モンキーやエイプのシリンダーにはピストンリングとの摩擦部分であるスチール製のスリーブを省き、特殊メッキコーティングなどを施したタイプがある。そのメリットとはいったい何だろう?
過酷な環境の下にあるシリンダーのスリーブ部
ピストンリングとの摩擦により、常に過酷な状況下に置かれているシリンダーの内径部。アルミシリンダーブロックを採用した多くのモデルには、この部分にスチール製のスリーブが圧入されている。
しかし超高回転型のチューニングエンジンの場合、ネックになる問題がひとつ浮上。それは高出力エンジンが発生する“熱”だ。
→ シリンダー中で上下するピストン
→ シリンダーの中でのピストンの動き
スリーブのないシリンダーは
膨張率が均一で歪みが発生しにくいのが特徴
一般に高性能ヘッドを採用した高出力エンジンの場合、アルミシリンダーブロックに圧入されたスチール製スリーブが、熱膨張によって歪みを起こすことがある。また、この状態で長時間、しかも高回転でエンジンを回し続けるとスリーブとシリンダーに隙間が生じ、ベースガスケットを通してオイル漏れなどのトラブルを招いてしまう恐れがある。
それを防止するために生まれたのが、スチール製スリーブを採用せず、ピストンが上下する内側のライナー部に特殊メッキコーティングなどを施したタイプ。特殊メッキコーティングにはいくつかの種類があるが、多くは耐熱性や耐磨耗性に優れているのがポイント。この手法を取り入れたアルミ製シリンダーの多くは放熱性に優れ、熱による膨張率が均一となり、歪みなどが発生しにくいのが特徴。過酷な状況下でも安定した性能を発揮してくれる。
写真上はスチール製スリーブを圧入したアルミシリンダー。ストリート用モデルなどに採用されるスタンダードなタイプ。
写真上はスリーブが圧入されていないタイプ。高回転型の高性能シリンダーヘッドなどに付属されることの多いレーシーなタイプ。
内壁にスチール製スリーブを採用せず、特殊メッキやWPCなどコーティングを施したアルミシリンダーは各社からリリース中。写真は社外のボアアップKIT用メッキシリンダー。ライナー部に特殊硬質メッキを施した、アルミシリンダーブロックのみで構成された贅沢なモデルだ。高回転域を長時間使用する耐久レースなどでも安定した性能を発揮する。
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