標高2127mの峠道を走った時に感じたのが、急な登り坂での88ccのトルクの弱さ。
4ミニツーリング体験記 – 88ccゴリラで標高2127mを越える
今回はボア径は現況のφ52のまま、ストローク長をノーマル同寸の41.4mmから52mmに変更してパワーとトルクのアップを狙います。
モンキー・ゴリラの排気量を110ccにアップ!88ccとの走りの違いは?
ゴリラに乗り、タイトなコーナーの続く勾配がきつい登り坂の峠道を走ってきました。その時に感じたのがトルクの細さ。ゴリラのエンジンは社外のシリンダーヘッド&シリンダーを使いボア径φ52に設定。ストロークはノーマルのクランクシャフト(ストローク長41.4mm)を使って排気量を88ccにアップしています。
高回転までスムーズに回るショートストローク型(詳細は下記参照)の88ccゴリラは、高回転域ならば急な坂道もグングン昇っていくのですが、パワーバンドを保ち続けるためには頻繁にシフトチェンジする必要があるため、ストレスが溜まります。峠のような急な登り坂を走るには、もう少しトルクとパワーが欲しいところ。今回はボア径をφ52のまま、ストロークを伸ばして排気量を110ccまでアップ。88ccとの違いを体感してみます。
交換するモンキー用52mmロングクランクシャフト
ストローク長41.4mmのノーマルクランクシャフトから、ストローク長52mmのデイトナ製ロングクランクシャフト(12V用)に交換します。クランクシャフトを選ぶ時はストローク長だけでなく、“ウエイト部”にも注目。写真は慣性力を持たせるために重みをもたせた丸型のストリート用ですが、軽量化によるレスポンスアップを狙った、三角形等に削り込まれたレース用もあります。
モンキー用クランクシャフト「6V用」と「12V用」の違い
モンキーやゴリラなどの横型エンジン用クランクシャフトには、6Vエンジンに適合の「Lクランク」と、12Vエンジン用の「12Vクランク」があります。両者はクランク軸のジェネレーター取り付け部の形状が異なるので購入時は注意しましょう。
クランク、ピストン、コンロッドの違いからモンキーの年式を知る方法
モンキーのクランクシャフト交換作業スタート!
モンキーのクランクシャフトを交換するためフレームからエンジンを降ろし、腰上&腰下を分解します。
モンキー用エンジンの左右のクランクケースを割ると、クランクシャフトやミッションが姿を見せます。腰上は基本的に一般工具のみで分解できますが、腰下の分解には特殊工具が必要です。
クランクシャフトやミッションを除去し、クランクケースにクラック(ヒビ)はないか、ミッションに破損はないか等をチェック。クランクケースの中もしっかりと洗浄します。
52mmクランクに交換します。交換する52mmクランクシャフト全体にエンジンオイルを塗布し、左側のクランクケースに組み付けます。
モンキー用クランクケースの組み付けは完了しました。写真は左右のクランクケースを組み付けたところ。クランクシャフトのクランク軸やコンロッドを手で動かし、クランクシャフトが正常に動作するかを確認します。
【モンキー用エンジンの分解と組み付け方法】
ボア径(ピストン径)とストローク長の違いによるモンキーの乗り味と傾向
ノーマル(49cc)
ボア径φ39×ストローク長41.4mmの49cc。ストローク長よりもボア径の小さなエンジンは「ロングストローク型」と呼ばれ、低中回転域で粘り強い走りをするのが特徴。
88cc
ボア径φ52×ストローク長41.4mmの88cc。ストローク長よりもボア径の大きなエンジンは「ショートストローク型」と呼ばれ、高回転域を使ってパワーを稼ぐ多気筒のレーシングマシンなどに多用されるのが特徴。
110cc
ボア径φ52×ストローク長52mmの110cc。ストローク長とボア径が同寸のエンジンは「スクエアストローク型」と呼ばれ、ロングストローク型とショートストローク型の中間的な性能が特徴。
モンキー(Monkey)・エイプ(APE)、エンジンのボアアップ
クランクシャフトのストローク長を比較してみましょう
ストローク長の違いがよく分かる一コマ。41.4mmに比べ、上下運動量の大きな52mmは下からの突き上げが大きくなるため、パワーもトルクもアップするのがポイントです。
モンキー(Monkey)・エイプ(APE)、エンジンのボアアップ
88ccから110ccに排気量をアップしたら、各部のセッティングを変更します
52mmクランクシャフトに交換してストロークを伸ばし、モンキーの排気量を110ccにアップしたら…。110cc化に合わせ、ファイナル、CDI、キャブレターなど各部のセッティングを見直します。
パワーとトルクの向上を目指し、モンキーの排気量を88ccから110ccにアップ。たった22ccの差だと思うかもしれませんが、走りはもちろん各部のセッティングにも違いが出ます。
例えば110ccになったモンキーを88cc仕様のままで走行した場合。エンジンはスムーズに始動しますが、スロットルの開け始めから4000rpmの間でブブブゥゥ…と谷間(パワーの落ち込み)が発生。また6000rpm以上の高回転域でも同様の症状が若干あります。今回の仕様変更のポイントは、フロントスプロケット、デジタルCDI、キャブレターの3つ。これらを一つずつ攻略してスムーズな走りを目指します。
変更点1
“ファイナル”を変更
フロントのスプロケットやリアのスプロケットの丁数を変えて乗り味を調整することを、「ファイナルの変更」または「2次減速比の変更」と呼びます。今回はフロントスプロケットを14Tから15Tにチェンジしました。
ファイナルの変更=自転車の変速機と同じ
ファイナル変更は自転車の変速機と同じ原理。 前後のスプロケットの丁数が離れると、脚力(バイクの場合はエンジンパワー)がなくてもスムーズに発進しやすく坂道でも楽にこげます。
ただしスピードが増すにつれ、脚力に関係なくペダルをこぐ回数は増えるが速度は伸びません。反対に前後のスプロケットの丁数が近づくほど、脚力がなくてはペダルが重くて発進しにくく、坂道も登りづらい。ただしスピードが増すにつれ、ペダルも軽くなり速度も伸びてきます。
モンキーのフロントスプロケットは、2本のボルトで固定されています。ボックスレンチ等を使い、ギアを1速に入れた状態で取り外します。
スプロケットを交換したら、チェーンの張りを再調整する必要があります。まずはリアのアクスルボルトを緩め、スパナを使って微調整。左右の目盛りを同じ位置に合わせるのがポイントです。
【ココに注意!】
スプロケットの丁数を大幅に増やした場合、チェーンの長さが足りなくなることがあります。その時はチェーン交換が必要。逆にスプロケットの丁数を大幅に減らした場合、チェーンが長すぎてしまい、チェーンを短縮(コマを減らす)させる必要のある時があります。
変更点2
点火タイミングの変更
モンキーの排気量をアップしたら圧縮比が変わるため、スパークプラグの点火タイミングを変更してやる必要があります。写真はキタコ製の絶版のお宝アイテム「デジタルマップコントロールCDI(2万1000円・発売当時)」。排気量やチューニング度合いに合わせ、任意に点火時期が変更できます。
CDIはシート下に配置しています。このCDIは4タイプの点火プログラムをインストール済み。ギボシを付け替えて設定変更します。設定変更後はスロットルレスポンスが飛躍的に向上しました。
変更点3
キャブレターの調整
今回は88ccに使っていたヨシムラミクニTM-MJN24φをそのまま使用。排気量のアップに伴い、混合気の供給量を増加します。
スロットル側のスロットルを分解し、スロットルワイヤーを緩めます。次にエンジン側に接続されたキャブレターを取り外し、スロットルバルブを抜き取ります。
メインジェットを交換
車体からキャブレターを取り外してガソリンを完全に抜いた後、キャブの下部にあるフロートチャンバーボディーを取り外します。次にマイナスドライバーを使い、メインジェットを交換します。
メインジェットを82.5♯から85♯に変更
中~高回転域を司るメインジェットは、真ん中にある小さな穴からガソリンを吸い上げるしくみ。刻印された○内の番手(♯で表す)を確認し、1番手大きな85♯に変更。高回転域でも蒸け上がりはスムーズになりました。
アイドリングを司るスロージェット
今回、アイドリングを司るスロージェットは交換しませんでした。もしも交換する場合は、細めのマイナスドライバーを使って取り外し&取り付けします。
低中回転域のセッティングは、ここを要チェック
「スロットルの開け始めから中回転域のセッティングがなかなか決まらない…」という場合は、ジェットニードルのクリップ位置を変更してみましょう。
スロットルバルブを露出
トップキャップボルトを緩めると、スロットルバルブが姿を現します。
スロットルバルブ周りを分解し、ジェットニードルを単体にします。
クリップの位置を変更
ラジオペンチを使い、ジェットニードルの先端にあるクリップの位置を変更します。TM-MJN24φキャブの場合、設定は全部で5段階。今回は真ん中から1段上に移動し、低中回転域での燃料を濃いめではなく“薄め”に設定したところ、スロットルの開け始めから5000rpmあたりで発生していたブブブゥゥ…というやや谷間が解消されました。
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公道で体感した88ccと110ccの主な違い
110ccになったモンキーの走りはパワフルそのものです。88ccに比べ、
①トルクが太くなったおかげでシフトチェンジの回数が減り、街乗りが楽になった
②坂道では1速落として高回転をキープすることなく、トルクフルな走りに変化した
③パワーアップとファイナル変更により、幹線道路ではさらに走りやすくなった