こんにちは。4ミニ.net運営者の北です。
皆さんはバイクのマフラーを選ぶ時、何をポイントにしますか? スタイル、音、素材、ブランド、性能、予算…。どの項目に重点を置くかによって、選ぶマフラーも大きく違ってくると思います。
カスタムビギナーだった僕がマフラー選びでもっとも悩んだのは、性能。だってスタイルは目で見れば分かるし、音は道で走っているのを耳で聞けばおおよその予測はつく(今はウェブでサウンドを動画で配信しているメーカーもあります)。素材は「ステンレスは錆びにくい」「チタンは軽いけど高額」など、バイクに詳しい人に聞けばすぐ分かりましたから。今ならネットですぐ調べられますし。
>>関連ページ
性能アップや軽量化…バイクのマフラーを交換する10のメリット
でも性能って、実際に乗ってみて体感してみないと分からないじゃないことが多い。確かにメーカーによってはシャシーダイナモで計測したパワーグラフを公開していたり、「全域でのトルクアップを狙い、エキパイの径を…」等々、詳しく丁寧に広報しているところもあります。しかし知識のないバイク初心者だった頃は、実感がないというか、イマイチよく分からなかったというのが正直なところです。
ここではバイクのカスタムに詳しくない初心者の人にも、
『乗ってみなくても、見た目で(ある程度は)マフラーの性能が分かる』
というマフラーの性能の見極め術をまとめてみました。これを読んだ10分後には、
「なるほど」となってもらえればうれしいです!
目次
1.エキゾーストパイプでマフラーの性能を見極める
エキゾーストパイプとは、排気ガスが通過する金属の管のこと。略して「エキパイ」とも呼ばれます。素材には主にスチール、ステンレス、チタンが使用されています。
入り口から出口までエキパイ径の変わらないモデル、段階的にエキパイ径を太くしているモデル、同じ径がまったくないテーパー形状のモデルなど、各社によって仕様は様々です。
一般的に、細めの径に設定したモデルは低中回転域重視のトルク型、太めの径に設定したモデルは高回転域重視の高速型といえます。
インジェクション用モデルにはエキパイに触媒やO2センサー挿入用の穴(写真上)を設けたモデルもあります。
写真上は、径の異なるパイプを溶接でつなぎ、エキパイを段階的に大径化。段階的に大径化することで、押し寄せる排気ガスの混雑(簡単にいえば、車の渋滞回避と同じ)、つまりスムーズな排気を実現させているのです。
以上のように、一般的には「入り口から出口までエキパイ径の変わらないモデル」よりも「段階的にエキパイ径を太くしているモデル」や「同じ径がまったくないテーパー形状のモデル」のほうがレーシーであるといえます。
「パイプベンダー」を使った“機械曲げ”
写真上は、曲げ加工に「パイプベンダー」という工作機械を使用しているのが特徴です。
パイプベンダーを使った曲げ製法は「機械曲げ」とも呼ばれます。機械曲げは均一の製品を大量に製作できる、不良品が出にくい、低コストで製作できるなどのメリットがあります。
ガスバーナーを使い、職人が手で曲げる“手曲げ”
写真下は万力などでパイプを固定し、曲げたい箇所をガスバーナーであぶりながら職人が1本1本手で曲げたエキパイです。
この手法を「手曲げ」と呼びます。機械曲げでは醸し出せない、カスタム度の高い滑らかな曲線が大きなポイント。一般に機械曲げモデルよりも製作に手間がかかるため、価格もやや高めです。
手曲げのもうひとつのポイントは、機械曲げでは不可能な、複雑なアール(曲げ)が描ける点。4ストエンジンは、エキパイの長さを一定量保たなければ、エンジンが持つ本来の性能を発揮しにくいのが特徴(詳細は下記参照)。
複雑なアールを描く手曲げマフラーは、エキパイの長さを確保するため、もしくは独自の排気効率にこだわるため、“あえて”手曲げを用いている性能重視のマフラーである場合が多いです。
2.サイレンサーでバイク用マフラーを性能を見極める
サイレンサーとはマフラーの騒音を消すためのもの。エンジンの持つポテンシャルを存分に引き出してくれるストレート構造タイプ、性能よりも静粛性を最優先させた隔壁構造タイプなどがあります。サイレンサー内に触媒を設けたインジェクション用モデルも発売中。
サイレンサーの素材はスチール、アルミ、ステンレス、チタン、カーボンなどメイン。長さ、径、エンド形状などもモデルによって様々です。好みによって選べるのが嬉しいところですね。
ストレート構造タイプのサイレンサー
排気ガスの抜け道を直線的にレイアウトしたストレート構造。スムーズな排気ガスの流れを可能にした本格派スポーツモデルやレース用モデルに採用されている高性能タイプです。イラストは筒状に曲げたパンチングメタル(無数の穴の開いた金属板)の周りに消音材を巻き付け、排気音を吸収しているタイプです。サイレンサーのエンド部分から中をのぞき込めば、ストレート構造かがすぐわかります。
隔壁構造タイプのサイレンサー
隔壁と厚みのある外壁を設置。排気ガスをいくつもの部屋に導くことで消音効果をアップしています。性能よりも静粛性を優先さたこのタイプは、ノーマルマフラーにも数多く採用されているタイプです。
3.スプリングフックの有無を確認する
スプリングフックはスポーツ志向の高いマフラーに採用。レーシーな外観に仕上がるのもポイント。フランジ部、エキゾーストパイプとテールパイプ、テールパイプとサイレンサーの接続部に接続されるのが一般的です。
高回転まで回るエンジンにスポーツマフラーを装着した場合、最高速や加速力がアップ。必然的にエンジンからの排圧(排気ガスの圧力)や、地面からの振動も大きくなります。
スプリングフックは排圧や振動など、マフラー各部にかかる衝撃を吸収してくれるのがポイント。スプリングフック採用のマフラーは、ノーマル以上の走りを可能にする、走りを意識したモデルだといえるでしょう。
2分割されたエキパイを1本のスプリングフックでつないだタイプ。1本接続タイプ、2本接続タイプなど、掛けられる本数は各マフラーによって異なります。
フランジ部分(マフラーの接続部分)にスプリングフックを装備したタイプ。傷付きを防止するため、スプリング部にゴム製のカバーを装備。スプリングフックにも作り手のこだわりがあるのです。
4.バイク用マフラーのピース数を確認する
マフラーにはシンプルな1ピース構造のタイプから、複雑な複数ピースのものまで幅広くラインナップされています。
写真上はエキパイやサイレンサーが溶接で一体化された1ピース構造。エキゾーストパイプやサイレンサーが分割されていないタイプです。一般にこのタイプは低コストで製作できるため、発売価格が抑制できるのが特徴。多ピース構造に比べて取り付けも簡単です。
こちらはエキパイを3つに分割し、サイレンサーをセパレート化した4ピース構造。管長を稼ぐためにエキゾーストパイプを複雑に取り回した、アップ型センター出しマフラーです。多ピース構造のために取り回しの自由度が高く、整備性にも優れているのが特徴です。
多ピース構造のマフラーは管長を稼ぐ=性能を出すためにエキゾーストパイプを複雑に取り回したモデルが多いのが特徴。またエキパイに溜まったカーボンの除去や、転倒時のサイレンサーの交換など、レースでの使用を想定して設計されているのもポイントです。
>>関連ページ
「マフラーは長すぎても短すぎてもダメ。バランスが大切です」
エキパイの長さや取り回しは、どのくらい性能に影響があるのでしょう? ミニバイクレースでも圧倒的な強さを誇る、水本レーシングの水本氏に伺ったお話をまとめてみました。
>>出典記事
性能の良いマフラーとはどんなタイプ?
まとめ:マフラーには作り手の情熱と工夫が凝縮
以上のように、マフラーにはエンジンパワーを余すところなく引き出すための工夫が随所に施されています。
1本のマフラーを作り上げるため、メーカーの技術者は時間をかけて研究し、設計し、試作を繰り返し。様々な障壁を乗り越え、ようやく商品となるわけです。言い換えれば、マフラーはメーカーの技術者や職人たちの汗と涙と努力の結晶なのです。
マフラーの性能を見極めるためには、上記の情報を頭の中に入れておくとともに、1本でも多くのマフラーを自らの目で見てみること。一定数以上のマフラーを吟味することで、「このマフラーは性能にこだわっているな」とか「このマフラーは性能よりもスタイル重視だな」ということが次第に分かってきます。カスタムバイクの集うミーティングなどに参加し、オーナーさんの話を直接聞いてみるのもおススメですよ!