ローダウン仕様など硬派なカスタムで人気のシャリーだが、実は家族みんなで楽しめるファミリーバイクを目指して開発されたアットホームなモデル。女性にも人気のあった同車は時代の経過に伴い、フォルムも変化している。
ビギナーでも安心して乗車できる操作性を確保
1972年(昭和47年)7月、初めてバイクに乗る人でも安心して乗れる操作性と乗降性を盛りこんだファミリーバイク、「シャリイ(Chaly/88年型よりシャリィ、95年型よりシャリーに変更)」が登場した。
同車はスーパーカブ同様、カブ女性でも簡単に乗車できる低床バックボーンフレームを採用しているのが大きな特徴。エンジンは低・中速域での使い易さを重視したカブ系の横型を搭載している。当時は下記の3種類がラインナップされていた。
CF50-Ⅰ…排気量49cc/2速ロータリー変速/前後輪ハンド式ブレーキ/当時の販売価格:7万3000円
CF50-II…排気量49cc/3速ロータリー変速/当時の販売価格:7万5000円
CF70…排気量72cc//3速ロータリー変速/2人乗り可能/当時の販売価格:7万8000円
カスタムに人気のカブトフェンダー+4本スポーク
1976年(昭和51年)4月には透過光式メーター、両面キーを採用するなど使いやすさを向上した「CF50-Ⅲ(10万5000円)」「CF70-Ⅲ(10万8000円)」を追加発売。
また、既存の「CF50-II(10万2000円)」「CF70-II(10万5000円)」には、ハンドル前面に新設計の大型バスケットを標準装備するなど実用性を高めている。
●CF50-ⅢのSPEC
全長:1615mm/全幅:630mm/全高:960mm/乾燥重量:76kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:3.2ps/7000rpm/最大トルク:0.34kgm/6000rpm/変速機:3速ロータリー/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:10万5000円 |
人気のシャリー・カスタム術
シャリーのカスタムで人気なのが、初期のシャリーにも採用された兜(かぶと)のような形状のカブトフェンダー、フォークブーツ付フロントフォーク、モンキーや初期型ダックスにも採用の折り畳みハンドル、4本スポークホイール、スピードメーター一体型の丸形アップヘッドライトを組み合わせる方法。どっしりとした丸っぽいシルエットに仕上がる特徴だ。
定番のカスタム術・フロント編
シャリーのカスタムは、ダックスのカスタムと傾向が似ている。中でもカブトフェンダー装着車をベースに、フォークブーツ付ノーマルフォークをショート化してローダウンするカスタムが人気の手法。
また、「社外製10インチワイドホイール・初期型のノーマル4本スポークハブ・ノーマルのドラムブレーキ・極太タイヤ」の組み合わせ、「豪華な社外製12インチアルミホイール・ディスクブレーキ・12インチ65扁平タイヤ」の組み合わせも人気の手法となっている。
アルミキャストホイール、ディスクブレーキを組み合わせた豪華なシャリー改。
定番のカスタム術・リア編
ダックス同様、ショートタイプのリヤショック(250mm前後)を装着してローダウンするカスタム術が人気。初期型のノーマル4本スポークハブに社外製極太ホイール、極太タイヤを組み合わせ、迫力あるリアフォルムに仕上げるのも定番の手法だ。
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ビッグキャブレターの装着術
レッグカバーの上部のカバーを取り外す、もしくは切削加工してビッグキャブを装着する。これはシャリーならではのカスタム術。キャブの口径アップによるパワーアップはもちろん、スパルタンなフォルムに仕上がるのが大きなポイント。
モデルチェンジで扱いやすさを向上
1979年(昭和54年)3月、54年騒音規制に適合させるべくシャリーはモデルチェンジ(CF50-II/ CF70-II)。
騒音規制に適合した静かな排気音の49cc&72ccのエンジンは、中・低速の出力が向上。また、エンジンオイルの消費の少ないピストンリングの採用等で、より信頼性のある4サイクルエンジンに生まれ変わった。
明るさを増したヘッドランプ、大きくて見やすくなったリアコンビネーションランプ、操作しやすいようハンドルの左側にまとめたスイッチ類など、利便性もアップしている。
このモデルは初期型に採用されたスチール製カブトフェンダーから樹脂製フェンダーに変更。また49cc版のホイール(写真)は3本スポークに変更された。
フロントバスケット付(Ⅲ型)は5000円高。写真は49ccのCF50-Ⅲ。ヘッドライトはダウン化されている。
写真上の2台は72cc(CF70-Ⅲ)のフロントバスケット付モデル。49ccとは異なり、ホイールは初期型と同じ4本スポーク。
●CF50-IIのSPEC<カッコ内はCF70-II>
全長:1605mm<1630mm >/全幅:660mm/全高:965mm/乾燥重量:72kg<74kg>/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc<72cc>/ボア×ストローク:39mm×41.4mm<47mm×41.4mm>/最大出力:3.2ps/7000rpm<4.2ps/7000rpm >/最大トルク:0.37kgm/6000rpm〈0.52kgm/5000rpm〉/変速機:3速ロータリー/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:11万2000円<11万7000円> |
世界初のリッター100kmを達成
1981年(昭和56年)1月、世界初となるリッター100kmの超低燃費エンジン(30km/h定地走行値)とパワーアップを両立させた新型のシャリイ50が登場。
燃焼室のコンパクト化、ピストン部の軽量化によるフリクション(抵抗)の低減、大型エアクリーナーの採用による吸気効率の向上、ピストンバルブ式キャブレター採用による燃費及び低中速域の出力向上、このクラス初となるCDI点火の採用など、当時の最新の技術がフル投入されている。
角型ヘッドライト、角型ウインカー、角型サイレンサー等々、外観は角ばったフォルムに変更済。
女性ユーザーを意識したカラフルな黄色と赤色バージョン。フロントバスケットは標準装備となった。
72ccバージョンもリリース
1981年にはシャリイ50、シャリイ・50ATとともに、タンデムステップ、タンデムシートを装備したシャリイ70もリリース。
エンジンはボアを39mmから47mmに拡大し(ストロークは50と同じ)、72ccまでアップ。パワーも4.2psまで上昇。また、1983年にはマイナーチェンジにより、パワーが4.6psまで引き上げられた。なお、83年以降型が72cc版の最終モデルとなる。
横型49ccのATエンジンを搭載
1981年発売モデルには横型49ccエンジンに、3速オートマチックミッションを組み合わせた「シャリイ・50AT」、通称ATシャリイもラインアップ。
メカニカルなこのミッションは、エンジンの回転数や車速によって自動的にギア比を変更するという機構を採用。ホンダでは4スト初となるオートチョークも盛り込まれている。
独創的かつ革新的なシステムを投入しながら、価格は通常バージョンよりもわずか6000円高。この価格設定にも注目したいところ。
2ストスクーターの驚異的な普及によって横型エンジン+ATは程なくして姿を消したが、現在でもこのシャリイ・50AT用エンジンにこだわるマニアックなユーザーは多数存在。ちなみに通常のマニュアル式及び、自動遠心式クラッチ&ミッション関連パーツとの互換性はない。
自動遠心式に比べ、やや出っ張ったクランクケースカバー。この中に関係パーツがギッシリと詰まっている。ATシャリイのミッションは、3個の遠心式クラッチが1、2、3速の各領域を分担。ユニバーサルギア、変速用ギア、スタートを制御するラチェットポールワンウェイクラッチ、変速用とキックスターター用のワンウェイクラッチなど、独自の機構が盛り込まれている。
ブラックカラーのシックなATシャリイ。
1981年4月にはセルフスターター付(キックスターター併用)のATシャリーもラインナップ。女性でも簡単にエンジン始動できる便利なモデル。
●1981年モデルのSPEC【※ATシャリイ】<※シャリイ70>
全長:1650mm/全幅:645mm【655mm】/全高:995mm/乾燥重量:75kg<76kg>/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc<72cc>/ボア×ストローク:39mm×41.4mm<47mm×41.4mm>/最大出力:3.5ps/7000rpm<4.2ps/7000rpm >/最大トルク:0.38kgm/6000rpm〈0.52kgm/5000rpm〉/変速機:3速ロータリー【3速オートマチック】/クラッチ形式:自動遠心式【オートマチック】/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:12万3000円【12万9000円】<12万8000円> |
リッターあたり115kmを達成
1983(昭和58年)4月、シャリィ50はリッター115kmを達成した超低燃費エンジン(30km/h定地走行値)を搭載。パワーも3.5psから4.0psにアップしている。
また、停車時にのみロータリー式となる新ロータリーチェンジ機構を採用。より快適な走行を可能にしている。49ccと72ccあり。どちらもカラーリングを変更。
艶やかなグリーンカラー。同年11月、シャリィ50に速度警告灯を設置して安全性を向上(13万5000円)。
●1983年4月発売モデルのSPEC<カッコ内はシャリィ70>
全長:1665mm/全幅:645mm/全高:995mm/乾燥重量:72kg<73kg>/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc<72cc>/ボア×ストローク:39mm×41.4mm<47mm×41.4mm>/最大出力:4.0ps/7000rpm<4.6ps/7000rpm >/最大トルク:0.44kgm/5500rpm〈0.55kgm/5000rpm〉/変速機:3速新ロータリー/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:13万3000円<14万3000円> |
12VのMFバッテリーを採用
1988年(昭和63年)2月、シャリィ50はモデルチェンジ。カラーリングの変更とともに、25W/25W→30W/30Wのクリプトンヘッドライトへの変更、12VのMF(メンテナンスフリー)バッテリーの採用など最新のシステムが盛り込まれている。エンジンや足回りに大きな変更はなし。
●1988年モデルのSPEC
全長:1665mm/全幅:645mm/全高:985mm/乾燥重量:72kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:4.0ps/7000rpm/最大トルク:0.44kgm/5500rpm/変速機:3速新ロータリー/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:14万1000円 |
カラーリング&ロゴを変更
1992年(平成4年)1月、シャリィ50は「Chaly」のロゴを変更。また、車体横に水玉模様のストライプを採用し、フレッシュでポップなイメージに仕上げている。エンジンや足回りに大きな変更はなし。
爽やかなウインナーブルーメタリック。翌1993年5月にはスタンドの形状を変更し、使い勝手を向上。
●1992年モデルのSPEC
全長:1665mm/全幅:645mm/全高:985mm/乾燥重量:72kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:4.0ps/7000rpm/最大トルク:0.44kgm/5500rpm/変速機:3速リターン/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:15万9000円 |
正式名称は「シャリィ」ではなく「シャリー」
1995年(平成7年)3月、明るく軽やかなイメージのパールミルキーホワイトと、落ち着いた品のあるキャンディメープルレッドの2色に変更。クランクケース、マフラープロテクター、ホイールなどをライトゴールドでまとめ、質感をアップしている。メーカー表記は「シャリー」に変更されているが、エンジンや足回りに大きな変更はない。
落ち着いたイメージのキャンディメープルレッド。
1997年(平成9年)3月にシャリー50はカラーリング変更。この機種がシャリィ(シャリー)の最終モデル。
●1995年モデルのSPEC
全長:1665mm/全幅:645mm/全高:985mm/乾燥重量:72kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:4.0ps/7000rpm/最大トルク:0.44kgm/5500rpm/変速機:3速リターン/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10/当時の発売価格:17万9000円 |
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