日数本しか走っていないところも珍しくありません。その場合、故障した当日に自宅まで辿り着くのは厳しいでしょう。また時間だけでなく、電車代、車両引き取りのためのガソリン代、JAF非会員の場合はレッカー代、その日に帰れない場合は宿泊代など膨大な金額がかかります。
ちなみにバイクで長距離ツーリングに行く時は、もしもの時のために、工具一式を積んだ車両運搬用のトランポ(トラックやハイエース等)を並走させるのが定番です。
そういう意味では、今回のツーリングは大きなリスクを抱えたチャレンジでした。ゴールの100m手前でトラブルという今となっては冷や汗モノの旅でしたが、道中で感じたあのドキドキ感は一生忘れられないものとなりました。感謝!
ここからが本題!
ゴリラを襲った具体的な症状とは?
・1速に入ったまま、ニュートラル及び2速~5速にシフトチェンジできない。
・クラッチは正常に作動している。
・トラブル発生時、またトラブル発生前後にエンジンからの不自然なノイズや衝撃はなかった。
エンジンを分解して不具合の原因を探る
クランクケースの分解を想定し、今回はフレームからエンジンを降ろして作業します。エンジンの降ろし方、エンジンの分解方法は下記を参考にしてください。
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エンジンを降ろす前に、エンジンの底にあるドレンボルトを緩めてエンジンオイルを抜き取ります。エンジンが冷えている時はオイルが抜けにくいため、暖気運転をしてから抜くのが基本。エンジン本体やマフラーは超高温になるのでヤケドしないよう注意して作業します。作業時は軍手必須です。エンジンオイルを再利用するため、牛乳の紙パックをオイル受けにしました。
マフラー、キャブレター、カバー類、ステップ、サイドスタンドなど、必要のないパーツをどんどん取り外します。
サイドスタンドを取り外すと車体が倒れてしまうため、壁に立てかけて作業する人もいますが…。安全面と安定性を考えれば、やはりスイングアームに立てかけるレーシングスタンドを使用したいところです。
またエンジン降ろす場合、バイクジャッキ(写真はヒロチー商事より発売)を使えば1人でも楽に作業できますよ。
エンジンを降ろしたところ。作業台がないため、段ボールを敷いて作業します。
市販のエンジンスタンドや作業台があれば便利なんですけどね。
シリンダーヘッドを取り外します。
シリンダーヘッドを引き抜くと、カーボンで真っ黒になったピストンが姿を現しました。
シリンダーヘッドの燃焼室側。この半球の部分で混合気(ガソリンと空気が交じり合ったもの)が爆発します。ピストン同様、カーボンで真っ黒です。
ウエスとクリーナーを使い、カーボンで汚れたピストンと燃焼室を掃除しました。
クラッチカバーを外したところ。写真左側の丸いパーツがクラッチ本体です。この時点では、まだ異常は見受けられません。
不具合を発見!クランクケースに転がる物体は…
クラッチ本体を取り外しました。一見何事もないように見えますが…。“あるべき個所にあるべきもの”が、クランクケースの真ん中あたりに転がっているのがわずかに確認できます。皆さん、発見できましたか?
髪の毛逆立ち、鼻血もブー。スプリングが、どうなったのでしょうか?(画:北秀昭)
本来、接続されているはずのスプリングが、ありません。
悲しくもポッキリと折れています。
スプリングが折れると、どうなる?
今回のギア不具合の原因は、「シフトスピンドルアーム」と呼ばれるパーツのスプリングが折れていたため。ミッションの酷使と享年劣化が重なり、残り100mのところでポッキリと折れてしまった模様です。
このスプリングがなくなるとギヤシフトスピンドルアームがフリーの状態となり、ミッションのドラム部分が動かない=シフトチェンジできないというわけです。ミッションの動きについては、下記で解説していますのでご確認ください。
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折れたスプリングを純正の新品に交換
パーツショップで新品を購入(163円)し、交換します。高額なパーツが壊れていなくてよかった(冷汗)。
これがなくてはシフトチェンジ不可能。小さなパーツですが、大きな役割を果たしています。
ラジオペンチを使い、ギヤシフトスピンドルアームにスプリングを固定します。
無事に作業完了。ゴリラよ、また元気に走ろうぜ!