ノーマルのモンキー、ゴリラ、ダックス、シャリーには、シンプルなドラムブレーキが採用されている。ブレーキ周りがスッキリと仕上がるドラムブレーキの特徴を挙げてみよう。
低コストで軽量なドラム式
ドラムブレーキはホイールに固定された円筒(ドラム)の内側に、半月板状になった2個のブレーキシューを設置。
ホイールと一体になって回転するドラムに、この2個のブレーキシューを押し付けることによって回転を抑制するシステムだ。
制動力はディスク式ブレーキに及ばぬものの、軽く街を流す程度であれば十分な性能を発揮する。
ひとつ一つの部品が軽量で、しかも構成部品が少ないため、ディスク式ブレーキよりも軽量でコンパクト、しかも低コストで仕上がるのがポイント。
ドラムブレーキ、ココがネック
ただしドラムブレーキは円筒の内側で磨耗運動が行われるため、大気にさらされているディスク式よりも熱がこもりやすい。 また、円筒内の温度が上がると、磨耗部材であるブレーキシューの温度も上昇。そうなるとブレーキシューのミュー(摩擦係数・μ)が低下し、ブレーキが効きにくくなってしまう。
ドラム式ブレーキの長所
<1> ブレーキ周りが軽量に、しかもスッキリと仕上がる。
<2> レトロなイメージのフォルム。ビンテージ風にカスタムしたい時には最適。
<3> 低コストながら公道では十分な制動力を発揮する。
ドラム式ブレーキの短所
<1> ドラム内に熱がこもりやすく、ディスク式よりも制動力が不安定。
<2> 消耗部品であるブレーキシューの交換は、フロントホイールを取り外さなければいけないなど手間がかかる。
<3> 仮にドラム内に水が浸入してしまった場合、本来の性能に戻るまで一定の時間を要する。
シンプルなフロントブレーキ用レバー周り
ワイヤーケーブルによってブレーキシューの操作を行うドラムブレーキ。ディスクブレーキに比べ、操作側となる右側のレバー周りは非常にシンプル。ディスク式に装備されるマスターシリンダーがなく、スッキリとしたフォルムに仕上がるのが特徴。
ブレーキレバーとドラムブレーキ本体をつなぐのは、1本のワイヤーケーブル。ワイヤーケーブルはサビ防止のため、定期的にオイルを注入してやる必要あり。サビはワイヤーケーブル切断の原因となるので注意したい。
リヤブレーキペダルの動きを、ドラム式ブレーキ本体に伝えるブレーキロッド。ロングスイングアームに変更した場合は、付属のものに交換。多くのロングスイングアームキットには、スイングアームの延長量に応じたブレーキロッドが付属。付属なしの場合は、適合サイズのものを別途購入すること。
高性能型ブレーキシューも多数リリース
ブレーキドラムの中にセットされる、ドラムブレーキのブレーキシュー。半月板状になった2個のブレーキシューが、スプリングで接続されている。ブレーキレバーを握ると、2個のブレーキシューが左右に拡大。回転するドラム(一般的にハブと一体化)にブレーキシューが押し付けられる=ホイールの回転が抑制されるしくみ。制動力をアップさせた社外品もリリースされているので、ドラムブレーキ派は要チェック。なお、ブレーキシューは摩擦によって削られていく消耗部品。効きが甘くなる前に早めの交換を。
高級感溢れる、アルミ削り出しのモンキー用リヤハブ(ブレーキドラム/Gクラフト製)。素材には軽量かつ放熱性の高いアルミを採用している。ドレスアップ度も抜群。
ノーマルのドラムブレーキのまま、Fフォーク交換したい!
写真はGクラフト製ドラムサポートを使い、ドラム式ブレーキ+NSR50用フロントフォークを組み合わせたモンキー改。フロントフォークピッチが173mmの標準ステムの場合はハブの切削加工が必要だが、フロントフォークピッチが199mmのワイドステムの場合はボルトオン装着が可能。「ノーマルのドラム式ブレーキ&8インチのままフロントフォークを強化したい」というユーザーにピッタリのカスタム術。
昔のレーサーにはドラム式ブレーキが採用されていた!
写真は1962年に発表され、世界GP50ccクラスで大活躍したホンダの市販レーサー、CR110カブレーシング。「精密機械」と呼ばれたDOHC4バルブ単気筒50ccエンジンを搭載したこのマシンのブレーキは、レーサーながら前後ともドラム式。ディスク式ブレーキが一般的でなかった数十年前は、たとえレーサーでもブレーキはドラム式が当たり前。ドラム式ブレーキが“懐かしさ”を感じさせる理由は、こんなところにも隠されているのだろう。
ドラム式ブレーキを採用したCR110カブレーシングのフロントブレーキ周り。シンプルな外観とレトロな雰囲気が特徴的。
ドラムブレーキの中身
モンキーを例にドラムブレーキの中身をチェックしてみよう。片方の手でリヤタイヤを支えつつ、もう一方の手でアクスルボルトをゆっくりと引き抜く。次にスイングアーム側の凸部に合致したドラムブレーキ側のパネルの凹部を後方にズラす要領で分離すれば、モンキーのリアホイールは簡単に外れる。
“ブレーキドラム”と呼ばれるブレーキシューが押し付けられる箇所。ブレーキシューとの摩擦により、ホイールの回転力を抑えるしくみ。ブレーキドラム内はブレーキシューのカスと水が混じり合って泥状になり、酷く汚れていた。今回はブレーキクリーナー&ウエスを使って汚れを除去後、摩耗部に堆積していたブレーキシューのカスをペーパーで掃除。再度ブレーキクリーナー&ウエスで仕上げた。
ドラムブレーキパネルに固定されたブレーキシュー。ブレーキシューは半月板状になった2個が2本のスプリングで接続されている。ブレーキシューは摩擦部の摩耗・硬化・劣化により、徐々に効きが甘くなってくる消耗部品。
写真はノーマルだが、上記のように摩擦部の抵抗(μ)を上げて制動力アップを実現した社外品もあり。「ドラムブレーキの効きが甘いなあ…」と感じた人は、早めの交換をおすすめする。
【このページも要チェック】
【ディスクブレーキ関連ページ・その1】
【ディスクブレーキ関連ページ・その2】