リジッドサス仕様のビンテージモンキー(Z100とCZ100)や初代スーパーカブ(C100)などに採用されていたOHVエンジン。現在、ミニバイクの主流であるOHCエンジンとは、どこが違うのだろう。
OHVエンジンのしくみ
Z100やCZ100のエンジンは、初代スーパーカブのC100をベースにしたOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)エンジンを搭載。
現行モンキーに採用のOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)エンジンは、カムチェーンとカムシャフトを介してロッカーアームを動作させ、吸排気バルブを開閉させる方式。
一方、OHVエンジンは、プッシュロッドという長い棒を介してロッカーアームを動作させ、バルブを開閉させる方式となっている。
→ 吸排気バルブを動かす「カムシャフト」「ロッカーアーム」「カムチェーン」
モンキーのOHVエンジンは、OHCエンジンのようにカムシャフトを潤滑・冷却させる必要がない等の理由により、オイルポンプは設けられていない。
OHVエンジンの特徴
カムチェーンやカムシャフトの回転によってロッカーアームを動かすOHCは、OHVよりも高回転域でのバルブ開閉が安定しやすいのが特徴。現況、国内ではほとんどの小排気量モデルにOHCを採用。OHVはアメリカン等の中型車以上にのみ搭載される場合がほとんどだ。
Z100(白タンク・1961年登場)とCZ100(銀タンク・1963年登場)はスーパーカブベースのOHVエンジンを搭載。ただし1967年に国内発売されたZ50Mは、OHCエンジンとなっている。
1958年(昭和33年)に発売の初代スーパーカブ、C100にはOHVエンジンを搭載。1966年、スーパーカブのエンジンはOHVから現行型にも採用のOHCに移行した。
1960年(昭和35年)に発売されたスーパーカブC100のスポーツモデル、スポーツカブC110。同車のエンジンはC100と同じOHVだが、エンジン各部を変更してポテンシャルをアップしているのが特徴。
スポーツカブC110に搭載されたOHVエンジン
1960年に発売されたスーパーカブのスポーツモデル、スポーツカブC110。同車のOHVエンジンは、GPレーサーのRC141(※注1)で培ったデータを元に、スーパーカブ用をチューニングしたもの。
C100のシリンダーヘッドはスチール製だが、C110は軽量かつ冷却効果に優れた大型フィン装備のアルミ製。シリンダーにも冷却効果の高い、大きめのフィンが採用されている。
ピストンは高圧縮型のものに変更され、圧縮比は8.5から9.5まで引き上げ。最高出力も4.3ps/9500rpmから5.0ps/9500rpmにアップされている。
※注1:RC141とは空冷4スト2バルブ2気筒125ccエンジンを搭載したホンダのGPワークスマシン。マン島TTレースのライトウエイト125ccクラスに出場して大活躍した。
驚くほど長いマニホールドを採用した吸気系
スーパーカブC100にはショート型インテークマニホールドを備えたダウンドラフト式キャブレター(ケイヒンHOV13)を採用。
一方、スポーツカブC110は、極めて長いインマニのフレームマウント型サイドドラフト式キャブレター(ケイヒンPW16FA・写真)。
「チューニングエンジンは吸入効率を上げるため、キャブと燃焼室を近づける」という現在の常識とは間逆の吸気系システムが導入されている。
ちなみに当時のホンダ小排気量スポーツモデルには、このロングインマニが多数採用されていた。これはトルクを稼ぎ出すための手法だと言われる。ちなみに現在でも燃費重視の4ミニの耐久レースなどでは、この手法を用いる場合がある。
また、パーコレーション(ガソリンが気化して噴き出す現象)を防ぐため、ゴム製のインシュレーターを採用して断熱化しているのも見逃せないところ。
不思議なオイルラインにも注目
エンジンオイルを循環させるオイルライン(オイルの通路となる管)。C110用はシリンダーからキャブレターを経由して、シリンダーヘッドに向かっている。
これは当時のPW型キャブレター(PC型の前身モデル)が冷却風によってガソリンをアイシングしやすく、霧化の性能がかんばしくなかったことが主な原因だとされる。
オイルラインのキャブレター経由は、オイルの熱によってキャブレターを温める=霧化の性能を上げるのも目的のひとつだった。このシステムは、1964年発売のスポーモデル「ベンリイCS90」や1965年発売の「ベンリイCS50」にも継承されている。
アンダーボーンフレーム採用のスーパーカブのOHVエンジンには、取り回しの関係上なのか、ダウンドラフト式キャブレター(ケイヒンHOV13)が採用されていた。
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