「旋盤を使ってワンオフのカラーを製作」等々、カリカリにカスタムされたマシンの紹介記事にも度々登場する『旋盤(せんばん)』という工作機械。この機械は円柱状の金属を削り込む機械。どんなカタチをして、どんな風に使用するのでしょう。
円柱の金属を自由に加工
旋盤(せんばん)とは円柱状の金属を回転させ、固定されたバイトという金属用刃物で切削加工する工作機械。写真の業務用普通旋盤は、
対象物を削り込んで小径化する
外側をテーパー状にする
対象物の中心部にドリルで穴を開ける
ドリルで開けた穴をテーパー状にする
などの作業ができます。
10万円前後で購入できる簡易型の卓上旋盤(一般に金属用であれば、小径のアルミ製カラー程度なら製作可能)や、複雑な加工も可能なコンピューター制御のNC旋盤やCNC旋盤(業務用。価格は新品で1千万円以上が一般的)などの種類があります。
円柱状の材料を固定するための「チャック」と呼ばれる箇所。白の点線部分に専用工具を挿入し、時計回りに回転させると、矢印の方向に3つのチャック部分が移動し、材料を挟み込むしくみ。
金属切削用刃物の「バイト」を固定する台。専用工具を使ってバイト固定用ボルトを緩め、バイトの取り外しと高さ調整を行います。なお、台は前後・左右・上下に移動します。
バイトの先端部分。写真のように先端が欠けてしまったり、切れ味が悪い場合は、穴開け用ドリル同様、据え置き式のグラインダーで研ぎます。
バイトにはいくつかの種類があります。写真左は対象物の周囲や上下部を削る標準タイプ、写真右はドリルで開けた穴の内径を削り込む「中ぐりバイト」と呼ばれるタイプ。
バイトの動きを制御する二つのハンドル
バイトの動きを制御する二つのハンドル。右側の大径ハンドルは、左右の動きを制御するためのもの。時計回りに回せばバイトの固定台が右側に、反時計回りに回せば左側に平行移動します。
一方、左側の小径ハンドルは、前後の動きを制御するもの。時計回りに回せばバイトの固定台が前に(作業者の反対側)、反時計回りに回せば後ろ(作業者側)に垂直移動します。この旋盤には、機械が一定のスピードでハンドルを動かしてくれる自動送り装置も装備されています。
外周の削り込み
まずは金属の円柱の外周を削ってみます。対象物は直径38mmのスチール。これを直径37mmまで削ってみましょう。
チャックに対象物を挟み込みます。対象物に対し、三方に別れたチャックの荷重が平均的に掛かるようにするのがポイント。対象物が大きくて重い場合、対象物を斜めに固定したり、締め込みが甘ければ作業中に外れてしまう恐れがあるので非常に危険。この作業は、特に注意する箇所です。
まずはバイトの刃先が対象物の中心にくるよう、バイトの高さを調整。
調整後、前後移動用ハンドルを回しながら対象物とバイトの刃先の距離を詰め、次に左右移動用ハンドルを回してバイトを平行移動します。
37mmになるまで外周部分を少しずつ削り込んでゆきます。ちなみにこの旋盤は、0.1mm単位での削り込みが可能です。
上下の削り込み
今度は先程削り込んだ外周部と上部の90度(直角)を出すため、上部を削り込みます。
まずは左右移動用ハンドルを回して対象物とバイトの刃先の距離を詰め、前後移動用ハンドルをゆっくりと回転させながらバイトを垂直移動。表面を薄く削り込みます。
凸凹になった上部が平らになるまでこれを繰り返します。
いったん主要電源を切り、チャッキングされた対象物を取り外します。
削り込んだ部分を再度しっかりとチャッキングし、先程と同じ要領で下半分の外周及び、上部の削り加工を実施します。
中心部に穴を開ける
旋盤のチャックの反対側には、ドリル用チャックが装着できる移動台が設置されています。
この移動台は、前後に移動します。また、移動台本体の後端にはハンドルがあり、回せばドリルの接続部分が前後に伸縮。これにより対象物中心部への穴開け加工が可能となります。
ドリルの交換方法は、市販の電動ドリルやボール盤と同じく、専用ハンドルを使いチャック部を広げて交換します。今回は12mmの穴を開けてみます。
切削部分に注油しながら、ドリルを徐々に伸ばしてゆきます。カラーやスぺーサーを製作する場合は、対象物にドリルを貫通させます。
段階的に穴の径を拡大したり、穴をテーパー状にするには、先端部に緩やかな角度を付けた「中ぐりバイト」を使用。コンパクトな形状のため、内側が削り込めます。
このようにして製作・加工されるのが、マフラーのエンドバッフル、ホイールセンターを出すためのカラーやホイールスぺーサー、アウターローターの軽量加工などです。ただし、これらはほんの一例。その他にも、旋盤は様々な部品の製作に活用されています。
※注ご注意…工作機械を使った作業には危険が伴います。初心者は熟練者の指導の下、正しく、慎重に作業して下さい。なお、パーツの加工、その他の作業の際に発生したパーツや工作機械の破損、ご自身の怪我に対する責任は当サイトでは負いかねます。あくまでも自己責任で作業して下さい。
【工作機械のページ|穴を開ける】
→ 手軽に穴あけが可能、電動ドリル
→ 確実な金属の穴あけを実現、ボール盤
【工作機械のページ|ネジを切る】
→ 丸穴にネジを切る工具、タップ
【工作機械のページ|削る・研磨】
→ 据え置き型の両頭グラインダー
→ 細かな削りや研磨に便利、リューター
→ 荒削りや研磨、仕上げに使用、ディスクグラインダー
→ 面取りや研磨に便利、ベルトサンダー
→ 金属面を“真っ平ら”に研磨、平面研磨機
【工作機械のページ|削り込む】
→ 多様な切削加工を実現、フライス盤
【工作機械のページ|切断する】
→ 大型の金属板を即時に切断、シャーリング
→ 自由な形に金属を切断、コンターマシン
→ 金属を溶かして切断、バーナー
→ 短時間で金属棒を切断、金属用ノコギリ
【工作機械のページ|つなげる】
→ 金属を溶かして接続、溶接機
【工作機械のページ|曲げる】
→ 金属を曲げ加工、プレスブレーキ