スプロケットとは歯車のこと。この歯車の丁数(歯車の数・Tで表す)を変更すると、スタート時の加速や最高速が違ってくる。排気量や用途、走行場所によって変更・調整してやるのが一般的だ。
エンジン側は「ドライブスプロケット」
リヤホイール側は「ドリブンスプロケット」
バイクには2つのスプロケットがある。1つはエンジン側に取り付けられた「ドライブスプロケット」、2つめはリヤホイールに取り付けられた「ドリブンスプロケット」。
両者はドライブチェーンでつながっているが、それぞれの丁数を変えてやれば、スタート時の加速や最高速の変更・調整が可能。
なお、スプロケットの丁数を変えて乗り味を調整することを「ファイナルの変更」または「2次減速比の変更」と呼ぶ。
ドライブスプロケット(フロント側の歯車)
写真はモンキー・エイプ用。左から12T、13T、14T。ノーマルは13T。
例えば13Tから1丁減らして12Tにした場合、同じ速度で走行するためには、より高いエンジン回転数が必要になる。つまり最高速は落ちるけれど、加速性能はアップする。これを「ショートにする」「ショートに振る」という。
反対に13Tから14Tにした場合、発進などの加速性能は鈍るが、低いエンジン回転数で同速度での走行が可能となる。これを「ロングにする」「ロングに振る」という。
ドライブスプロケットの特徴としては、
<1> ファイナルを大きく変更したい時は、主にドライブ側で調整すること <2> ドリブンスプロケットに比べ、比較的交換が容易 <3> ドリブンスプロケットよりも安価 |
ドリブンスプロケット(リア側の歯車)
写真はモンキー・エイプ用各種。ドライブスプロケットとは逆に、丁数を増やせばショートになり、丁数を減らせばロングとなる。
ドリブンスプロケットの主な特徴は、
<1> ドライブ側1丁の変更が、ドリブン側ではおよそ3丁の変更にあたる。つまりドライブ側よりも、よりシビアなファイナルの調整が可能 <2> ブルーやゴールドなど、ドレスアップ度の高いカラフルなアルミ製アルマイトタイプもリリース。 |
「ショート」と「ロング」の関係性
ファイナルのショートとロングの関係は、自転車の変速機と同じ原理。
・ショートの場合…前後のスプロケットの丁数が離れるほど、スムーズに発進しやすく、坂道でも楽にこげる。ただしスピードが増すにつれ、ペダルをこぐ回数は増えるが速度は伸びない。
・ロングの場合…一方、前後のスプロケットの丁数が近づくほど、ペダルが重くなって発進しにくく、坂道も登りづらい。ただしスピードが増すにつれ、ペダルも軽くなり、速度も伸びてくる。
ファイナル=2次減速比の算出方法
ファイナルは別名「2次減速比」とも呼ばれる。2次減速比は、
ドリブンスプロケット÷ドライブスプロケット
で計算。ノーマルに対して数値が高ければショート、低ければロングとなる。ファイナルは大まかな調整をドライブスプロケット側で、微調整をドリブンスプロケットで行うのが一般的だ。
ボアアップ時やレース時の調整は必須
たとえばモンキーを88ccにボアアップしたとしよう。この時、ドライブスプロケットを13Tから14丁に上げ、ややロングに振ってやる必要がある。それはなぜか?
パワーアップを果たした反面、ノーマルのファイナルのままでは、各ギヤの最高速度が頭打ちになってしまうからだ。回転は伸び続けるが、速度が伸びなくなるという症状が起こる。
ちなみに88ccで、ドライブスプロケットを15Tまで上げるとどうなるか? ややロング気味になり、発進しづらくなるはず。
このようにファイナルはたった数丁の違いでも、走りに大きな影響を与える。ちなみにレースでは、走行するサーキットによってファイナルを変更・調整するのが当たり前。ストレートエンドの少し手前くらいでトップギヤが吹け切るようにセッティングするなど、入念な微調整を行っている。
ボアアップキットの中にはドライブスプロケット(矢印)を付属したものもあり。写真は必要なパーツがパッケージングされたボアアップキット。
丁数を大きく交換する場合は、チェーンのリンク数に注意
スプロケット交換時に注意したいのが、ドライブチェーンの長さ。1~2丁の増減程度ならスイングアームのチェーンアジャスターで調整可能だが、丁数を大幅に変更する時はリンク数の増減が必要となる。チェーンの長さが足りない場合はチェーン交換、長さが余る場合はチェーンカッターでリンクを詰める必要がある。
チェーンには一定の“遊び”を設けることが必要。チェーンラインをしっかりと確保し、指でチェーンを上下させてみる。ストリート走行用の場合は10~20mm程度の遊びがあればOK。
1次減速比と2次減速比の違い
ノーマル車のスペック表にも登場し、モンキーやエイプをベースにした4ミニレースなどでも頻繁に使う言葉が「1減速比」と「2次減速比」。両者の意味を説明しよう。
1次減速比
1次減速比とは、ミッションに接続されるプライマリードリブンギヤと、クランクシャフトに接続されるプライマリードライブギヤのギヤ比(ギヤレシオ)のこと。
プライマリードリブンギヤの歯車数(A)÷プライマリードライブギヤの歯車数(B)
で表す。
例えばA=69T、B=17Tの場合、1次減速比は4.058。これをA=67T、B=18Tにして1次減速比を3.722に落としたとしよう。すると発進加速は落ちるものの、回転を抑えての高速走行が可能となる。
これは下記の2次減速比も同じ。モンキーの場合、社外製クラッチに交換する、また純正他車用のプライマリードリブンギヤ及びプライマリードライブギヤに交換するというのが一般的な手法。
12Vモンキーに社外の2次側クラッチキットを装着したところ。右側がプライマリードライブギヤ、クラッチが装着された左側がプライマリードリブンギヤ。
2次側減速比
バイクには2つのスプロケットがある。1つはエンジン側に取り付けられた「ドライブスプロケット」、2つめはリヤホイールに取り付けられた「ドリブンスプロケット」。2次減速比とは、両者の比率を指す。
両者はドライブチェーンでつながっているが、それぞれの丁数を変えてやれば、スタート時の加速や最高速の変更・調整が可能。
なお、スプロケットの丁数を変えて乗り味を調整することを「ファイナルの変更」または「2次減速比の変更」と呼ぶ。
ファイナルは別名「2次減速比」とも呼ばれる。2次減速比は、
ドリブンスプロケット÷ドライブスプロケット
で計算。ノーマルに対して数値が高ければショート、低ければロングとなる。ファイナルは大まかな調整をドライブスプロケット側で、微調整をドリブンスプロケットで行うのが一般的だ。