2ストロークエンジンに装着するチャンバー

ししゃもの腹のような不思議な形状を持つチャンバー。2ストロークエンジンのポテンシャルを的確に引き出してくれる、スポーツモード全快のエキゾーストシステムだ。

2ストの潜在的パワーを引き出す形状

いくつかの円錐(えんすい)形リングを溶接でつなぎ合わせ、中心部に向かってポッコリと膨らみを持たせた2スト用EXシステム、チャンバー。レース用の2サイクルマシンには、ほぼ100%の確率で採用されているスポーティーなアイテムだ。

メーカーやモデルによって形状も様々

チャンバーはパーツメーカーや各モデルによって、形状が微妙に異なるのが特徴。「膨張室」と呼ばれる中央の膨らみ、「絞り」と呼ばれるサイレンサーにかけてのテーパー部分の形状、チャンバーの長さ等を細かく変更することにより、ストリートなど低中回転域での乗りやすさも視野に入れたセッティング、レースなど高回転域を重視したセッティング等々、乗り味が変化するのが大きなポイント。購入の際は、必ず使用目的に合ったモデルをセレクトすることが大切。

チャンバーの長所

①パワーが出しやすい ②軽量

③スポーティーな外観に仕上がる ④コスト安でパワーアップ

チャンバーの短所

①音質がカン高く、音量も高くなりやすい

②タイプによっては転倒時に絞りの部分が破損しやすい

ミニバイクレースやドラッグレースなどで人気の後方まで長く伸びたタイプ。

絞り部分をサイレンサー手前で180°回転させたコンパクトなユーロタイプ。スプリントレースでも人気。

カスタム度満点のサイレンサーを上方にカチ上げた豪快なタイプ。

ストリートにもマッチしそうなコンパクトなタイプ。

チャンバーの素材

チャンバー本体の素材にはスチール、またはステンレスを使用。スチールの場合はサビを防ぐため、表面にクリアー塗装を施すのが一般的だ。ステンレスはスチールよりもサビに強く、溶接跡が美しいのが特徴。ただしスチールよりも素材が高額、しかも硬くて加工しにくいのがネック。そのため、スチール製チャンバーよりも価格は割高となる。サイレンサーはアルミを使うのが一般的。カラーアルマイトを施したオシャレなタイプも多数ラインナップされている。

各部の名称と役割

チャンバーの各部をチェック!

①フランジ

エンジンとの接続部分。専用ボルトや専用ナットで取り付ける。

②エキゾーストパイプ

略してエキパイとも呼ぶ。フランジから膨張室につながるパイプ部分。

③取り付けステー部

チャンバーと車体を接続・固定する部分。

④膨張室

ポッコリと膨らんだ部分。混合気の吸い出し、燃焼室への反射を行う。広がり始めを「ダイバージェットコーン」、絞られた部分を「コンバージェットコーン」と呼ぶ。膨張室の膨らみ具合によってエンジン性能は異なってくる。

⑤テールパイプ

排気ガスを流す部分。テールパイプの太さや長さによってエンジン性能は異なってくる。

⑥サイレンサー

消音部分。パンチング(穴あき加工)された細いパイプ、グラスウール、アルミ製カバーを組み合わせるのが一般的。アルミ製カバーはカラフルなアルマイト仕上げのモデルも多数。

ハイパワーであるその理由とは

チャンバーのパワーの秘密はポッコリと膨れた膨張室にあり!

2ストエンジンは4ストエンジンとは異なり、排気バルブのような“きっちりとした”排気システムを持たないのが特徴。これにより、ひとつの問題が起こる。それは1次圧縮によってシリンダー内に充填された新しい混合気が、排気ガスと一緒に外へと押し出されてしまうのだ

それを防いでくれるのがチャンバー。本体にポッコリと膨らんだ膨張室、そしてサイレンサー手前に絞りを設けることにより、外に出ようとする排圧を反転(この現象は反射脈動とも呼ばれる)。チャンバー側に漏れてしまった新しい混合気を押し戻しているのだ。

混合気の強い吸い出し効果

爆発による反動でピストンが下降すると、1次圧縮によって混合気がシリンダーへと移動。一般的にチャンバーを装着した場合、まず流速の速い排気が膨張室の広がり部分に達した時、大きな負圧が発生。これにより強い吸い出し効果が発生する。ただし、この強い吸い出し効果によって、混合気は排気ガスとともにチャンバー側へと押し出されてしまう。

反射脈動による混合気の充填

チャンバー側に排出された排気ガスは絞りの部分で反射。エンジン方向に反射脈動が発生する。この時、チャンバー側に押し出された一部の混合気がシリンダー内にリターン。これが一般的に「チャンバー効果」と呼ばれる現象。

なお、各シリンダーの掃気ポート・排気ポートの形状によっても異なるが、多くの社外シリンダーは先に掃気ポートを閉鎖。高圧縮での爆発を可能にしている(※注1)。

※注1:2ストロークエンジンは排気ポート及び掃気ポートの位置・大きさ・形状によって排気や吸気のタイミング、また吸排気量が異なり、エンジン特性が違ってくる。

2ストロークエンジンのポート加工

チャンバーの形状と特性の違い

写真は膨張部を大きく膨らませ、サイレンサー手前を細く絞ったドラッグレース用マシン。一般的にこのタイプは高回転域でパワーが出やすいピーキーなエンジン特性。高回転を多用するレースに最適なモデルだ。

ただし低中回転域ではトルクが細く、一般公道などでは扱いづらいのがネックとなる。チャンバーは良くも悪くも、2ストエンジンの性格を一変させてしまう繊細なパーツ。ビギナーは用途に応じたエキゾーストシステムを選ぶことが大切だ。

 

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