エンジン内に混合気を送り込む『吸気バルブ』、エンジン内の爆発によって発生した排気ガスをエンジンの外に排出する『排気バルブ』。この2つは「カムシャフト」「ロッカーアーム」「カムチェーン」によって動いている。モンキーとエイプの各パーツを見てみよう。
吸排気バルブを動かす4つのパーツに注目
エンジンのカムシャフト
軸上にカム山(凸)を設けたカムシャフト。略して「カム」と呼ばれることもある。
シリンダーヘッド内で回転することにより、カム山がロッカーアームを押し上げる=テコの原理で吸排気バルブを押し下げるというしくみ。
カム山は吸気バルブ側用ロッカーアーム&排気バルブ側用ロッカーの2つを装備。写真はエイプ系用のカムシャフト(社外品)。
エンジンのロッカーアーム
カムシャフトの回転運動を「吸排気バルブを押し下げる力」に変えるパーツ。
写真はミニバイク用としては定番の、1本の吸気バルブ用×1個、1本の排気バルブ用×1個の2バルブタイプ(ノーマル12Vモンキー用)。
2本の吸気バルブ&2本の排気バルブを押し下げるレーシーな4バルブタイプ(タイトルバックの写真/デイトナ製のエイプ用)もあり。
エンジンのカムチェーン
腰下に組み込まれたクランクシャフトの回転運動を、腰上のカムスプロケットに伝達するチェーン。
排気量をアップしてパワーアップする場合は、チェーンの負担が増えるため、強化型チェーンに交換する必要がある。写真は社外の強化型。
クランクシャフトのスプロケット部に引っ掛けられたカムチェーン。カムシャフトが回転=カムシャフトに固定されたカムスプロケットが回転するというしくみ。
エンジンのカムスプロケット
カムスプロケットはカムシャフトに固定する、外周部に歯車の付いたパーツ。
クランクシャフトから伸びたカムチェーンを外周部に引っ掛け、カムシャフト横にボルトで固定する。写真は12Vモンキーのエンジン。
カムシャフトとロッカーアームの動き → ピストンの動き
1.吸気
ピストンが下降すると同時に、カムシャフトの吸気側のカム山が作用して吸気用ロッカーアームを押し上げる。するとテコの原理によって吸気バルブをプッシュ。吸気バルブが開放された結果、エンジン内ではピストンが下がり続けて物を吸い込む力が発生。キャブレターが作り出したガソリンと空気の混合気を吸い込む。
2.圧縮
ピストンが上昇。するとロッカーアームを押し上げて開いていたカムシャフトのカム山が回転によって通り過ぎ、吸気バルブが閉じられる。密閉状態となったエンジン内では、上昇するピストンによって混合気が圧縮される。
3.爆発
もっとも高い位置にピストンが到達。カム山はまだ2つのロッカーアームに到達せず、2つのバルブは閉じられたまま。この状態で点火プラグが着火し、圧縮された混合気が一気に爆発。この衝撃でピストンが急降下する。
4.排気
再びピストンは上昇。ピストンが上がると同時に、排気側のカム山が排気用ロッカーアームに到達。ロッカーアームを押し上げ、排気バルブをプッシュする。開放された排気バルブ、ピストンの上昇により、爆発によって発生した排気ガスがマフラー側に排出される。
12Vモンキー用シリンダーヘッド(ノーマル)
12Vモンキー用シリンダーヘッド上部のヘッドカバーを外し、上から見たところ。中央に吸気用と排気用のロッカーアームがセットされている。写真上が吸気用ロッカーアーム、写真下が排気用ロッカーアーム。
シリンダーヘッド内にカムシャフトを装着しているところ。12Vモンキー用はヘッド横の丸い窓から脱着できる。ロッカーアームに引っ掛からないよう、カムシャフトのカム山を下に向けて挿入するのがポイント。
ロッカーアーム、カムシャフトを組み付けたシリンダーヘッドをエンジン本体側に装着中。シリンダーからダラリと下がったカムチェーンをヘッド側に引き込みながら装着する。
細めのマイナスドライバーなどを使い、カムスプロケットにカムチェーンを引っ掛ける。
カムスプロケットを2本のボルトで固定。固定時はシリンダーヘッド側の切り欠き、スプロケットに刻まれた○印(白い丸)、そしてフライホイール側のTマークとクランクケースの切り欠きを合致させる(赤い丸)のがポイント。これはバルブタイミングを合わせるための作業。
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