モンキーのエンジン組付 2 – 腰上(シリンダーヘッド回り)

モンキーの排気量を49ccから88ccにアップ!

「腰上」分解の次は、シリンダーヘッド、シリンダー、ピストンの組み付け。ここではモンキーの排気量を49ccから88ccにアップする、ハイパワーな“ボアアップキット”の組み付けに挑戦してみよう。組み付け時は必ずトルクレンチを使い、規定トルクでの締め付けを厳守することが大切です。

腰上パーツを取り除いたところ

フレームから降ろし、腰上パーツを取り外した12Vモンキーのエンジン。

モンキーやゴリラの場合、腰上の分解・組み付けは、フレームにエンジンを載せたままでもOK。

※注:フロントタイヤの空気を抜く。またボアアップキットの種類によってはフロントホイールを取り外す、フロント周りを取り外す等の作業が必要。

スタッドボルトの取り付け・取り外し

古いクランクケースのガスケットを除去するため、スタッドボルトを取り外す。取り付け・取り外しは、適合するナットを別途2個用意し、ダブルナット(写真)にして作業する。

スタッドボルトの取り付け時は、クランクケース接合部側にネジロック剤を塗布し、規定トルクまで締め付ける。スタッドボルトの締め過ぎは、クランクケースの破損を招くので要注意。

●規定トルク:0.5 kg・m(※)

古いガスケットはキレイに除去すること!

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古いガスケットの再使用はオイル漏れ、パワーをロスの原因となる圧縮漏れなどを招く。

再度パーツを組み込む時は、フランジ部に傷を付けないようカッターナイフやスクレーパーで古いガスケットをキレイに削り取り、新品のガスケットに交換する。

作業時はエンジン内にゴミが入り込まないよう、ウエスを詰めておくこと

キレイに削り取った箇所は、オイルを馴染ませながら「オイルストーン(写真)」で軽くならせば完璧。ガスケットは各パーツメーカーからリリースされているので要チェック。

ピストンに傷を付けないよう慎重にはめ込む。ピストンリングの広げ過ぎは破損のもととなるので注意しよう。

ピストンにピストンリングをはめ込む時の注意点。それは、各リングは120°に振り分けるということ。各パーツメーカーに付属の説明書に従い、間違いのないように組み付けよう。

ピストンは↓マークもしくはEXマークのある方を下に、INマークがある方を上に向けるのが基本(一般的にピストンの頭部に明記)。

まずはピストンの片方にピストンクリップをセットし、コンロッドに配置。ピストンピンの表面にオイルを注油し、ピストン横から挿入する。

細めのマイナスドライバーやラジオペンチを使い、ピストンの溝にピストンクリップをはめ込む。

ピストンクリップは作業中に弾け飛ぶ恐れあるため、微妙な力加減が必要。

ピストンクリップの合い口と、ピストン本体の接着部の合い口は、必ず反対側になるようにセットすること。作業はマイナスの精密ドライバーを使うのが便利。

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ここでシリンダー登場。

シリンダーを取り付ける前に、新しいパッキン、シリンダーの位置を決めるノックピン2本(赤矢印)、Oリング(赤○内)をセットする。

ピストンリング周り、ピストンの側面、シリンダーの内径部にオイルを塗布。

指で1つ1つピストンリングを縮めながら、シリンダーにピストンを挿入してゆく。

ピストンリングをまとめて縮め、一気に挿入するのではなく、ピストンリングを1つ1つ縮めながら、時間をかけて挿入してゆくのがコツ。

カムチェーンを沿わせながら、取り付けボルトでカムチェーンガイドローラーを取り付ける。

●固定ボルトの規定トルク:1.0kg・m(※)

シリンダー取り付けボルトを仮止めする。

スタッドボルトにノックピンを2本、シリンダー上にヘッドガスケット、Oリングを2箇所()設置する。

ここでシリンダーヘッドが登場。

カムシャフトのカム山(2つの凸部)を下に向けた状態で、シリンダーヘッドにカムシャフトを挿入する。

カムチェーンを引き寄せながら、4本のスタッドボルトをシリンダーヘッドに貫通させる。なお、取り付けボルト(矢印)は仮止めの状態にしておく。

引き込んだカムチェーンはシリンダー側に移動しないよう、細めのドライバーなどでシリンダーヘッド側に固定しておく。

シリンダーヘッドカバーを取り付け(内側の↓を下に向けること)、4つのナットをはめ込む。

矢印の1箇所のみ、銅ワッシャーが採用されている(スタッドボルト部分がオイルラインとなっているため)。

ワッシャー位置の間違えはエンジントラブルの元。組み付けは十分注意しよう。

シリンダーヘッドカバー取り付けナットを取り付ける。

取り付ける場合は必ずトルクレンチを使い、対角線状に数回に分けて締め付けること。

●規定トルク:1.2kg・m(※)

シリンダーヘッドカバー取り付けナットを本締めした後、シリンダー取り付け用ボルト、シリンダーヘッド取り付けボルトの順で本締めする。

●規定トルク:1.2kg・m(※)

バルブタイミングの調整方法

まずはフライホイールのT字マークとクランクケースの切り欠きを合致させる。

次にシフトアーム横にあるボルトを緩める。これによってカムチェーンのテンショナーが抜け、以下の作業がしやすくなる。

詳しくは「4ミニを楽しもう! エンジン系のカスタム チューニング後のエンジン調整 カムチェーンテンショナーのしくみ、調整方法」を参照。

エンジン内にオイルが入っている場合、ボルトを緩めるとオイルが出てくるので、事前に拭き取り用のウエスを用意しておくこと。

カムスプロケットにカムチェーンを噛ませる。

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カムスプロケットの○印とシリンダーヘッドの切り欠き、またフライホイールのT字マークとクランクケースの切り欠きを合致()させた状態で、固定用ボルトを締め付ける(黄○)。

カムスプロケット穴とカムシャフトにあるネジ山は、精密ドライバーなどを突っ込んで合致させる。

詳しくは「4ミニを楽しもう! エンジン系のカスタム チューニング後のエンジン調整 バルブタイミング調整のポイント

バルブクリアランスの調整方法

モンキーレンチなどで吸気側(青○)と排気側(赤○)のタペットキャップを開ける。

シックネスゲージを使い、吸気側のバルブと排気側のバルブクリアランス(すき間)を調整する。

詳しくは「4ミニを楽しもう! エンジン系のカスタム チューニング後のエンジン調整 バルブクリアランスの調整方法」を参照。

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プラグ側の右ヘッド用サイドカバーボルトを締め付け、タコメーター用の社外ギヤボックスを取り付ける。

ちなみにノーマルには通常、ギヤボックスの代わりに左ヘッド用サイドカバーがセットされている。

●規定トルク:1.0kg・m(※)

パーツの取り付けにはトルクレンチを使用すること!

各部の取り付けにはトルクレンチを使い、規定トルクで締め付けることが大切。規定トルク以外で締め付けた場合は、

1. トルクの掛けすぎによるパーツの破損

2. ボルトやネジの緩み

を招く恐れがあるので注意しよう。

グリップ部を回転させて規定トルクに設置。設定トルクをデジタルで表示する便利なタイプもあるので要チェック。

※注:上記締め付けトルク値はメーカーのサービスマニュアルによるものであり、各メーカーのパーツによって異なる場合があります。

次なるステップ →クラッチの分解・組み付け

前の作業に戻る →腰上パーツを分解する

 

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