ホンダ縦型エンジン搭載スポーツ、CB50/90、XE50 etc.

1960年代中盤、ホンダは“小排気量スポーツモデル”の冠を「スポーツカブ」から「ベンリイ」に移行。横型エンジンを搭載したベンリイCS50/90やSS50などのスポーツモデルを生み出した。70年初め、今度は小排気量スポーツの座を縦型エンジン搭載車に移行。2ストのMBが登場するまでの約10年間、縦型4ストエンジンを搭載したCBは、ホンダの小排気量スポーツモデルとして君臨した。

CBの第1号は「ベンリイCB90」

エイプ50/100に継承の単気筒OHC縦型エンジン。その歴史は、1970年(昭和45年)1月にリリースされたベンリイCB90から。

CB90はスポーティーなダイヤモンドフレームに、新設計のOHC89ccエンジンを搭載したスーパースポーツモデル。アルミ合金製のシリンダーヘッド、特殊バルブシート、吸排気効率の高いポート形状などを採用。

10.5psのパワーをフルに活かせるリターン式5速ミッション、耐久性の高い新機構のカムチェーンテンショナー、ハイパワーを余すところなく伝達する大容量の多板湿式クラッチ、大径17インチホイールなどを装備している。

●SPEC 

全長:1885mm/全高:1015mm/全幅:750mm/重量:92kg/燃料タンク容量:7.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒89cc/ボア×ストローク:48mm×49.5mm /圧縮比:9.5/最大出力:10.5ps/1万500rpm/最大トルク:0.76kgm/9000rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/当時の価格:9万円

伝説のスーパーゼロハン、ベンリイCB50が登場

1971年(昭和46年)5月、スーパースポーツ50ccモデル「ベンリイCB50」がデビュー。

CB50のために新設計されたダイヤモンドフレーム、パワフルかつ高耐久を誇る新設計のショートストローク型直立エンジン(6ps)、正立型フロントフォーク、大径17インチホイールなど充実の装備。

スポーティーなメガフォンタイプのダウンマフラー、スポーツ走行に不可欠なタコメーター、便利なヘルメットホルダーなど、当時の最新人気のアイテムも随所に導入されている。

●SPEC 

全長:1780mm/全高:980mm/全幅:670mm/重量:74kg/燃料タンク容量:7.0ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42.0mm×35.6mm/圧縮比:9.5/最大出力:6.0ps/1万500rpm/最大トルク:0.41kgm/8500rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前後2.50-17/当時の価格:7万5000円

CB90にFディスクブレーキを採用

1972年(昭和47年)4月、ベンリイCB90はモデルチェンジ。フロントに、世界初となる自動調整装置付きのメカニカルディスクブレーキ(JX-DISK)を採用。

名称は「ベンリイCB90JX-DISK」に変更された。スポーティーなカラーリング、ワンタッチで開く横開きシートも新たに採用されている。

フロントにはスポーティーなディスクブレーキを採用。

フロントディスクブレーキ仕様の「ベンリイCB90JX-DISK」に加え、前後ドラムブレーキ仕様の「ベンリイCB90JX」も同時リリース。制動距離はディスク仕様が13.5m、ドラム仕様が14m(ともに初速50km/h)。

●SPEC(カッコ内はドラムブレーキ仕様) 

全長:1870mm/全高:1025mm/全幅:745mm/重量:92kg(91kg)/燃料タンク容量:7.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒89cc/ボア×ストローク:48mm×49.5mm /圧縮比:9.5/最大出力:10.5ps/1万500rpm/最大トルク:0.76kgm/9000rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/当時の価格:9万9000円(9万3000円) 

タンクの形状やブレーキを変更

1973年(昭和48年)5月、ベンリイCB50は新しくなって登場。ベンリイCB90JX-DISKに採用のメカニカルディスクブレーキを新採用(写真はドラムブレーキ仕様)。

また、タンクの形状やカラーリングも変更された。名称はベンリイCB50から「ベンリイCB50JX」に変更されている。当時の販売価格は8万6000円。

前モデルよりも全体的に角張ったスタイルにチェンジ。

エンジンを見直し、6.3psまでパワーアップ

1976年(昭和51年)2月、ピストン、カムシャフト、バルブスプリングなどを見直し、高速回転までスムーズに回る特性に変更した「ベンリイCB50JX-1」が登場。

メガフォンタイプのマフラーは、3段特殊形状の内径を採用。脈動効果の高い内部構造とし、パワフルな走りと静粛性を確保している。

パワーは6.3psまでアップ。フロントフォークはポテンシャルの高い27φ成立型。スリムで形状の大容量8.5L入りガソリンタンクなど、スポーツムードも満点。写真のカラーは1978年モデル。

スポーツモード全快のスパルタンな外観。ダイヤモンドフレームにパワフルな縦型エンジンを搭載。写真のカラーは1978年モデル。

●SPEC 

全長:1790mm/全高:950mm/全幅:665mm/重量:83kg/燃料タンク容量:8.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42mm×35.6mm /圧縮比:9.5/最大出力:6.3ps/1万500rpm/最大トルク:0.43kgm/9500rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤ:前2.50-17後2.75-17/当時の価格:11万9000円

トライアルスタイルの「バイアルスTL50」

1976年(昭和51年)2月、トライアル風の外観に仕上げたバイアルスTL50が仲間入り。同車はトライアル人気に火をつけたTL125/250に続く、トライアルの入門用モデル。

4.2psの縦型エンジンは、トライアルにも適したバルブタイミングに設定。水中走行も視野に入れたミドルアップマフラーや高めにレイアウトされたエンジン、27φ正立フォーク、5段階調整が可能な新設計スプリング採用のリヤショックなどを装備。リヤキャリアや専用のツールボックスなど、街乗りも考慮されている。

●SPEC 

全長:1825mm/全高:985mm/全幅:735mm/重量:80kg/燃料タンク容量:8.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42mm×35.6mm /圧縮比:9.5/最大出力:4.2ps/9500rpm/最大トルク:0.36kgm/7500rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤ:前2.50-17後2.75-16/当時の価格:11万9000円 

クロスカントリーバイク、XE50とXE75

クロスカントリー(オフロード耐久走行)モデル、XE50とXE75。ベンリイCB50JX-1とTL50が発売された1976年(昭和51年)2月に登場した。

両車とも、ショートストローク型の縦型エンジンを搭載。正立フォーク、サイズの異なる前後ホイール、スイングアーム式リヤショックなど足回りも充実。

街乗り、ツーリング、オフロード走行など、幅広いシチュエーションに対応するマルチなモデルとして人気を誇った。ミッションは4速。写真は50。

●XE50のSPEC(カッコ内はXE75) 

全長:1725mm/全高:935mm/全幅:710mm/重量:78kg(79kg)/燃料タンク容量:5.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc(74cc)/ボア×ストローク:42.0mm×35.6mm(48.0mm×41.4mm)/圧縮比:9.5(9.0)/最大出力:4.5ps/9000rpm(6.0ps/8000rpm)/最大トルク:0.37kgm/8000rpm(0.57kgm/6000rpm )/変速機:4速リターン/クラッチ:手動式/タイヤ:前2.50-16 後2.75-14(3.00-14)/当時の価格:10万9000円(11万9000円) 

XEの後期モデル、XE50-2/75-2

1978年(昭和53年)2月にはXE50/75のカラーや各部を見直した「XE50-2」と「XE75-2」がリリース。ミッションは4速から5速に、フロントフェンダーはオプション設定だったアップ型に、ステップはオプション設定だった歯形に変更された。エンジンや足周りは同じ。78年モデルはXE50/70の後期型とも呼ばれる。

写真はXE50-2。価格は11万9000円。


写真はXE75-2。価格は12万9000円。

XE50/75の後継モデル、「XL50S/80S」

1980年(昭和55年)2月、XE50/75の後継モデルとして「XL50S/80S」が登場。アップ型フロントフェンダー、右出しアップマフラー、高めにレイアウトされた縦型エンジンなど、オフロードテイスト満点の外観がポイント。利便性の高いリヤキャリアも装備されている。写真は50S。

ダブルシート、タンデムステップを備えた80S。

1981年(昭和55年)2月、50Sと80Sの外装カラーやロゴを変更。写真は80S。

●XL50SのSPEC(カッコ内は80S) 

全長:1760mm/全幅:755mm/全高:970mm/軸距:1135mm/乾燥重量:71kg(74kg)/燃料タンク容量:5.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc(74cc)/ボア×ストローク:42.0mm×35.6mm(47.5mm×45.0mm)/最大出力:4.5ps/9000rpm(6.3ps/8000rpm)/最大トルク:0.37kgm/8000rpm(0.57kgm/6000rpm )/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤ:前2.50-16 後2.75-14(3.00-14)/当時の価格:13万9000円(14万9000円)

便利なリヤキャリアを装備

1980年(昭和55年)2月、CB50JXを改良した「CB50S」が登場。利便性向上を狙い、リヤキャリアを標準装備しているのが大きな特徴。

6.3psの縦型エンジン、縦長の8.5Lタンク、油圧式フロントディスクブレーキ、正立フォーク、17インチスポークホイールは健在。なお、1979年には7psを誇る、2スト49ccスポーツモデルのMB-5(ファイブ)が、1980年にはMB-8(エイト)がリリースされている。

●SPEC 

全長:1790mm/全高:975mm/全幅:685mm/重量:83kg/燃料タンク容量:8.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:42mm×35.6mm /圧縮比:9.5/最大出力:6.3ps/1万500rpm/最大トルク:0.43kgm/9500rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤ:前2.50-17後2.75-17/当時の価格:13万9000円

CB50の最終モデル

1981年(昭和56年)2月、CB50Sはエンジンや足回り、外観はそのままに、カラーリングを変更。CB50Sは「小排気量4ストスポーツ」、MB-50&MB-80は「小排気量2ストスポーツ」として位置付けられていたが、このモデルを最後に生産終了。「小排気量スポーツ」の座を2ストのMBシリーズに受け渡した。

最終モデルはシックなブラックとカラフルなレッドの2種類。

「スポーツ」は4ストから2ストへ

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出典:旧き良きモノ

写真は1979年のカタログ。CB50は1979年に登場した2ストモデル「MB50」とともに「ホンダのスポーツ50」として登場するが、1980年代初頭、「スポーツ」の座を2ストモデルにバトンタッチした。
★縦型エンジン搭載車の変速比の比較
1速 2速 3速 4速 5速 共通車両
XR50モタード 3.083 1.882 1.400 1.130 0.960 エイプ50、
CRF100F、CB50、
TL50、XE50/75(後期)、R&P
XR100モタード 3.083 1.882 1.400 1.130 0.92 エイプ100、XR100R
CRF80F 2.692 1.823 1.400 1.130 0.960 XR80R
XE50/75(前期) 3.083 1.882 1.333 1.041

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→ バイクのミッション,ギアレシオとクロスミッション

★縦型エンジン搭載車 エンジンスペックの比較
50cc 最高出力 最高トルク 圧縮比 ボア×ストローク(mm) キャブレター(口径)
XR50モタード 3.3ps/8000rpm 0.33kgm/5000rpm 9.2 42.0×35.6 14φ
エイプ50 3.7ps/8000rpm 0.37kgm/6000rpm 9.2 42.0×35.6 14φ
R&P(50cc) 4.1ps/9000rpm 0.36kgm/7000rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
TL50 4.2ps/9500rpm 0.36kgm/7500rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
XE50 4.5ps/9000rpm 0.37kgm/8000rpm 9.5 42.0×35.6 15φ
CB50S 6.3ps/1万500rpm 0.43kgm/8500rpm 9.5 42.0×35.6 18φ
51cc~90cc
XE75 6.0ps/8000rpm 0.57kgm/6000rpm 9.0 48.0×41.4 15φ
XR80R 8.8ps/1万rpm 0.66kgm/9000rpm 9.7 47.5×45.0 20φ
CRF80F 8.8ps/1万rpm 0.66kgm/9000rpm 9.7 47.5×45.0 20φ
CB90JX 10.5ps/1万500rpm 0.76kgm/9000rpm 9.5 48.0×49.5 20φ
100cc
XR100モタード 6.5ps/8000rpm 0.67kgm/6000rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
エイプ100(08) 6.3ps/8000rpm 0.67kgm/6000rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
エイプ100(初期型) 7.0ps/8000rpm 0.71kgm/6500rpm 9.4 53.0×45.0 16φ
XR100R 9.8ps/9000rpm 0.81kgm/7000rpm 9.4 53.0×45.0 22φ
CRF100F 9.8ps/9500rpm 0.81kgm/7000rpm 9.4 53.0×45.0 22φ

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1 個のコメント

  • カブ より:

    エイプ系のエンジンの元は、CB50系の流れで異論ありませんが、CB90のエンジンは違う系列になるかと思います。後に125~に発展していく系列のものと理解していますがどうでしょうか。

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