ノーマル車のカタログはもちろん、多くのボアアップキットにも明記されている圧縮比。ところで「圧縮比」とは一体何だろう? また圧縮比の高いor低いで、エンジンの特性はどう違ってくるの?
エンジンの性格を決める圧縮比
エンジンの圧縮比は、用途、使用目的などに合わせて設定されている。
そもそも圧縮比とは、シリンダー容積(B)及び燃焼室容積(A)に占める燃焼室容積(A)の割合のこと。(A+B)÷Aで算出する。
圧縮比を上げるには、ピストンヘッドの盛り上がった高圧縮型ピストンに交換するのが一般的(燃焼室容積(A)を狭めるのが目的)。圧縮比を上げれば、計算上パワーは上昇する。
ただしエンジンの強度にも限界があるため、闇雲に上げても駄目。圧縮比の上げ過ぎは、エンジン破損の原因となる。
シリンダー容積(B)+燃焼室容積(A)は、ピストンがもっとも下降した状態の時に計測。 燃焼室容積(A)は、ピストンがもっとも上昇した状態で計測。
なぜ、高圧縮型エンジンはパワーが出やすい?
レースでの使用を想定した高性能エンジンは、一般的にパワーを出しやすい圧縮比を上げた高圧縮型に設計されている。
膨らました風船を押し潰した時を想像してみよう。風船の大きさが同じ場合、押し潰せば押し潰すほど破裂した時の力が大きくなる。これが高圧縮エンジンの基本的な考え。
高圧縮型エンジンは高圧縮で爆発を繰り返すため、燃焼室の温度が上昇。その結果、「ノッキング」という現象が起こりやすい。そのため、ハイオクガソリンの使用が前提となる。こちらの詳細は、下記のリンクを参照のこと。
→ 高性能エンジンとハイオクの関係
→ チューン車にハイオクが必要な訳
圧縮を上げる方法・その1
圧縮比を上げるための方法。そのひとつは、スキッシュエリアをパテ埋めし、燃焼室容積(上記イラストのA部分)を狭める手法。
ハイエンドユーザーの中には、溶接・切削により燃焼室の形状そのものを変更して圧縮比を上げる者もいる。 → “燃焼室”のある場所はココ
圧縮を上げる方法・その2
ピストンの頭部を凸化して、燃焼室容積(イラストのA部分)を狭める。社外用ピストンに交換するのが一般的。
旧式横型エンジン用の高圧縮型ピストン、6V2.6psモンキー用ピストン、モンキーR用ピストン等を加工して圧縮比を調整する純正パーツ派もいる。
すべて12Vモンキー用。写真左からヘッドの頭が凹んだノーマル(ボア径39φ)、ボア径48φのフラット型(ヘッドの頭が平らになったタイプ)、ボア径52φの高圧縮型(ヘッドの頭が盛り上がったタイプ)。
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