一見同じようにみえるモンキーやエイプのクランクシャフトも、よく見てみれば各モデルによって大きく異なっている。特に違いが顕著なのが、ウエイト部の形状。その特徴とは?
クランクシャフト=ウエイト形状の違いで、エンジン特性もチェンジ
クランクには大きく分けてクランクウエイトが丸いタイプ、クランクウェイトがオニギリ型の2種類がある。
ウエイト部はクランク軸とともに回転する部分。ウエイト部が丸いタイプは、ウエイト部を重くすることにより一定の慣性力を持たせたタイプ。一般的に、低中速域での乗りやすさを吟味したストリートに適したタイプだ。
一方、オニギリ型のタイプはウエイト部を削り込むことによって軽量化。ウエイト部に重みをもたせた丸いタイプに比べ、一般的にピックアップに優れ、軽やかに吹き上がるのが特徴となっている。
両者の違いは、
「ウエイト部に重みをもたせたタイプ=水の入ったバケツ」
「ウエイト部を削り込んだタイプ=水の入っていないバケツ」
例えば水の入ったバケツを片手に持ち、勢いよく振り回したとする。最初はゆっくりとしか回せなくても、やがて重みによって遠心力が高まりバケツは安定してくるだろう。
次に中身が空のバケツを持ち、振り回してみたとしよう。空のバケツは水入りバケツとは違い、最初からビュンビュン素早く回せるはず。クランクウエイトの形状の違いは、この現象を利用しているわけだ。
「丸型タイプ」のクランクシャフト
ウエイト部が○型になったクランク。
遠心力の高まるこのタイプは、一般的に低速域はもちろん、全域で滑らか、かつ安定したエンジン特性を示す。
オニギリ型タイプのクランクシャフト
ウエイト部が△型に削り込まれたクランク。
軽量なこのタイプは、一般的に低速域から高速域までスムーズに回るレスポンスに優れたレーシーなタイプ。
ただし軽量がゆえ、○型に比べて遠心力が低下。その結果、最高速度が若干落ちることもある。
ウエイト部のオイル接触部を尖鋭化&バフ掛け
軽量化のため、クランクウエイトを大胆に削り込んだオムスビ型クランクシャフト。
写真のモデルはオイル接触部を尖鋭化し、バフ掛け処理を実施。オイルによる回転抵抗を軽減した高性能なタイプだ。
クランクシャフトの試作&テストを繰り返すパーツメーカー
写真は社外製エイプ用124ccボアアップキットに付属のクランクシャフト。排気量やシリンダーヘッドとの相性、スポーツ性、乗りやすさなどを徹底研究。テストを繰り返した結果、市販品のウエイト形状は写真上となった。写真下は試作品のプロトタイプ。ウエイト部の形状に大きな違いがある。
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