バイクのタイヤ – 種類・選び方・サイズの見方

タイヤは乗り心地や走行フィールを左右する、非常に重要な足周りアイテム。モンキーやエイプなどの4ミニ用タイヤは、豪快なフォルムを演出するワイドタイプ、アグレッシブな走りが楽しめるハイグリップタイプ等々、幅広くラインナップされている。

ノーマルモンキーやノーマルエイプに採用のブロックパターンタイヤ

ノーマルのモンキーやエイプに採用されている、パターンの大きいタイヤ。平坦なアスファルト路面から未舗装路まで、実に幅広く活躍してくれる。見た目がゴツゴツしているため、ワイルドなイメージに仕上がるのがポイント。幅の広いワイド型のブロックパターンタイヤは、トラッカーカスタムなどに採用される場合が多い。

ミニバイクレースにも使用のハイグリップタイヤ

アスファルト路面で高いグリップ力を発揮するスポーティーなタイプ。直進安定性はもちろん、コーナリング特性にも優れている。ミニバイクレーサーから走りを重視するストリートユーザーまで、幅広く愛用されている。

ハイグリップタイヤとは?

ハイグリップタイヤ(high-grip tire)とは、「高い摩擦力のタイヤ」のこと。ツーリングタイヤや街乗りタイヤ(標準タイヤとも呼ばれる)に比べ、乾いたアスファルト路面でズバ抜けたグリップ力を発揮するのが特徴だ。

バイク用のハイグリップタイヤは1980年代中盤に起こったレーサーレプリカブームをきっかけに、「峠などでガンガン膝スリできるタイヤ」「公道でも使用できるレース用タイヤ」として人気に火が点いた。

柔らかいコンパウンドを使用

タイヤには路面に接触する「トレッド」という部分がある。タイヤはこの箇所で適切な接地面を確保し、安定した走行を実現する。

もしもこのトレッドが、プラスチックのような硬い素材だったとしたら…。適切な接地面が確保できず、コーナーはもちろん、直線でもツルツルと滑り、安定した走行はできない。安定させるためには、路面や走りの状況に応じて変形する、柔らかい素材にしてやればいい。

上記の原理を重点に置いて開発されたのがハイグリップタイヤ。標準タイヤよりも柔らかいコンパウンド(ゴム)を採用することで、トレッドの形状変更に自由度を持たせ、粘り強い路面への食い付きを実現しているのだ。

ゴムは一定の温度上では伸縮性があり、自由に形状変更できるのがポイント。その一方で、高温に弱いのがネック。多くのゴムは高温にさらすとドロドロの状態になってしまう。

ハイグリップタイヤはこのネックとなる部分を長所にしているタイヤだといえるのだ。

「カーカス」の剛性をアップ=コーナリングスピードをアップ

ハイグリップタイヤのカーカス(タイヤの横の部分)は、標準タイヤに比べて剛性が高められている。これはコーナリングスピードを高めるため。

コーナリングスピードが上がれば、G(抵抗)が増える。もしもカーカスの剛性が標準タイヤと同じだったら…。たとえ路面への食い付きは良くても、タイヤ本体の剛性が足りず、ふらついた走りになってしまう。

食い付きの良いハイグリップタイヤの性能をフルに発揮させるためには、カーカスの剛性を必然的に上げてやる必要があるわけだ。

路面とのダイレクト感の秘密

トレッドを柔らかくしてカーカスの剛性を上げてやると、標準タイヤよりも路面からの振動やキックバックが大きくなる。これがハイグリップタイヤならではのダイレクト感だ(ゴツゴツして乗り心地が悪いという人もいる)。

元来、タイヤは素材であるゴムの利点を活かし、乗り心地を向上させるもの。つまり衝撃を吸収するという役割がある。

ただし多くのハイグリップタイヤは衝撃吸収の大部分をタイヤ本体ではなく、サスペンションに依存。ハイグリップタイヤに採用の柔らかいトレッドは、あくまでもグリップを上げるための手段であり、乗り心地を向上させるのが目的ではないのだ。

トレッドの柔らかさ

冷えた状態のハイグリップタイヤのトレッドを指で触ってみると、標準タイヤよりも若干柔らかいと感じる程度。しかし路面を走行して温まってくると、標準タイヤよりも格段に柔らかくなるのが特徴。

アスファルトの路面温度が跳ね上がる真夏のレースなどでは、酷使されてトレッドがボロボロ(というよりもドロドロ)になったハイグリップタイヤが多数見受けられる。

多くのハイグリップタイヤは、路面との摩擦などによって発生する熱に敏感。標準タイヤよりも早い段階で、標準タイヤ以上にトレッドが柔らかくなり、アスファルトへの食い付きを始めるのがポイントだ。

冬場でもハイグリップなの?

多くのハイグリップタイヤには、夏用と冬用がある。冬用であれば、冬場でも卓越したグリップ力を発揮してくれる。

注意したいのが、路面の冷えた冬場に夏用を使用した場合。当然夏場ほどのグリップ力は期待できないと思っていいだろう。

ハイグリップタイヤは一定以上の温度で本来のグリップを発揮する、温度依存の高いタイプ。「タイヤが路面に食い付いてきた」と感じるまでは、間違ってもフルバンクなどしないように注意したい。

雨でもハイグリップなの?

ハイグリップタイヤだからといって、水に濡れたウエット路面の食い付きは良くはならない。雨の日のグリップの低下はハイグリップに限らず、すべてのタイヤに当てはまる。雨天時には晴れた日のような急制動や過度のバンク、スピードの出し過ぎは絶対に避けること。

ちなみに雨の日のレースでは、溝が多く排水性を高めた「レインタイヤ」を使用するのが定番。

  スリックタイヤ ハイグリップタイヤ スポーツタイヤ ツーリングタイヤ
晴れた日のグリップ力   ★★★★★  ★★★★☆  ★★★☆☆  ★★☆☆☆
 雨の日のグリップ力  ★☆☆☆☆  ★★☆☆☆  ★★★☆☆  ★★★☆☆

ノーマル車にハイグリップを履いたら?

パワーのないノーマルマシンにハイグリップタイヤを装着したら…。路面とタイヤの摩擦抵抗が増すことで、非力なエンジンパワーがタイヤに食われてしまい、運動能力が落ちてしまうということもありうる。

また簡素な足回りの車両の場合、路面からの衝撃が大きくなり、乗り心地が悪化する可能性もある。

ハイグリップタイヤの寿命は?

使用する季節や乗り方によっても異なるが、基本的には標準タイヤよりもやや摩耗は早い傾向にあるようだ。

パワフルなフォルムに仕上がるセミワイドタイヤ

ノーマルよりも幅の広いタイヤ。重量感のあるヘビーな足回りに仕上がるのがポイント。ストリート用が多数ラインナップ。

豪快なワイドタイヤ

パワフルな足下に仕上げるワイドタイヤ。ワイドタイプの合わせ型ホイール&タイヤチューブに組み合わせるのが一般的。タイヤの広がり具合によっては、ワイド型スイングアームの装着、またチェーンラインを出すため、スプロケットをオフセット化する必要あり。

太足カスタムの極めつけ、超ワイドタイヤ

バギー用や四輪用のタイヤを流用した、ハイエンドなカスタム術。このタイプのタイヤを装着するには、ホイールの加工だけでなく、スイングアームのワイド加工や、タイヤセンターを出すためのスペーサーやカラーを製作する必要がある。そのため、上級者製作の車両がほとんど。写真はバギー用の130/50-8サイズタイヤを履いたモンキー改。

→ ワイドホイールとワイドスイングアームの関係

ワイドタイヤの“引っ張り”とは?

タイヤを引っ張り気味に装着する。これはモンキーやエイプの4ミニカスタムだけでなくスクーターカスタムでも頻繁に用いられる技。太足カスタムの定番であるこの手法を説明しよう。

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「タイヤの引っ張り」と呼ばれるカスタムは、タイヤの推奨サイズを超えるリム幅のホイール(主にワイドホイール)を使い、リムが左右にタイヤを引っ張っているような状態で装着すること。

この手法は、タイヤを太く見せる太足カスタムに多用。重量感に溢れた、パワフルな足下に仕上がるのがポイントだ。

多くの場合、タイヤとホイールは適合外の組み合わせとなるので走行には十分注意する必要がある。

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ワイドホイールを使い、引っ張り気味にタイヤを装着。左右に引っ張られたタイヤは、標準ホイール装着時よりも、より太く見せることができる。

→ ワイドタイヤとワイドスイングアームの関係

 溝のないレース専用のスリックタイヤ

ロードレース専用タイヤ。乾いたアスファルト路面では、最高のグリップ力を発揮する。しかし雨で路面が濡れてしまった時などは、グリップ力が一気に低下するので危険。そのため、スリックタイヤは法律により街乗りでの使用が禁止されている。

定番のタイヤカスタム術

タイヤに表記されているブランド名をマーカーでペイントし、スポーティーなイメージに仕上げるワンポイントカスタム術。誰でも手軽に、しかも安価に行える定番の手法。

チューブタイヤとチューブレスタイヤは、どこが違う?

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タイヤチューブが必要なタイヤをチューブタイヤ、タイヤチューブの装着をレス化(省いた)タイヤをチューブレスタイヤと呼ぶ。

チューブレスタイヤはタイヤの内側に、「インナーライナー」と呼ばれる気密性の高い特殊ゴムを設置。路面との接触部や表面に刻まれた溝に釘が刺さっても穴が広がらず、空気が漏れにくいのが特徴だ。

一方、チューブタイヤは釘が刺さると、自転車のパンク同様、短時間で空気が抜けてしまいタイヤがペチャンコになってしまう。

チューブレスタイヤであっても、タイヤチューブを必要とする例

気密性の低い2ピースの合わせ型ホイールは、すべてのタイヤにチューブを装着するのが前提。チューブレスタイヤを履く場合も、当然チューブが必要となる。タイヤに空気を入れる場合は、自転車用の空気入れも使用可能(ただし空気入れには専用バルブが必要)。

チューブ入りタイヤは、自転車用の空気入れで作業可能

チューブタイヤ、また2ピースの合わせ型ホイールにチューブを入れてチューブレスタイヤを装着する場合は、自転車にも使用する空気入れで作業できる。

2ピースの合わせ型ホイールにチューブを入れてチューブレスタイヤを装着する場合、タイヤレバー(タイヤをホイールにはめこむ工具)を使う必要がないため、ホイールに傷が付く心配もなく、手軽に作業できる。

作業時は、①ホイール固定用ボルト&ナットはトルクレンチを使い、メーカーの規定値で締め付ける ②エアゲージで空気圧の管理をしっかりと行う、以上が重要。

チューブレスにはコンプレッサーが必要

チューブレスホイールにチューブレスタイヤを履かせるには、コンプレッサーが必要となる。チューブレスタイヤのビード部(ホイールのリムに密着する縁の部分)は、細いワイヤーで構成された非常に硬い箇所。この部分をリムに密着させるためには、高圧縮で空気を送ってやる必要があるのだ。

なお、リムに密着させる作業を、「ビードを出す」という。空気圧はエアゲージを使う、またガソリンスタンドに設置してあるコンプレッサーなど日頃からしっかりと管理しておこう。

小径ホイールのエアバルブについて

8インチや10インチの小径ホイールの場合、コンプレッサー側の注入口とホイール側のエアバルブとのクリアランスが確保できず、エアが充填できない場合がある。これを改善してくれるのが、便利なL字型のエアバルブ。ただしL字型はディスクブレーキの場合、キャリパーとエアバルブが接触してしまう場合があるので注意が必要。

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直線型のエアバルブ。

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L字型のエアバルブ。

タイヤのサイズの見方

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タイヤの側面には、タイヤサイズを表した数字やアルファベットが表示されている。この数字は、タイヤの大きさや太さだけでなく、特性や性能も確認できるようになっている。モンキーやエイプのタイヤ交換時は要チェック。

タイヤサイズはココをチェック

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<1> タイヤの幅

「その1」の場合はmm、「その2」の場合はインチ(1インチ=約25.4mm)。

<2> 扁平率

タイヤの幅に対するタイヤの高さの比率。タイヤの幅が同じ場合、この数値が低下するほど、横から見た時にタイヤが薄く見える。

<3> リム径

いわゆるホイール径。インチで表している。この数値のホイールに適合する。

<4> ロードインデックス

そのタイヤに負荷できる最大荷重。51は195kg、51は200kg。

<5> 速度記号

スピードレンジ。つまりそのタイヤが走行できる最高速度。Lは120km/h、Qは160km/h。

扁平率の計測方法

タイヤの高さをタイヤの幅で割り、100をかける。タイヤの幅が同じ場合、この数値が低下するほど、横から見た時にタイヤが薄く見える。

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65タイヤ

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90タイヤ

写真は100mm幅/65扁平タイヤと90mm幅/90扁平タイヤの比較。65扁平はタイヤが薄く見えるが、90扁平は肉厚たっぷり。65扁平はスポーティーで俊敏、90偏平はドッシリとしたヘビー級のイメージに仕上がる。

同じ12インチタイヤでも、肉厚が異なる65扁平と90扁平ではタイヤの外周が異なるのが大きな特徴。

レーシーなフォルムの足回りに仕上げてくれるファルコン製の12インチ65扁平タイヤ。

トラッカーカスタムなどに用いられるワイドなブロックパターンタイヤ。写真はワイドステム、社外10インチワイドホイール(合わせ型)、ノーマルハブ、ワンオフカラー、130/90-10タイヤなどでビッグフット化したエイプ改。

社外の8インチアルミホイール(合わせ型)に、扁平率の高い肉厚のバギータイヤを装着したモンキー改。

写真上は数々のスプリントレースで活躍した、水本レーシングのモンキーRレーサー。インチ径&扁平率の異なった、前後のホイールに注目して欲しい。「モンキーRには10インチがベスト」という理由から、フロントタイヤはF3.50-10サイズを、リヤタイヤは120/70-12サイズをチョイス。

後に12インチタイヤの方がグリップの良いタイヤが多い、コーナーの出口でスロットルを開けるタイミングが早められる等の理由から、フロントも12インチに変更されている。

【合わせて読みたいタイヤの関連ページ】

→ ワイドタイヤとワイドスイングアームの関係

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