モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

モンキーやエイプの2次側クラッチキットには「湿式」と「乾式」の2種類がある。見た目も大きく異なる両者には、どのような違いがあるのだろう。

街乗りに適した湿式クラッチ

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

湿式クラッチとは、エンジンオイルの潤滑を行うクラッチシステムのこと。シリンダー、ピストン、ミッションなど、エンジン内部を巡るエンジンオイルがクラッチにも行き届く、文字通り「湿った」タイプ。市販車のほとんどがこのタイプを採用している。

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ
モンキーのフリクションディスク交換

多くの社外の2次側湿式クラッチカバーには、エンジンオイルの汚れや量が一目で確認できる便利なチェック窓を装備。湿式クラッチ=エンジンオイルがクラッチを循環する文字通り「湿った」タイプであることが分かります。

クラッチ周りにエンジンオイルが循環する湿式は公道でも扱いやすく、神経質なクラッチ操作を必要としない万人向けのタイプ。このため市販車のほとんどのクラッチには湿式が採用されています。

湿式クラッチのポイント

<1> 摩擦係数(μ・ミュー)が低く、クラッチのつながりが滑らか。半クラッチもしやすく、低速時などは車体が安定しやすい。
<2> オイルによる潤滑及び、クラッチカバーに覆われているため、クラッチ接続時のノイズが少ない。
<3> オイルの潤滑によって自動的にクラッチ板のカスを清掃。クラッチ本体のメンテナンス頻度も少なくて済む。

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

エンジンオイルが潤滑する湿式クラッチ。公道でも扱いやすく、しかも手間いらず。神経質なクラッチ操作の必要がなく、ビギナーにもおすすめ。 (写真はデイトナカタログより)

ダイレクトにパワーを伝える乾式クラッチ

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

乾式クラッチとはエンジンオイルによる潤滑のないタイプ。エンジンオイルに触れることのない、クラッチがムキ出しになった文字通り“乾いた”タイプだ。レーシングモデルなどに採用されている(※注1)。

乾式クラッチの特徴は、

<1> オイルによる潤滑がないため、湿式よりも摩擦係数(μ・ミュー)が高く、滑りにくい。これによってエンジンパワーを確実に伝達し、パワーのロスを防いでくれる。
<2> 湿式よりもクラッチの切れが良く、クラッチがつながる時のダイレクト感が強い。
<3> 湿式に比べ、整備性が高い。
<4> 直接空気にさらされているため、走行時の冷却性が高い。

※注1:乾式クラッチが採用された国内の市販モデルは、ホンダNSR250やスズキGSX-750Rなどのレーサーレプリカがある。

乾式クラッチのデメリット

アグレッシブで無骨なイメージの高い乾式だが、意外とデリケート。その理由は、

<1> エンジンオイルによる潤滑・冷却がないため、発熱しやすい。そのため、半クラッチを多用するとクラッチが焼けやすい。
<2> 定期的に分解し、ベアリングなどに付着したクラッチ板のカスを掃除する必要がある。
<3> クラッチカバーに冷却用の窓が設けられているため、雨や泥が浸入しやすい。それらを付着したまま放置しておくと、錆が発生する。
<4> シャラシャラという乾式独自のノイズがある。

湿式クラッチよりもレーシーなクラッチフィールが体感できる乾式クラッチ。ただし、上記のような“独特のクセ”があるのも知っておこう。

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

乾式クラッチは「ストップ&ゴーを繰り返す街乗りには使用しない」「趣味はバイクいじり。クラッチのメンテナンスはお手のもの」「シャラシャラというレーシーなサウンドが最高」「整備は定期的にショップに依頼」等々というユーザーにはおすすめ。 (写真はデイトナカタログより)

モンキー・エイプの湿式クラッチと乾式クラッチ

乾式クラッチを社外のカスタムパーツで油圧式に変更したマシン。メカニカルなフォルムに仕上がるこの手法は、ストリートカスタムに多用。

【クラッチの関連ページ・初級編】

→ モンキーとエイプのクラッチの違い

→ モンキーに採用の1次側クラッチ

→ これがエイプに採用の2次側クラッチ

【クラッチの関連ページ・中級編】

→ レースの観点から見た湿式&乾式クラッチ

→ 自動遠心式クラッチをマニュアル式クラッチにする方法

【クラッチの関連ページ・上級編】

→ クラッチの分解・組み付け