2ストエンジンにも4ストエンジンにも、「空冷式」と「水冷式」がある。エンジンの熱を空気で冷やす空冷式と、エンジンの熱を水で冷やす水冷式。両者の違いについて詳しく説明しよう。
走行風を使ってエンジンを冷やす空冷式
空冷式は走行風や冷却ファンなどを利用してエンジンを冷やすシステム。このエンジンは、
①水冷式よりも構造が簡単でコスト安
②風が当たる面積を増やすため、シリンダーやシリンダーヘッドの周囲に羽根状の空冷フィンを設置
③水冷式に採用されるラジエターなどの付随パーツがないため、エンジン周りが軽量
などの特徴がある。
空冷式2ストロークエンジンのシリンダー。2スト用・4スト用ともに、表面積を増やすため、冷却フィンが設けられている。
空冷式の2スト用シリンダーヘッド。シリンダー同様。空冷フィンが設置されているのが特徴。シリンダーヘッド内に冷却水を流す空冷式に比べ、構造も簡単。
エンジンをリヤタイヤの前にレイアウトしたスクーターは、エンジンに走行風が当たりにくいのが特徴。そのため、スクーターの中にはエンジン横(一般的にジェネレーター取り付け部分)に空冷ファンを固定し、エンジン始動とともに空冷ファンが回転。強制的にエンジンを冷却する「強制空冷式」を採用しているモデルもある(※1)。
※1:空冷ファンを持たない、走行風でエンジンを冷やす空冷式エンジン(モンキーなど主にミッション車に採用)は「自然空冷式」と呼ばれる。
水を使ってエンジンを冷やす水冷式
シリンダーやシリンダーヘッドなど、エンジンの内部に冷却水用の通路を設置。通過する冷却水に熱を吸収させ、エンジンを冷やすのが水冷式。このエンジンは、
①空冷式に比べ、冷却効率が高い。そのため、高圧縮な高性能ハイパワーエンジンでも安定した性能を発揮してくれる。(圧縮熱で混合気が爆発するのを防ぐ等)
②空冷式に採用の冷却フィンを必要としないため、スッキリした外観に仕上がる
などがポイント。ただし、空冷式よりも、
①構造が複雑
②構造上パーツ数が多くなるため、重量が重くなる
などの特徴も挙げられる。
2スト用水冷エンジンのシリンダーとシリンダーヘッド。シリンダーには「ウオータージャケット」と呼ばれる冷却水の通路が設置されえちる。また、空冷エンジンのような冷却フィンが設けられていないのも大きな特徴。
水冷エンジン(2ストローク)のシリンダーヘッド。冷却水の「行き用」と「戻り用」のホースをつなぐ取り出し口が設けられている。
ラジエターが水の熱を外部に放出
水冷式はエンジン内で発生した熱を冷却水が吸収するシステム。一定の温度まで上昇した冷却水は、ラジエター側に移動し(冷却水が一定温度に達していない場合はサーモスタッドが感知。ラジエター方向のバルブを閉鎖し、冷却水をバイパスさせる)、熱を外部に放出。その後、再びエンジンに戻してやり、エンジンを冷却する。
ラジエター
ラジエターの内部には冷却水の通路となる無数の細い管が通っており、この通路を循環する間に冷却水の熱が大気中に放出され、水温が低下する。一般的に小排気量のミニバイク用は走行風によって冷却するシステムだが、熱量の多い大型車用などは、信号待ちなど停止中でも強制的に空気の流れを作り出す冷却ファンが設置されている。
大容量タイプのラジエター
どちらも2ストミッション車用。上はNSR50用、下はTZM50R用。冷却効率をアップさせるため、NSR50に容量の大きいTZM50R用ラジエターを流用するカスタム術もある。
冷却水タンク
ズーマーのエンジン部分。写真右下がラジエター、そして左上が冷却水タンク。写真のズーマーには、両者をガードするためのオシャレな社外用カバーが取り付けられている。冷却水の水は、錆の防止、氷結時の膨張による部品の破損を防ぐため、「ラジエタークーラント」と呼ばれる不凍液を混ぜるのが常識。冷却水タンク内の水は、規定内にあるかを定期的に確認すること。
ラジエターホース/ウォーターポンプ
ラジエターホースは冷却水を循環通路となる管。ウォーターポンプは冷却水を循環させるためのもの。エンジンの動力(回転力)を利用して冷却水を汲み上げるしくみだ。写真はNSR50。
サーモスタッド
冷却水の流量と経路を調整し、水温を保つ装置。冷却水の温度に応じてバルブが開閉する。水の温度が低い時はバルブが閉じてエンジン内を循環。水温が上がるとバルブが開き、ラジエターに冷却水を流して温度を下げるしくみ。写真はシリンダーヘッド上に開閉バルブ付のサーモスタットを内蔵したNSR50用。
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