ここまできたら、12Vモンキーのエンジン分解作業は終わったも同然。左右のクランクケースを密着しているボルトを外し、中のミッションやクランクシャフトなどを取り外すだけだ。ワッシャー等の紛失に注意しながら、慎重にバラしてみよう。
左右のクランクケースを固定している取り付けボルトを取り外す。各ボルトの長さは箇所によって異なるので、取り付け時はボルトを差し込んだ時の長さが均一になるようにすることが大切。
取り付けボルトをすべて抜いたところ。ボルトを外しても分割できない場合は、プラスチックハンマーで周囲を均等に叩いてやる。
取り付けボルト部や接合部の段差部分など、肉厚の部分を叩くことが大切。肉薄の部分を強く叩くとケースが破損するので要注意。
【下記に登場するパーツの関連ページ】 → 腰下を構成するパーツ
左右のクランクケースが分かれたら、クランクケース左側を下にして蓋を開けるようにゆっくりとケース右側を取り外す。
取り外した右側のクランクケース。
右側のクランクケースを取り外した状態。
キックスタータースピンドルを取り外す。クランクケースから抜き取るだけでOK。
取り外したキックスタータースピンドル。取り付け時にはギヤ部にオイルを塗布し、フリクションスプリングの先端をクランクケースの溝にはめる。
落とさないように注意しながらミッションを取り外す。
ミッションにはスラストワッシャー、ニュートラルスイッチローターが組み込まれているので紛失に注意する。
ニュートラルスイッチローターは、ミッションを変速させるシフトドラムに固定。
左側クランクケースからクランクシャフトを慎重に引き抜く。
オイルポンプを動かすオイルポンプスピンドル、スタッドボルト以外はすべて取り外し完了。
左側クランクケースには、ノックピンが2箇所セット(指で示した箇所)されているので、紛失や組み忘れに注意しよう。
真二つに分割されたクランクケース
左右に分割された12Vモンキー用クランクケース。再度パーツを組み込む前に、クランクケース全体はもちろん、各部をキレイに洗浄することをお忘れなく。
クランクケースの点検と洗浄
エンジンを分解したら、クランクケース本体はもちろん、エンジン内部の各部をキレイに洗浄。特にパワーアップしたモンキーやエイプのチューニングエンジンは、ノーマルに比べて各部に負担が掛かっている場合あり。大きなトラブルを招く前に、各部のチェックをしっかりと実施したい。関連パーツに問題があれば、即交換です!
組み込む前に、まずはキレイに洗浄!
エンジンを分解したら、エンジン各部の金属のカスやスラッジ(オイルやカスが固まって泥状になったもの)をキレイに洗浄すること。
洗浄には灯油やホワイトガソリンを使うのが一般的だが、パーツショップやホームセンター等で売っているパーツクリーナーでもOK。
場所に余裕があれば、洗浄に加え、細かなゴミやカスを吹き飛ばしてくれるエアコンプレッサーを使用したい。エアコンプレッサーはタイヤの空気注入など、バイクのメンテナンス何かと役立つアイテムだ。
古いガスケットはキレイに除去!
古いガスケットの再使用はオイル漏れや、パワーダウンの原因となる圧縮漏れなどを招く。
再度パーツを組み込む時は、フランジ部に傷を付けないようにカッターナイフやスクレーパーで古いガスケットをキレイに削り取り、新品のガスケットに交換する。
キレイに削り取った箇所は、オイルを馴染ませながら「オイルストーン」で軽くならせば完璧。ガスケットは各パーツメーカーからリリースされているので要チェック。
オイルストレーナーの洗浄
ドレンボルト上にはエンジンオイルのゴミを「ろ過」するオイルストレーナーが設置。
オイルストレーナーを引き抜き、パーツクリーナーやエアコンプレッサーで細かなゴミを洗浄する。
スタッドボルトの緩みを点検
スタッドボルトが緩んでいれば、クランクケース接続側にネジロック剤を塗布後、規定トルクまで締め付ける。締め過ぎはクランクケースの破損を招くので要注意。
取り付け・取り外しは、適合するナットを別途2個用意し、ダブルナット(写真)にして作業する。
●規定トルク:0.5kg・m(※)
カムチェーンの点検
高回転型のチューニングエンジンは、カムチェーンも酷使。動きは正常か、傷や破損はないかなど、一コマ一コマじっくりと点検してみる。
クランクシャフト軸受け周りの点検
クランクケースでも特に酷使されているのが、クランクシャフトの軸受け部分。特にパワーアップしたボアアップエンジンは「軸受け周りに亀裂はないか」「軸受けの内部に傷はないか」などを点検する。
ベアリングの破損・浮きはないか?
クランクケースに設置されたベアリングを手で回してみる。ベアリングにガタつきなでの破損はないか、ベアリング本体が浮き上がっていないかを点検。
浮き上がっている場合は、ベアリングの周りを対角線状に、加えて均等に「ポンチ」を打つ。
ゴリゴリと音がしてスムーズに動かない、抵抗があるなど破損している場合は要交換となる。交換には「ベアリングプーラー」という専用工具が必要なので、プロに頼むのが一般的。
スチール板の穴開け作業。白いマーカーの部分に「ポンチ」を打っているところ。
ミッションのギアに“欠け”はないか?
高圧縮エンジンでのキック始動の失敗、6速ミッション(4速に比べ、1枚のギアが肉薄)での急激なシフトダウンなどでミッションのギアが欠けていないかを確認。
ギアが欠けている場合はミッションを分解し、欠損したギアを交換する。補修箇所の型番や価格、注文方法等は、一般的に各パーツメーカーのカタログなどに掲載されている。分からない場合は、直接問い合わせてみよう。
クランクシャフトのコンドッド点検
クランクシャフトのコンロッドを手で持ってひねり、ガタツキがないかを点検。ガタつきが酷い場合は、基本的にクランクシャフトは要交換となる。
レーサーなどは軸のブレを正す「芯出し」を実施。チューニングショップや内燃機屋さんに依頼するのが一般的だ。
クランクシャフトのベアリング点検
クランクシャフトベアリングに破損はないか、ベアリングはスムーズに回転するか、ベアリングの外周部に傷はないかを点検する。
圧入されたクランクシャフトベアリングの交換には専用工具が必要なので、交換はプロに頼むのが一般的。
オイルポンプの動作確認
オイルポンプ中央の動作部分(凸部)を手で動かし、ポンプが正常に作動するかを確認する。
クランクケースの組立
パーツをキレイに洗浄し、各部の点検が終わったら、いよいよパーツの組み付け開始。基本的に組み付けは、分解した時の逆の要領。ただし組み付け後、組み付けたパーツがキチンと動作するかどうかを逐一確認することが大切だ。エンジンが始動した時の感動を、心ゆくまで味わって欲しい!
動作部分にはすべてオイルアップを!
エンジンパーツの組み付け時の基本。それは各部のベアリング、軸受け部、ミッションのギヤ部、回転部分など、『回転する箇所』『上下する箇所』にエンジンオイルを注油すること。
またオイルシールやOリングのある箇所は、グリスアップをお忘れなく。
クランクシャフトの回転部分やベアリングにオイルを注油し、左側のクランクケースにセット。
軸受け部に挿入する時は、絶対に無理やりこじらず、万有引力にまかせて自然にスッポリとはまるようにする。
ミッションのメインシャフト、カウンターシャフト、シフトドラムを正確に組み付け、ギヤ部や動作部分にオイルを注油。ニュートラルスイッチ、スラストワッシャーも忘れずに固定する。
ミッションは両方の手で包み込むように、ガッシリとつかむのがポイント。クランクケース装着時は、クランクケース側にある各シャフトのオイルシールを破損させないよう、ゆっくりと挿入すること。
【ミッションの関連ページ】
ミッション組み込み時は、ニュートラルスイッチやスラストワッシャーの落下にも注意。
ミッションを組み込んだところ。右側クランクケースを組み付ける前に、ミッションのメインシャフトやカウンターシャフトが回転するかを確認してみる。
キックスタータースピンドルを固定。取り付け時にはギヤ部にオイルを塗布し、フリクションスプリングの先端をクランクケースの溝にはめる。
左側クランクケースを下にする。次に、組み込まれたシャフト類を慎重に貫通させながら、右側クランクケースを被せるようにキッチリと組み付ける。
なお、キックスタータースピンドルの貫通部にあるオイルシールには、事前にグリスを塗布しておくこと。
クランクケース取り付けボルトを締め込む前に、クランクシャフトやミッションのシャフトがスムーズに動作するかを確認しておく。
クランクケース固定ボルトを差し込む。各ボルトの長さは箇所によって異なるので、取り付け時はボルトを差し込んだ時の長さが均一になるようにすること。
トルクレンチを使い、クランクケース固定ボルトを均等に締め付ける。
●規定トルク:1.2kg・m(※)
締め付け後はクランクシャフトとミッションのベアリング部分にオイルを注油。
また再度クランクシャフトやミッションのシャフトがスムーズに動作するかを確認しておく。
【以降の作業は】
の順番で組み付けていく。
パーツの取り付けにはトルクレンチを使用
各部の取り付けにはトルクレンチを使い、規定トルクで締め付けることが大切。規定トルク以外で締め付けた場合は、
1. トルクの掛けすぎによるパーツの破損
2. ボルトやネジの緩み
を招く恐れがあるので注意しよう。
グリップ部を回転させて規定トルクに設置。設定トルクをデジタルで表示する便利なタイプもあるので要チェック。
※注:上記締め付けトルク値はメーカーのサービスマニュアルによるものであり、各メーカーのパーツによって異なる場合があります。
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