HRCが放つ4スト縦型レーサー、ホンダ(HONDA) NSF100

NSR50/80のフレームに縦型エンジンを加工・搭載する手法は、エイプ100が登場した2002年以降、レーサーを中心に流行した定番のカスタム術。2005年、ついにHRCから縦型4スト100ccエンジン搭載の「NSF100」が登場した。発売以来、スプリントレースから耐久レースまで幅広く活躍している。

「HRC」が手掛けた市販レーサー

ホンダのレース部門「HRC」がプロデュースした市販4ストミニレーサーモデル「NSF100」は、2005年(平成17年)12月にデビュー(初回の購入予約受付は2006年1月13日まで)。

保安部品など”必要のないもの”を一切省いた、サーキットを走るために生まれた生粋のレース仕様だ。 ホンダワークスのモトGPマシン「RC211V」を彷彿させるスパルタンなデザインの外装類を採用。写真は2006年モデル。

NSF100はレース仕様車だが、保安部品の装着や発電機となるジェネレーターの変更などで公道走行仕様にするユーザーもいる。

強靭な足回り&パワフルなエンジン

フレームや足回りは、HRCが手掛けた市販2ストミニレーサーモデル「NSR Mini」を、エンジンはオフロードレーサーモデル「CRF100F」をベースにしている。 フレームには縦型エンジン搭載のため、ステーを追加装着。また各所に補強を施して強度を確保している(2スト50ccよりも4スト100ccのほうがエンジンの重量は重く、振動も大きくなるため)。

トップ部にイニシャルアジャスターを標準装備したフロントフォーク、PD22φキャブレターを組み合わせた8.4psの縦型エンジン、電気式タコメーター、センター出しのアップ型マフラーなど、レーサーに相応しいシステムが随所に投入されているのもポイントだ。

NSF100のデザインベースにもなったRC211V 。同車は2002年から2006年まで活躍したホンダのモトGPワークスマシン。エンジンは水冷4ストDOHC4バルブ5気筒エンジンを搭載。排気量は990cc。写真は2006年にチャンピオンを獲得したニッキー・ヘイデンによるライディング。

 ●NSF100のSPEC(2010年モデル) 

型式:HR01 全長:1556mm/全幅:595mm/全高:911mm/ホイールベース:1074mm/シート高:681mm/乾燥重量:73.6kg/燃料タンク容量:-/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒99.2cc/ボア×ストローク:53.0mm×45.0mm/圧縮比:-/最大出力:8.4ps/9500rpm/最大トルク: 0.75kgm/7000rpm/キャブレター:ケイヒンPD22φ/点火方式:CDI式/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前100/90-12 後120/80-12/当時の価格:43万500円

エンジンは「CRF100F」がベース

NSF100のエンジンは、2003年(平成15年)9月に発売されたCRF100F がベース。CRF100F とは、前身モデルであるXR100Rのフレームを強化し、サスペンションのセッティングを変更した市販のオフロードレーサー。

フロントサスペンションは新設計のクッションストローク150mmテレスコピック式、リヤサスペンションはアクスルトラベル148mmのプロリンクを採用。 ホイールはXR100Rと同様、前19インチ、後16インチに設定。パワフルな9.8psエンジンや、中口径のPD22φキャブレターはXR100Rと同じ仕様。

 ●CRF100FのSPEC(2003年モデル) 

型式:HE03/全長:1853mm/全幅:786mm/全幅:1046mm/ホイールベース:1249mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:5.5L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒99.2cc/ボア×ストローク:53.0mm×45.0mm/圧縮比:9.4/最大出力:9.8ps/9000rpm/最大トルク: 0.81kgm/7000rpm/点火方式:CDI式マグネット点火/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前2.50-19 後3.00-16/当時の価格:22万9000円

→ モトクロスレーサー、XR100R/CRF100F

フレームや足回り「NSR Mini」がベース

「NSR Mini」とは、HRCがプロデュースした2スト50ccエンジン搭載のレース専用モデル。NSF100のフレームと足周りは同車がベース。なお、NSR Miniのベースは、1995年型以降のNSR50。

混合オイル仕様、大型ラジエター、イニシャル調整が可能なフロントフォーク、減衰圧調整とプリロード調整が可能なサブタンク付リヤショックなど、レーサーならではのスポーティーな装備を採用。

12インチの前後ホイールは6本スポーク型ではなく、強度の高さからミニバイクレースでも人気のある3本スポーク型を装備。2009年で販売終了となった。

●NSR Miniのスペック

型式:RS50 全長:1580mm/全幅:590mm/全高:935mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:7.5L/エンジン形式:水冷2サイクル単気筒49cc/ボア×ストローク:39.0mm×41.4mm/圧縮比:7.2/最大出力:7.2ps/10,000rpm/最大トルク:0.65kgm/7,500rpm/変速機:6速リターン/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前100/90-12 後120/80-12/当時の価格:27万8250円

→ ミニバイクレースの雄、NSR50/80

NSR Miniのベースマシン「NSR50」

ミニバイクレースでも人気のNSR50は1987年(昭和62年)から1999年(平成11年)まで生産。その間、何度かモデルチェンジを受けている。 大きな分岐点となるのは、前後のホイール形状が3本型から6本型になった93年と、エンジン各部や足周りが強化されるなど事実上フルモデルチェンジとなった95年。

95年の変更時には、フロントフォーク長(ボトムケース下からトップ部まで)を約40mm延長。ちなみにフォーク長は変更前が約575mm、変更後が約615mm(スプリングの新旧によって異なる)。 NSR50用フロントフォークは4MINIチューニングにも多用され、一般的にモデルチェンジ前を「前期型」、モデルチェンジ後を「後期型」と呼んで区別している。写真は99年発売(最終型)のレプソルカラーモデル。

●NSR50/80のスペック(カッコ内は80/※写真・データはともに99年最終型)

型式:A-AC 10(HC 06)全長:1580mm/全幅:590mm/全高:935mm/乾燥重量:78kg(79kg)/燃料タンク容量:7.5L/エンジン形式:水冷2サイクル単気筒49cc(79cc)/圧縮比:7.2(7.1)/最大出力:7.2ps/10,000rpm(12ps/10,000rpm)/最大トルク:0.65kgm/7,500rpm(0.97kgm/8,000rpm)/変速機:6速リターン/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前100/90-12 後120/80-12/当時の価格:28万5000円(29万9000円)

→ ミニバイクレースの雄、NSR50/80

レーシーなアイテムが満載

NSF100のフレームはNSR Miniがベース。モンキーR、NSR50/80、NSR Miniへと伝承されてきた生粋のスポーツ仕様だ。 高剛性を誇るダイヤモンドタイプのツインチューブ型フレームの他、リヤショックは減衰圧調整とプリロード調整が可能な、NSR Miniでも定評のあるサブタンク付を装備。

前後ホイールは93年以降のNSR50/80にも採用の、12インチ6本スポーク型アルミキャスト。インナー径30φフロントフォークには、イニシャルアジャスターを採用。写真はシフトアップ製マフラーなどを装着したカスタム。

縦型エンジンはフロント側のエンジンマウントステー延長等でセット。フレームには強度アップのため、各部に補強が施されている。エンジンはキックアームなしの押し掛け専用だが、NSR50/80用純正や社外のキックアームが取り付け可能。

 RC211Vのデザインを踏襲したFRP製シートカウルは、ダクトを設けるなど手の込んだつくり。マフラーはレーシーなセンターアップ型。フロントカウルはRC211VをイメージしたFRP製。

NSF100_large_03

シンプルなメーター回り。中央にはRS125RやRS250Rにも採用の電気式タコメーターをセット。素早いスロットルワークにもリニアに反応する。フロントフォークにはフロントフォークスプリングの伸び縮みが調整可能なイニシャルアジャスターを装備。

フロントフォークのプリロードアジャスター

ヨシムラが勝つために本気で作ったNSF100改

2007年に開催された『鈴鹿Mini-Moto 4時間耐久レース』のオープンクラスで優勝したNSF100改。ヨシムラジャパンが手掛けたフルチューンの仕様。写真はカウルを取り外した状態。

パーツは125ccボア&ストロークアップキット、ヨシムラミクニTMR-MJN28キャブレター、レーシングチタンサイクロンマフラー、強化クラッチキットなど、すべてヨシムラ製でコーディネイト。

フロント部にダクトを装着してラムエアを導入するなど、独自のカスタムを実施。

NSR50/80に縦型エンジンを搭載した「RCV-mini」

NSR50/80用フレームを加工して縦型エンジンに載せ換えるカスタムは、エイプ100が登場した2002年以降、レーサーの間で人気となった手法。 写真上は「アクートグランプリファクトリー」がプロデュースした専用キットを使い、本格的なレース仕様にカスタマイズされた『RCV-mini』。このキットはFRP製カウル類、カウル取り付けステー、チタン製マフラー、フレーム加工等が1セット。別途、NSR50/80用フレーム&足回り、縦型エンジン、ハーネス等が必要となる。

中古車両や中古エンジンを安価で入手すれば、NSF100を購入するよりも安く仕上がるのがRCV-miniのポイント。写真は4ミニショップ「ファルコン」が手掛けたレース用。2001年に世界GP250ccクラスで故・加藤大治郎がシリーズチャンピオンを獲得した♯74 NSR250のカラーにペイントされている。

→ ミニバイクレースの雄、NSR50/80

★縦型エンジン搭載車 エンジンスペックの比較

50cc 最高出力 最高トルク 圧縮比 ボア×ストローク(mm) キャブレター(口径)
XR50M 3.3ps/8000rpm 0.33kgm/5000rpm 9.2 42.0×35.6 14φ
エイプ50 3.7ps/8000rpm 0.37kgm/6000rpm 9.2 42.0×35.6 14φ
R&P 4.1ps/9000rpm 0.36kgm/7000rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
TL50 4.2ps/9500rpm 0.36kgm/7500rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
XE50 4.5ps/9000rpm 0.37kgm/8000rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
CB50JX 6.3ps/1万500rpm 0.43kgm/8500rpm 9.5 42.0×35.6 18φ
51cc~90cc 最高出力 最高トルク 圧縮比 ボア×ストローク(mm) キャブレター(口径)
XE75 6.0ps/8000rpm 0.57kgm/6000rpm 9.0 48.0×41.4 15φ
XR80R 8.8ps/1万rpm 0.66kgm/9000rpm 9.7 47.5×45.0 20φ
CRF80F 8.8ps/1万rpm 0.66kgm/9000rpm 9.7 47.5×45.0 20φ
CB90JX 10.5ps/1万500rpm 0.76kgm/9000rpm 9.5 50.0×45.0 20φ
100cc 最高出力 最高トルク 圧縮比 ボア×ストローク(mm) キャブレター(口径)
XR100モタード 6.5ps/8000rpm 0.67kgm/6000rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
エイプ100(08) 6.3ps/8000rpm 0.67kgm/6000rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
エイプ100(初期型) 7.0ps/8000rpm 0.71kgm/6500rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
XR100R 9.8ps/9000rpm 0.81kgm/7000rpm 9.4 53.0×45.0 22φ
CRF100F 9.8ps/9500rpm 0.81kgm/7000rpm 9.4 53.0×45.0 22φ

【縦型エンジン搭載マシン】

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