クラッチはスムーズな変速のため、リアタイヤへとつながるエンジンの動力を断絶・接続するシステム。ノーマルのモンキーには「1次側クラッチ」、エイプには「2次側クラッチ」が採用されている。
1次側クラッチと2次側クラッチの違い
ノーマルモンキーに採用の1次側クラッチは、1次側(クランクシャフト)に直接クラッチが接続されたタイプ。一方、ノーマルエイプに採用の2次側クラッチは、2次側(トランスミッションのメインシャフト)にクラッチが接続されたタイプ。
クランクシャフトからダイレクトにパワーが伝達される1次側クラッチとは異なり、2次側クラッチは、 クランクシャフトが回転→プライマリードライブギヤが回転→プライマリードリブンギヤが回転… という具合に回転運動量を分割。クランクシャフトからクラッチ本体に伝わるパワーを、軽減させるしくみになっているのが特徴だ(下記イラストを参照)。
エンジンの「1次側」と「2次側」はこの箇所
クラッチカバーに加え、クラッチ周りをすべて取り外したところ。
クランクケースの真ん中あたりに突き出た2本のシャフトに注目(○内)。写真右側のシャフトを「1次側」、写真左側のシャフトを「2次側」と呼ぶ。
1次側のシャフト=クランクシャフト。1次側クラッチ採用のノーマルモンキー&ゴリラには、この部分にクラッチを固定。
一方、2次側クラッチ採用のエイプやオーバー100ccにボアアップされたモンキー改には、この部分に小径のプライマリードライブギヤが固定されている。
写真上は変速ミッション。「2次側」とは変速ミッションのシャフトを指す(反対側のシャフトにはドライブスプロケットを接続)。エイプのミッションは、この部分にクラッチを固定するため「2次側クラッチ」と呼ぶ。
1次側クラッチ採用のノーマルモンキー&ゴリラは、「1次側」にクラッチを固定。「2次側」には大径のプライマリードリブンギアが固定される。
1次側クラッチ
3馬力強という小さなパワー用に開発・採用された1次側クラッチ。クラッチをかわすため、クラッチカバーの前部がポッコリと出っ張っているのが特徴。2次側に比べ、クラッチカバーは全体的にコンパクトなイメージ。
クランクシャフトにクラッチが直結された1次側クラッチ。3馬力強のパワーでの使用を前提としているため、排気量をアップしてパワーを上げた車両の場合は、クラッチが滑る、クラッチが焼ける、クランクシャフトに負担がかかる、最悪の場合はクランクシャフトがねじ切れるなどのトラブルを招く場合もあるので要注意。
ノーマルモンキー&ゴリラのクラッチカバーを取り外したところ。1次側のシャフトに取り付けられたクラッチ本体が顔を出す。一方、2次側のシャフトには、ミッションに回転を伝達するための大径のプライマリードリブンギヤが接続されている。
2次側クラッチ
エイプ、XR50/100モタード、ドリーム50などのスポーツモデルに採用された2次側クラッチ。モンキーとは違い、クラッチ本体をミッション側に設置しているのが特徴。クラッチカバーもやや大振りなイメージに仕上がっている。
クランクシャフトではなく、トランスミッションのメインシャフトにクラッチ本体が接続された2次側クラッチ。プライマリードライブギヤを介することで、クラッチ本体の回転数を抑制。これによってクランクシャフトから伝わるパワーも軽減し、クラッチやクランクシャフトの負担を抑えているのが大きな特徴だ。なお、パワフルな88ccを越えるモンキーには、ノーマルの1次側クラッチから2次側クラッチへ変更するのが一般的。
モンキー改のクラッチカバーを取り外したところ。2次側のシャフトにクラッチ本体が、1次側のシャフトには小径のプライマリードライブギヤが固定。1次側クラッチとは各パーツの配置が「真逆」であることが確認できる。
【クラッチの関連ページ・初級編】
→ モンキーに採用の1次側クラッチ
→ これがエイプに採用の2次側クラッチ
【クラッチの関連ページ・中級編】
→ 湿式クラッチと乾式クラッチの違いを知ろう
→ レースの観点から見た湿式&乾式クラッチ
→ 自動遠心式クラッチをマニュアル式クラッチにする方法
【クラッチの関連ページ・上級編】
→ クラッチの分解・組み付け