世界中で愛されてきたカブには、これまで様々なタイプが登場した。ここでは日本国内、また各国で活躍してきたユニークなカブをご紹介しよう。
■取材協力:ホンダコレクションホール
1972年 ニュースカブC90(日本)
目立ち度抜群のブライトイエローカラーにペイントされた新聞配達ニュースカブ。1972年、生産累計600万台達成記念モデルとして反響のあった受注生産の新聞配達用カブを本格的に設定したもの。
雨天時や早朝でも視認性の高いイエローのカラーリング、信号待ち時に便利な3速ロータリーミッション、エンジン始動が容易なセルフスターター、未舗装路面でも容易に停車できる設置面の大きなサイドスタンドなどを備えている。
当時の価格は10万5000円(1970年の公務員初任給は3万6100円)。
リアキャリア横には雨や風からガッチリ新聞をガードする、収納用バッグが取り付けられている。
●SPEC エンジン:空冷4スト単気筒OHC89cc/最大出力:7.5ps/9500rpm/最大トルク:0.67kgm/6000rpm/ミッション:自動遠心クラッチ3段ロータリー/重量:91kg
ポストオフィスカブ(オーストラリア)
オーストラリアで使用されていた郵便配達用のカブ。ベース車両は1981年に日本でも発売された、レジャー兼商用車のCT110。
パワフルな105ccエンジン、小柄で軽量な車体、5.5ℓの大型フューエルタンク、大型キャリアなどの装備は1981年の日本仕様と同じ。
リア回りが隠れてしまいそうなほど、大きなサイズのサイドバッグ。
●SPEC エンジン:空冷4スト単気筒OHC105.1cc/最高出力:7.2ps/7500rpm/最大トルク:0.755kgm/6000rpm/ミッション:自動遠心クラッチ4段リターン/最高速度:85km/h/重量:91.1kg
1971年~ デリバリーMD50
当時の郵政省と共同開発されたスーパーカブベースのMDシリーズ、通称・郵政カブ。MDとは「Mail Delivery=郵便配達」の略。1971年にMD90、1973年にMD50(写真)が登場している。
剛性アップが狙えるテレスコピック型フロントフォーク、低重心の前後14インチホイール、燃料タンク別体型の高剛性車体、疲れ知らずのアップ型バーハンドルなどを採用。
寒冷地用にはグリップヒーターやアイシング対策用のキャブヒーターも装備。また一般モデルよりもいち早くCDI点火や12Vバッテリーが採用された。
退役後の一部車両は海外に輸出、また国内の中古車市場に払い下げられている。
フロントキャリアには〒マーク入りの革製カバンを設置。
●SPEC(1973 MD50) 全長:1820mm/全幅:705mm/全高:1085mm/重量:89kg/燃料タンク容量:5.0ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/圧縮比:9.5/最大出力:3.8ps/7000rpm/最大トルク:0.41kgm/5500rpm/キャブレター:ケーヒンPB41/変速機:3速リターン/クラッチ:自動遠心式/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前後2.75-14
1962年 ポートカブC240
カブのさらなる需要拡大を狙ったスーパーカブの廉価モデル。扱いやすさと低価格にこだわり、各部を簡素化。
ポートという名称には「世界のどの港にもある」という意味が込められており、開発時はヨーロッパへの輸出も視野に入れられていた。
新開発の鋼板プレスフレーム、パイプハンドル、パワーを抑えた控えめなエンジン、2速ミッション、前後15インチホイール、やや小振りなレッグシールドなどを採用。コストダウンのため、ウインカーやテールランプは装着されていない(当時は装着義務なし)。
当時の価格はスーパーカブよりも1万2000円安い4万3000円(1960年の公務員初任給は約1万800円)。
専用ステーで固定されたマフラー。ホイールは前後とも15インチを採用。
スリムなメインフレーム回り。左サイドカバー内にはエアクリーナーを設置。
シーソー式のチェンジペダルを採用。ミッションは3速ではなく2速。ペダルの後方にはキックペダルを装備。
シンプルな形状のパイプハンドル回り。
●SPEC 全長:1680mm/全幅:590mm/全高:920mm/重量:54kg/燃料タンク容量:3.0ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHV単気筒49cc/ボア×ストローク:40mm×39mm/圧縮比:8.3/最大出力:2.3ps/5700rpm/最大トルク:0.335kgm/4000rpm/変速機:2速/クラッチ:自動遠心式/タイヤサイズ:前後2.25-15/最高速:50km/h
1963年 C310(ヨーロッパ)
1963年、ベルギーで生産開始されたホンダ初の海外生産となった記念すべきペダル付きのモペット。
1962年、ベルギーにホンダモーターSAが設立。同社がヨーロッパのモペット市場への参入を図るために開発されたのが、このペダル付モペットだ。
シート下に収納スペースを設けるなど、機能面&デザインとも欧州向きに設計されている。
高級感溢れるツートンカラーのシート。
●SPEC エンジン:空冷4スト単気筒OHV49cc/最高出力:1.8ps/4500rpm/最大トルク:0.31kgm/4000rpm/ミッション:自動遠心クラッチ3段+マニュアル/重量:71kg
カブラ(CUBRA)
ホンダ・アクセスがプロデュースしたカブ用外装パーツ、カブラシリーズ。同パーツを装着したカブカスタムは「カブラ」と呼ばれたが、写真は車両込みの限定バージョン(1996年)。
レッグカバーやサイドカバーなどのドレスアップパーツで個性的なフォルムへと変身。1998年にはリトルカブをベースにしたリトルカブラも登場した。
当時の価格は15万5000円(1995年の公務員初任給は18万500円)。
ボリューム感溢れるカブラのリアフォルム。シングル風シートとの一体感もGOOD。
レッグカバーの装着は、今やカブカスタムの定番。
シティカブ(1993年東京モーターサイクルショー出品)
1993年の東京モーターサイクルショーに参考出品。パーソナルコミューターとしてのスーパーカブの新たな姿を提案した、プロトタイプの近未来カブだ。
フロント&リアの足回りは片持ち式を採用。ミッションは自動遠心3速ではなく、オートマチックトランスミッション。メーターはデジタル式。カブのフォルムを残しながらも、当時の最新テクノロジーが随所に盛り込まれている。エンジンは空冷4スト単気筒OHC49cc。
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