こんにちは、4ミニ.net運営の北です!
皆さんはオーバー100ccに排気量アップしたモンキーやゴリラ、エイプのキックペダルを踏み込んでエンジンをかけたことがありますか? あれって結構重いでしょ。理由は排気量のアップにより、圧縮比が上がったためです。
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排気量をアップした4ミニのエンジンをキック始動するには、ちょっとしたコツが必要。まずはキックペダルをゆっくりと数回上下させ、足底で感触を探るようなイメージでピストンを圧縮上死点(一番上に上昇した状態)まで持ってきます。足底で圧縮上死点の感触がつかめたら、その状態で一気にキックペダルを踏み込みます。
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もしもピストンが圧縮上死点ではない状態で、闇雲にキックペダルを踏み込むと…。キックペダルの強烈なキックバック(踏み込んだ瞬間、キックペダルが踏み込んだ方向とは逆の方向に戻ってくる現象)を食らい、ケガをすることもあります。
時折、「何がキックバックじゃい!」という体育会系・パワー自慢のマッチョメンが、キック時に必要なコツを完全に無視し、バカヂカラと気合いのみでオリャァァとキックすることもありますが、そういう時はかなりの確率でミッションや関連パーツを破壊してしまいます。しょぼくれて肩を落とし、オーナーに平謝りするガタイのいい男を、僕は過去に1人目撃しました。
目次
実録体験談:時にキック100連発。エンジンはなぜかからない?
オーバー100ccのキックといえば、僕が愛車のゴリラに某24φキャブレターを使っていた時のこと。キックペダルを踏めども踏めども、エンジンがまったくかかりません。当時のゴリラはキック50連発は当たり前。時にはキック100連発で、ようやくエンジンがボロォロォ…と始動する何とも辛い状態にありました。
冬の寒い日なら100歩譲って「運動不足が解消されたよなぁ」「いい汗かけたぜ」「オレもまだまだ若いぞ」と思うかもしれません。しかし悲惨なのは夏。キック50連発あたりで、意識がモウロウとしてきます。キック60連発で「まだ頑張れる」と思い、70連発で「体力落ちたなあ」と嘆き、80連発で足がコムラ返りになる予兆を感じ、90連発で「一体オレは何をやっているんだろう?」という疑問を抱きます。しかし100連発に到達すると、妙な脳内麻薬が分泌されるのか、「もしも今、座禅を組んだら、オレは宙に浮けるかもしれない」などと結構アブナイことを考えたりします。
道端で炎天下のもと、顔をユデダコのように紅潮させ、髪の毛を振り乱し、全身汗まみれになった物凄い形相のオッサンに遭遇した通行人たちは、一様に「暑苦しい」「近づきたくない」「関わりたくない」「ヤバイ」と思うのでしょう。皆、一定の距離をキープしつつ、スルーしてゆきます。“爽やか”という言葉とは一万光年かけ離れたオッサンの姿…。
ある時、僕は背後に視線を感じ、フッと振り向いたら通行人のオッサンと目が合いました。そのオッサン、やや驚いた様子で即効、目をそらせましたね。僕は心の中で叫びました。
「お前もオッサンやろ!」
始動不良の原因はセッティング、もしくはキャブレター本体の不具合
ある日、いつものようにエンジンがかからず、2発、3発、4発とキックを連発。すると突然、「バキッ!」という音とともに、右足に衝撃が走りました。キックアームを接続しているキックスタータースピンドルというパーツが、ポキリと折れてしまったのです。
当時のゴリラは110ccにボア&ストロークアップしていたため、キックが重かった。それに加え、キックの連続で散々酷使してきた結果、ついにキックスタータースピンドル(写真下のパーツ)が金属疲労を起こしてしまったのです。すっかり錆びてしまいました(笑)。
後日、僕はエンジンを全バラにし、ネットオークションで競り落とした中古のモンキー用キックスタータースピンドルに交換しました。
ボアアップエンジンはエンジンがかかりにくい→これは間違いです
「ボアアップしたモンキーやエイプのエンジンはかかりにくい」と思っている人もいらっしゃるでしょうが、これは大きな間違いです。僕の場合、某24φキャブレターからヨシムラミクニTM-MJN24φキャブレターに変更した途端、キック1発でエンジン始動するようになりました。今思えば、某24φキャブレターのセッティング方法が正しくなかった、もしくは某24φキャブレターそのものに不具合があったのだと思います。
エンジンがかからない時は、まずプラグをチェック!
スパークプラグとは?
エンジンをスムーズに作動させるには、1.良い混合気 2.良い圧縮 3.良い点火の3つが必要です。もしもエンジンがかからなくなった時、またどうも調子が良くないなあと思った時は、まずスパークプラグ(以下プラグ)をチェックしてみましょう。
プラグは圧縮された混合気に火を点けるための点火系パーツ。エンジン始動時はもちろん、エンジンが動いている限り常に着火を繰り返している重要なパーツです。プラグをチェックすることで、上記の1から3が正常に行われているかどうかを知ることができます。
モンキーやエイプのプラグはプラグキャップを抜き、専用工具を使えば簡単に取り外すが可能。僕は専用工具がない場合、メガネレンチを利用しています。プラグの固定場所は下記にて紹介しています。
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1)火花は正常に飛んでいますか?
エンジンがまったくかからない時は、プラグに火花が飛んでいない可能性もあります。
それを知るためには、まず取り外したプラグにプラグキャップを取り付けます。次にプラグキャップを持ち、プラグの取り付けネジ部を車体のスチール部(フレームなど)にアースしてキックスターターを踏み下ろします。
この時、プラグの中心電極から火花が飛んでいれば点火はOK。もしも火花が飛ばなければ、プラグコードの断線やCDIなど電気系統のトラブルを疑ってみましょう。感電を防ぐため、作業時は必ずゴム手袋を使用しましょう。
2)混合気は濃すぎませんか?
燃焼は良好
写真は着火が繰り返されるプラグの中心電極(火花が飛ぶ部分)。電極回りにカーボンのすすや燃えカスのない、混合気の燃焼が良好な状態です。
カブり気味
写真は電極回りにカーボンの黒いすすが付着したカブり気味の状態。これは混合気が良くない、つまり混合気が濃すぎるという証拠です。
プラグの「カブり」には2種類あります
カブりとは、エンジンが悪い混合気を吸い込んでしまい、火花を飛ばすための中心電極やその周辺に不純物が付着。これによって絶縁性がなくなり漏電。正常な着火ができない、つまりエンジンの始動性やエンジン動作時の着火性が低下してしまう現象です。一般的にカブりには、
1)カーボンのすすによる黒い汚れ
2)ガソリンやエンジンオイルによる濡れや湿り
の2種類(1は「くすぶり」とも呼ばれます)。1はキャブレターの調整不足やエアクリーナーの目詰まりによって混合気が濃い。電気系統の不具合による電圧低下等々が原因。2はエンジン停止時にスロットルを開けたり、エンジン回転中に失火したため生のガソリンを吸い込んでしまった。もしくはピストンリングの磨耗によるオイル下がり(エンジンオイルが燃焼室に入り込むこと)等々が考えられます。
3)キャブレターセッティングは完璧ですか?
プラグを長持ちさせるための最大のポイントはココ!
プラグを長持ちさせる最大のポイントは、適格なキャブレターのセッティング。キャブセッティングを煮詰める=理想的な混合気を作る=プラグの燃焼が良好になるというわけです。
キャブレターのセッティング方法そのものは、決して難しい作業ではありません。セッティングが煮詰まるまでには多少時間がかかるかもしれませんが、煮詰まってきた時の喜びは何事にも代えがたいですよ。詳しくは下記を参考にしてみてください。
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夏場と冬場にはキャブセッティングを変えるべきか?
ノーマルのエアクリーナーボックスを取り外し、エアフィルターやエアファンネルに変更したチューニングマシンは、夏と冬とではキャブレターのセッティング変更が必要となる場合があります。
具体的には、空気の密度が高くなる(空気が濃くなる)冬は夏よりもガソリンを濃いめに、空気の密度が低くなる(空気が薄くなる)夏は冬よりもガソリンを薄めに設定。なお、僕のゴリラのセッティングは下記のように変更。もしも夏場に冬仕様のセッティングで走行すると、ガソリンが濃すぎてプラグがカブり気味になり、スムーズさに欠けるような気がします。もちろん夏も冬も同じセッティングで問題なければ、そのままで構いませんよ。
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マシン:ゴリラ 排気量:88cc キャブレター:ヨシムラミクニTM-MJN24 その他:エアフィルター装着
メインジェット
夏→82.5♯ 冬→87.5♯
スロージェット
夏→12.5♯ 冬→15.0♯
ジェットニードルクリップ位置
夏→真ん中 冬→上から2段目
何度もカブらせると、プラグはダメになってしまう
プラグは濡らさない、これが基本です
プラグの性能低下を防ぎ長持ちさせるためには、まずはカブりの原因を突き止め、これを正すこと。また、できるだけカブらせないこと。以上が大切です。
カーボンによる「くすぶり」は掃除によってほぼ復活できますが、問題なのはガソリンやオイルによるカブり。これらは着火性能の大幅な低下を招きます。
また、何度も湿らせてしまったプラグは、たとえ走行距離が短くてもエンジン始動すら出来なくなる可能性あり。これはガソリンやオイルに含まれる化学物質が電極部を剥離してしまう等が主な理由。電極部にレアメタルを使った高性能プラグの場合、一度豪快にカブらせてしまったら再使用は厳しいかもしれません。
プラグを末永く使用するためには、日頃のメンテナンスはもちろん、ガソリンやオイルによって濡らさないことが重要。ちなみにバイク用プラグの交換時期は、一般的に3000kmから5000kmが目安。高性能なチューニングエンジンの場合は、もっと早めの交換がおすすめです。
もしもプラグをカブらせてしまったら?
カーボンによる「くすぶり」は掃除する、ガソリンやオイルによる濡れや湿りは乾かすことが基本です。濡れや湿りは中心電極部をライターであぶれば、復活する可能性もあります。
ガソリンやオイルで濡れてしまった電極部をウエスで拭い、ライターであぶって乾燥させる方法は昔ながらの手法。揮発性の良いガソリンで湿った程度なら比較的早く乾かすことができます(ただし復活しない場合もあり)。
2ストなどエンジンオイルでベッタリと濡れてしまったプラグ、また電極部にレアメタルを採用した高性能プラグは復活しない場合もあるので要注意。万が一に備え、予備のプラグを1本常備しておくのがベストです。
プラグのメンテナンス方法
カーボンを落とすのにワイヤーブラシを使うのは、中心電極や絶縁体にキズを付けてしまう恐れがあるのでNGです(エンジン取り付け部のネジ山はOK)。まずはカーボン除去用ケミカルと歯ブラシ等のナイロン製ブラシを使い、キレイに掃除。最後はパーツクリーナーで脱脂します。
イリジウムプラグって高性能なの?
中心電極部が細く尖った「イリジウムプラグ」は各社からリリース中。このプラグは中心電極部に通常のプラグよりも高強度かつ貴重な白金とイリジウムのレアメタル合金を使用し、極細化を実現。高耐久、強烈かつ的確な着火を可能としています。また炎の広がりが速く、燃焼効率が良好。加えて電極部に付着したカーボンが焼き切れやすく、着火性能が落ちにくいのも特徴です。
僕もイリジウムプラグを愛用していますが、通常プラグよりも始動性は大幅にアップしました。ただし標準型と比べた場合。何回かカブらせて(湿らせて)しまって以来、始動性が大幅に低下。イリジウムにとって湿りは大敵だと感じました。
レーシングプラグは公道でも使用できる?
レーシングプラグとは、電極部にレアメタルを使うなど各部の素材や構造にこだわり抜いたタイプ。失火や着火ミスを極限まで抑え、高回転域での性能アップを狙ったレースマシンやチューニングマシン向けのプラグです。
高回転でパワーを稼ぐショートストローク型エンジンなどには、その性能を遺憾なく発揮してくれるはず。車両メーカーやパーツメーカーが指定する熱価(※注1)であれば、基本的にノーマル車でも使用可能。ただし低中回転域を多用する街乗りユーザーであれば、わざわざ高額なレーシングプラグを使うよりも通常のイリジウムやスタンダードで十分性能を発揮してくれると思います。
写真のように熱価はプラグ本体にも表示。写真はNGKからリリースの「CR8HSA」。これは社外製モンキー用シリンダーヘッドに付属していたもので熱価は8。なおノーマルモンキーには「CR6HSA」の装着を推奨。DENSOのモンキー適合用スタンダードプラグは「U20FSR-U」。熱価は20を指す。
(※注1)プラグの熱価とは
プラグが受ける熱を発散する度合いのこと。「番数」とも呼ばれます。一般的に熱価の高い(数値が大きい)ものが冷え型(高速用)、熱価の低い(数値が小さい)ものが焼け型(低速型)。熱価は車両メーカーやエンジンパーツメーカー指定のものを選ぶのが基本ですが、用途によって変更するユーザーもいます。プラグがカブり気味の場合は番数を下げ、焼け気味の場合は番数を上げてやるのが基本。数値はプラグメーカーによって異なるので注意しましょう。