種類や特徴も色々 – アルミ素材の[7NO1][2017][A5052][A7075]

スイングアーム、バックステップ、トップブリッジ、フレーム等々、モンキーやエイプなどのバイク用パーツにはアルミを使ったパーツが非常に多い。ただし使用する箇所によって、アルミの種類は異なる。一口にアルミといっても、実に様々な種類が存在するのだ。

カタログなどに書かれてある、アルミ素材の「7NO1」「2017」とは?

アルミ

アルミには用途によってあらゆるタイプがある。アルミは大きく分けて、アルミニウム合金99%で構成される柔らかいアルミ(台所用品などに使用。別名1000系と呼ばれる)、そして亜鉛などが混じり合った高強度なアルミニウム合金(2000系~7000系がある)の2種類が存在。バイク用には剛性の高いアルミニウム合金(以下、アルミ合金)が用いられている。

アルミもいろいろ。それぞれの特徴

アルミ製バックステップ

アルミニウム合金は、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛などの配合をそれぞれ変更した、

<1> 2000系(バイク用、自動車用、航空機などに使用)

<2> 3000系(アルミ缶などに使用)

<3> 4000系(データ記録用メディアなどに使用)

<4> 5000系(バイク用パーツ、カメラ用部品、配管などに使用)

<5> 6000系(建造物、日用品などに使用)

<6> 7000系(バイク用パーツ、自動車用パーツ、航空機用部品などに使用)

などに分類。これらの中の一部が、バイク用パーツに使用される「2017」や「7N01」であるわけだ。パーツメーカーは製作するパーツによって、最適な素材をセレクトしている。

加工しやすいアルミ「A5052」

アルミホイール
バイク用アルミホイール
バイク用グリップバー
 適度な強度を持ちながらも、曲げ加工しやすいのが特徴。素材の形状は板状になっている場合が多い。アルミホイール、ステー類に多用。7N01と同じく、溶接しやすいのもポイント。 耐腐食性にも優れている。

2017よりも高強度なアルミ「7075」

バイク用リアスプロケット
バイク用キャリパーサポート
 アルミ合金の中では最強の強度を誇る7075。ただし腐食しやすいため、表面にアルマイトなど腐食防止加工を施す必要がある。他のアルミに比べ、素材の価格は高め。ドリブンスプロケット、キャリパーサポートなどに採用される。

抜群の強度を誇るアルミ「2017」

バイク用ステアリングステム
バイク用バックステップ

アルミ合金の中でも高い強度を誇るタイプ。トップブリッジやバックステップなど、アルミの塊を削り、穴を開ける削り出しパーツ製作用として採用される場合が多い。熱を加えると強度が低下するため、溶接には向いていない。

溶接用に開発されたアルミ「7N01」

アルミスイングアーム
アルミスイングアーム

溶接に適した溶接構造用アルミ合金。耐腐食性も良好。スイングアームやアルミフレームなどに採用される。素材の強度が高いだけでなく、溶接部分の強度が溶接部以外の箇所と同等まで回復するという、極めて優れた特性を持っている。

溶接にも適したアルミ「A5083」

リザーブタンク

5000系に属するA5083は溶接構造のアルミニウム合金。強度&耐腐食性に優れたタイプで、一般的には配管などにも多用。バイク用としては削り出しのリザーブタンク、オイルキャッチタンクの一部などに採用。

複雑な形状が可能なアルミ「A6063」

アルミ製マニホールド

6000系に属するA6063は複雑な形状の加工が必要なマニホールドなどの製作に適した素材。耐腐食性にも優れている。

フレームには各種アルミを組み合わせ

アルミフレーム

溶接に適した溶接構造用アルミ合金。耐腐食性も良好。スイングアームやアルミフレームなどに採用される。素材の強度が高いだけでなく、溶接部分の強度が溶接部以外の箇所と同等まで回復するという、極めて優れた特性を持っている。

アルミフレームの場合、メイン部を溶接に適した7N01、アルミ削り出し(※注1)のエンジンハンガー部を卓越した強度を持つ7075とするなど、各アルミの特性を活かしたつくりになっている。

※注1:アルミ削り出しとは

アルミブロックを削って製作されたパーツは一般的に「アルミ削り出しパーツ」と呼ばれる。アルミよりも素材の硬いスチール、加えてスチールよりも素材の硬いステンレスの削り出しは製作に時間がかかりコスト高となるため、採用されることはあまりない。

アルミ素材のカタチもいろいろ

アルミ素材
アルミ素材

どちらもスイングアームのメイン素材となる7N01パイプの断面部。リブ(補強板)が横方向に2本入った目の字型、縦方向に1本入った日の字型など、種類もいろいろ。各パーツメーカーは、使用箇所、使用目的、強度、コスト等を十分吟味した上で、使用する素材のカタチや厚み、リブ数などを選定している。軽量かつコストパフォーマンスに優れた、リブ無しタイプもある。

アルミ素材
アルミ素材

アルミパーツはココが凄い!

バイク用アルミハブ

モンキーやエイプなどのバイク用パーツに多用されるアルミ合金。フリークたちを魅了してやまないアルミパーツの魅力を、アルミ製パーツのエキスパートであるパーツメーカーの「Gクラフト」に聞いてみた。

アルミには衝撃を吸収する力もある?

削り出し

—アルミは高強度で仕上がりも美しい。プロの目から見たアルミの魅力は何ですか。

Gクラフト(以下・G):作り手側からの意見としては、まず加工がしやすいこと。たとえば1個のアルミの塊があるとする場合、その塊を細かく削り込むことができるんです。

—いわゆる“削り出しパーツ”ですね。

G:はい。アルミの削り加工は、主にエンドミル(写真)という特殊ドリルを使うんですが、アルミは素材自体が柔らかいから削りやすい。スチールの塊の場合、アルミよりもはるかに硬いですから、削り加工に物凄く時間がかかる。しかも径の細いエンドミルだと折れやすいんです。

バイク用アルミハンドル

—柔らかいのに強度が高い。アルミは非常に優れた金属といえますね。

G:かつてモトクロスをやった時、同じ車両でアルミ製ハンドルと、スチール製ハンドルの乗り味を比べてみたことがあります。その結果、アルミ製ハンドルは比較的長時間乗っても大丈夫だったんですが、スチール製ハンドルはすぐに上半身の筋肉が張った感じになり、そのうち腕が上がらなくなってきたんです。アルミはスチールよりも柔らかい分、衝撃を吸収する力もあるんですかね。あれは貴重な体験でした。

アルミvsスチールvsステンレス、「削り加工のしやすさ」を検証

アルミの長所。それはスチールよりもサビに強く、軽量で高強度。加えて素材が柔らかいため、ステンレスやスチールよりも曲げ加工や穴開け加工、削り加工がしやすいこと。ここではフライス盤という工作機械を使い、アルミ、スチール、ステンレスの削り加工のしやすさを比較してみました。

削り出し

アルミ板、スチール板、ステンレス板に、それぞれ「直径10mm×長さ30mm」の溝を設けてみます。削り加工にはエンドミルという特殊ドリルを使用。エンドミルを写真右方向にゆっくりと動かしながら削り込んでいきます。

その結果は…

アルミの加工時間:約40秒

素材の柔らかいアルミは、削り込みが非常にラク。エンドミルに掛かる負担も少なく、作業はスイスイ。

スチールの加工時間:約3分30秒

アルミよりも素材の硬いスチールは、アルミと同じように削り込もうとするとエンドミルの先端に無理な力が掛かって折れそうになる。結果としてアルミよりも作業に時間を要した。

ステンレスの加工時間:約5分10秒

スチールよりもさらに素材の硬いステンレスはとにかく硬い。少しでも無理をすると、エンドミルが折れそうになる。その結果、アルミの5倍以上の時間がかかってしまった。

素材の硬さを食べ物で例えるなら?

アルミ=ふわふわのカステラ(柔らかい)

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スチール=リンゴ(人によっては歯茎から血が出る)

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ステンレス=固焼きせんべい(噛み方を誤れば歯が折れる)

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2 件のコメント

  • GO_TO より:

    恐れ入りますが、スイングアームの項の『リベット』は『リブ』の誤りではないでしょうか?(リベットとは主に社外サイレンサーの止め具と思います)

    • 4mini.net より:

      ご指摘ありがとうございます。

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