ホンダ CBX400F(1981年)|空冷DOHC 4気筒マルチ・クラス最高峰の48馬力エンジン

ホンダ CBX400F

世界初のインボード・ベンチレーテッド・ディスクブレーキを採用したCBX400F

ホンダ CBX400F……1981年(昭和56年)発売

ホンダ CBX400F

ホンダ CBX400F(レッド×ホワイト)

ホンダ CBX400F

ホンダ CBX400F(レッド×ホワイト)

Honda Collection Hall 収蔵車両走行ビデオ CBX400F(1981年)※ホンダ公式チャンネルより

4気筒エンジンは400ccクラス最高峰の48馬力を発揮

ホンダCBX400F

世界初のインボード・ベンチレーテッド・ディスクブレーキを採用したホンダCBX400F。

ホンダCBX400Fはバイクブームが始まる少し前の1981年(昭和56年)11月に登場。すでにヤマハはXJ400D(45馬力)、スズキはGSX400F(45馬力)、カワサキはZ400FX(43馬力)の4気筒エンジン搭載モデルをリリース。

エンジンは新設計の空冷4ストロークDOHC 4バルブ4気筒399cc。世界で初めてのブレーキトルクセンサー型アンチダイブ機構 (TRAC)、インボード・ベンチレーテッド・ディスクブレーキなど、数々の新技術を採用。

スタイリングはタンク~サイドカバー~リヤカウルにかけて流れるようなフォルムが特徴。新採用のブーメラン型スポーツコムスターホイル、クロスした4into2(4-1-2の左右2本出し)のエキゾーストパイプと相まって、迫力あるスーパースポーツのイメージに仕上がっている。

ホンダCBX400F

ホンダCBX400F(レッド)

ホンダCBX400Fが生まれたきっかけと時代背景

ホンダは1977年(昭和52年)、空冷4ストOHC 2バルブ4気筒エンジン搭載のCB400FOURの生産を終了。以降、400ccクラスにはホークⅡやホークⅢなどの2気筒モデルが投入されたが、カワサキZ400FXや、ヤマハXJ400などの4気筒モデルに苦戦を強いられていた。

CBX400Fは、CB400FOUR以来の4気筒モデルとして、クラス最高の48馬力エンジン搭載するなど、満を持したデビューとなった。4気筒DOHCエンジン搭載モデルとしては最後発となったわけだが、足周りにも世界初の機構を多数盛り込むなど、当時のライバル車を遥かに凌ぐ一台に仕上げてリリースする……。この点は、完璧主義なホンダらしいモデルであるといえよう。

ホンダCBX400Fのライバル車たち

ヤマハXJ400D

ヤマハXJ400D

ヤマハXJ400D

ヤマハXJ400は「打倒・カワサキZ400FX」を目指し、1980年(昭和55年)に発売。新設計の空冷4ストローク4気筒DOHC 2バルブエンジンを搭載し、MAXパワーはZ400FXの43馬力を凌ぐ45馬力を発揮。写真は1981年(昭和56年)5月に発売された4本出しマフラー採用のXJ400D。

スズキGSX400F

スズキGSX400F

スズキGSX400F

スズキGSX400Fは1981年(昭和56年)4月に登場。ライバルのZ400FXやXJ400よりもワンランク上の走りを目指し、400cc4気筒モデル初となる1気筒あたり4バルブのエンジンを採用。最高出力は45馬力を発揮した。

カワサキZ400FX

カワサキ Z400FX

カワサキ Z400FX

カワサキZ400FXは1979年(昭和54年)に登場した、400マルチ(4気筒)人気の先駆けとなったモデル。エンジンは空冷4ストロークDOHC 2バルブ4気筒。43馬力エンジン、400ccとは思えない大柄でヘビーな車体、直線を基調にしたカワサキからではの硬派なデザインなどで大ヒットとなった。写真は1981年(昭和56年)10月に発売されたE4。

400cc4気筒モデルの先駆け、ホンダCB400FOURとは?

ホンダCB400FOUR

408ccのホンダ ドリームCB400FOUR。

ホンダ ドリームCB400FOURは、1974年(昭和49年)に発売された、400cc4気筒エンジン搭載の先駆け的モデル。芸術的ともいえるメッキの集合マフラーを装着したドリームCB400FOURは、別名「ヨンフォア」とも呼ばれ、伝説的なモデルとして現在では超お宝モデルとなっている。

エンジンは空冷4ストロークSOHC直列4気筒408cc(ドリームCB400FOUR)を搭載。 発売翌年の1975年(昭和50年)、運転免許制度が改正(125cc未満の小型限定免許、400cc未満の中型限定免許、オーバー400ccの限定解除免許の設定)。これにより、国内向けの398ccモデル(CB400FOUR-Ⅰ/CB400FOUR-Ⅱ)も発売された。

398ccモデルは、ボア径(51.0mm)はそのままに、ストロークを50.0mmから48.8mmに短縮化。エンジン回転数を上げてパワーを稼ぐ、高回転型のショートストローク型に設定され、最高出力は37ps/8,500rpmから36ps/8,500rpm、最大トルクは3.2kg-m/7,500rpmから3.1kg-m/7,500rpmにダウン。

398ccのCB400FOUR-Ⅰはセミフラットハンドル、CB400FOUR-Ⅱはアップハンドルをそれぞれ採用。なお、燃料タンクと同色だった左右サイドカバーを、CB400FOUR-Ⅰ/CB400FOUR-Ⅱはブラックに変更された。

ホンダCB400FOUR

408ccのホンダ ドリームCB400FOUR。

ホンダCB400FOUR

408ccのホンダ ドリームCB400FOUR。

ホンダCBX400F、新設計エンジンのポイント

ホンダCBX400F

新設計エンジンは、燃焼室のコンパクト化によって高圧縮化(圧縮比は9.8)を図り、燃焼効率を向上。また、動力伝達機構のフリクション低減などを行うとともに、新設計となる4キャブレター等の採用によって、低中速域から高速域までのフラットトルク特性を実現。

最大出力は発売当時、400ccクラス最高峰の48PS/11000rpmを発揮。これはリッター当り120馬力の換算となり、CBX400Fが秘める高いパフォーマンス性をアピール。また燃費性も良好で、40km/L(60km/h定地走行テスト値)を発揮した。

ドライブチェーンにはメンテナンス性に優れたロングライフタイプを採用。

最新のサスペンション機構を採用

ホンダCBX400F(ブルー×ホワイト)

フレームや前後の足周りには、ホンダがレースで蓄積してきた、先進の技術が随所に投入されている。

フレームは新設計の軽量型とし、エンジンを低重心位置にレイアウト。これにより足着き性の良さも実現(シート高は775mm)。

前後18インチのホイールは、コムスターホイールの極限を追求した、軽量ブーメラン型のスポーツコムスターホイールと軽量ワイドリムを採用。

ブレーキングシステムは、定評のあるデュアルピストンキャリパーの導入に合わせ、一段と効き味を向上させた特殊鋳鉄製ディスクプレートを採用。ドラムブレーキとディスクブレー キの長所を合わせ持つ、インボードタイプの「インボード・ベンチレーテッド・ディスクブレーキ」としている。

「インボード・ベンチレーテッド・ディスクブレーキ」は、ベンチレーション効果によってブレーキ ディスクを冷却し、安定したブレーキ性能を持続できるのがポイント。

また、ブレーキ時のブレーキトルク反力を利用して、フロントフォークの沈み込みを制御する「ブレーキトルクセンサー型アンチダイブ機構(TRAC/4段階調節が可能)」の採用により、滑らかな制動性を確保。

リヤサスペンションには、国内400ccロードモデルでは初の「プログレッシブ・リンケージ・サスペンション(プロリンク)」を採用。一般走行時はソフトに、コーナリング時など大きな負荷がかかった時などにはハードにクッション特性が変化するのがポイントだ。

量販車では世界初となる、剛性の高い軽量中空の「アルミキャストリヤフォーク」や、軽量な「ダブルクレードルフレーム」により、優れた操縦安定性を発揮。フロントとリヤに、エアサスペンションを採用されているのも特徴だ。

実用性も重視したCBX400Fの外装・灯火類

ホンダCBX400F(ブルー×ホワイト)

セパレートハンドルとブレーキチェンジペダルは、ジュラルミン鍛造。ステップは軽量なアルミキャストタイプを採用。

容量17Lのフューエルタンクはオートコック付きとし、利便性を向上。メーターパネルには透過光で光る指針を盛り込み、燃料計も装備。

リヤウインカーとテールランプを一体化したコンビネーションランプ、大型のハロゲンヘッドランプ(60/55W)なども採用済みだ。

CBX400Fは「スーパーストリート(SS400)」レースでも活躍

1980年代初頭、市販の400ccをベースとした改造無制限のレース「TTFⅢ」が盛り上がりを見せていた。これも影響し、TTFⅢよりも参戦費用が安くて済む「スーパーストリート=SS400」という市販車改造のプロダクションレースを新設。

このSS400では、CBX400Fが大人気。RSC(現在のHRC)からはCBX400F用のSS仕様パーツが発売されるなど、サーキットではCBX400Fが高い人気を誇った。

カウル付きモデル・ホンダCBX400Fインテグラ登場……1982年(昭和57年)

ホンダCBX400Fインテグラ

ホンダCBX400Fインテグラ

ホンダCBX400Fインテグラ

ホンダCBX400Fインテグラ

CBX400Fインテグラに装備のカウルは、ホンダのロードレース活動で得た空気力学を積極的に取り入れて設計されたもの。特にスクリーン部は、通常の乗車姿勢でも、直接的にライダーが風の影響を受けにくいよう上端を立て、走行中の風の流れをスムーズにライダー上方に流すアップ型を採用。

大型のカウルは、長距離ツーリングや高速走行時の風圧から生じるライダーの疲労の軽減も図ることができ、快適な走行を実現している。

カウル本体は耐衝撃性に優れたABS樹脂、スクリーンには高級素材のポリカーボネートを採用。スクリーンの周囲には、安全確保のためモールを装備。カウルとバックミラーの取り付け部には、ラバーマウントを採用して安定した後方視界を確保。

CBX400Fインテグラには、ハンドル切り角センサー、車速センサー、コンピューターなどによって構成される、右折&左折時の戻し忘れを防止する、日本初の「方向指示器キャンセル機構」も新採用。

当時の発売価格は54万9000円。

再販の声を受け、1984年(昭和59年)にCBX400Fは復活

ホンダCBX400F-2

ホンダCBX400F(2型/レッド×ホワイト)

ホンダCBX400F-2

ホンダCBX400F(2型/レッド×ブラック)

1983年(昭和58年)、400ccスポーツの座をCBR400Fに譲り、生産終了となったCBX400Fだが、「ぜひ再販を!」という声に応え、1984年(昭和59年)10月に復活。2型はボディとホイールのカラーリングが変更された。当時の発売価格は、1型のツートンカラーと同じ48万5000円。

扱いやすい特性でCBX400Fは教習車の定番に!ストリートでの人気は?

絶版後は時を置いて人気が上昇し、徐々に中古車価格が高騰。2020年現在、200万円を超える車両も珍しくないほどの超お宝モデルとなった。

1981年(昭和56年)にCBX400Fが登場した時は、その完璧さに誰もが「やっぱりホンダは最後の最後にやってくれた!」という感想を抱いた。

CBX400Fがリリース後、1982年(昭和57年)3月にカワサキZ400GP(48馬力)、1982年(昭和56年)6月にスズキGSX400Sインパルス(48馬力)が登場。3台の48馬力モデルが販売台数を競ったが、CBX400Fの人気は凄まじく、他社モデルはその牙城を崩せなかった。

思い起こせば、「インボードディスク」という、当時としては“謎の”ブレーキシステムも、これまでにない最新の機構というイメージが先行し、CBX400Fの人気に火を点けたと思う。実際、CBX400Fは400ccクラスにおいてダントツの人気を獲得。発売当時はストリートでも頻繁に見掛けた。

1983年(昭和58年)、一気に58馬力までパワーアップしたCBR400Fに400ccスポーツモデルの座を譲り、生産終了したCBX400F。しかしその完成度の高さゆえ、「ぜひ再販を!」という声う受けて1984年(昭和59年)9月に復活した。

1984年(昭和59年)といえば、2月にスズキGSX-R400(59馬力)、5月にヤマハFZ400R(59馬力)、8月にホンダCBR400Fエンデュランス3(58馬力)が登場。ちょうど、フルカウル付きのレーサーレプリカブームが始まった頃だ。

筆者的には当時、「なぜ、すでに役目を終えた48馬力のCBX400Fを、59馬力が当たり前の400cc市場に、再び投入するのか?」という疑念を抱いた。

CBX400Fが復活したのは、ちょうどバイクブームが始まった頃。全国の教習所では、中型免許取得を目指す若者たちで賑わった(当時、大型二輪免許=限定解除は、運転免許試験場での一発試験のみで、教習所では取得不可。その影響で、国内の400cc市場は極めて活性化していた)。

当時の教習所では、教習車としてホンダCBX400FK(教習専用車)を積極的に導入(スズキ車やカワサキ車は極少。ヤマハはXJ400が教習車の定番)。筆者は当時、中型免許を取得するにあたり、多くの合宿免許のパンフレットを取り寄せたが、多くは2型ベースのホンダCBX400FKにまたがる女性が笑顔で表紙を飾っていた。そのため、59馬力が全盛だった400ccクラスだったが、筆者的にはCBX400F=乗りやすいというイメージを抱いた。

とはいえ48馬力のCBX400Fは、当時の多くの若者にとって、すでに終わった存在だった。しかし空前のバイクブームに伴い、教習車として最適なCBX400FKの需要も急増。これらも影響し、CBX400Fはかつての人気モデルの復活版として、再び市販化に至ったのかもしれないと想像する(いわゆる大人の事情というやつ)。

筆者が中型二輪免許を取得した1986年(昭和61年)、CBX400Fの2型はまだ新車で発売されていたが、筆者的には購入対象として、99.9%眼中になかった。パワー至上主義だった当時は、高いお金を出して新車を買うならば、断然フルパワーの59馬力モデル。

当時48馬力のCBX400Fは、程度の良い中古の1型が30万円程度で販売されており(人気車だったため、タマ数も豊富だった)、あえて新車を買う理由が見当たらなかった(当時は誰もがそう思ったはず)。

ちなみに当時、筆者の知人の小柄な女子が、2型のCBX400Fを新車で購入。その理由は、教習車で乗りやすかったから。彼女はパワー重視のレーサーレプリカよりも、ポジションもラクで扱いやすいCBX400Fを選んだわけだ。

その頃、タマ数が非常に豊富で、極上の中古車が20~30万円程度で入手できたCBX400Fは、暴走族やヤンキーが好んで乗っていた(直管の社外集合マフラーに加え、BEET製リヤエアロフェンダーとサイドカバー装着が定番)。そんな理由もあり、筆者はCBX400Fを選ぶ理由が、まったく見当たらなかった。

知人の女子が乗っていたCBX400Fを借りて何度か乗ったが、当時の筆者の愛車だったホンダVFR400R(59馬力)に比べ、全般的にのんびりとした乗り味だった。前傾ハンドル&後退ステップのVFR400Rに比べ、ポジションも遥かにラクで、乗りやすい。

もちろん、高回転域では筆者が使い切れるレベルではないほどのポテンシャルを発揮してくれたのだが……何となく物足りなさを感じた。(このあたりは、ポジションの違いや、ブレーキング性能。また48馬力と59馬力のイメージの問題かも)。加えてCBX400Fのリアタイヤの細さも、何となく物足りなさを感じた。

1型のCBX400Fは爆発的にヒットしたが、復活した黒いホイールの2型は、59馬力マシンがひしめく中で、あまり話題にもならず、ひっそりと淘汰されていった。

2020年現在、稀少なCBX400Fの2型は、人気車だった1型以上にお宝度が高いモデルとなった。あの時、新車で購入し、大事に保管しておけばよかった……。筆者を含め、バイクに夢中だった昭和40年代生まれの男は、誰もがそう思っているに違いない。

ホンダ CBX400F 主要諸元(初期型)

型式 NC 07
全長 (m) 2.060
全幅 (m) 0.720
全高 (m) 1.080
軸距 (m) 1.380
最低地上高 (m) 0.140
シート高 (m) 775
車両重量 (kg) 189
乾燥重量 (kg) 173
重車定員 (人) 2
燃費 (km/L) 40(60km/h定地走行テスト値)
登坂能力 (tanθ) 0.46(約25度)
最小回転半径(m) 2.2
エンジン型式 NC07E・空冷4サイクルDOHC4バルブ4気筒
総排気量 (cm3) 399
内径×行程 (mm) 55.0×42.0
圧縮比 9.8
最高出力 (PS/rpm) 48/11,000
最大トルク (kg-m/rpm) 3.4/9,000
キャブレター型式 VE50A
始動方式 セルフ
点火方式 トランジスタ無接点式
潤滑方式 圧送飛沫併用式
潤滑油容量 (L) 3.0
燃料タンク容量(L) 17
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.769
2速 1.850
3速 1.478
4速 1.240
5速 1.074
6速 0.931
減速比1次 2.565(ギヤ)
減速比2次 3.000(チェーン)
キャスター (度) 26°00′
トレール (mm) 97
タイヤサイズ (前) 3.60 H18-4PR(チューブレス)
(後) 4.10 H18-4PR(チューブレス)
リムサイズ (前) MT2.15×18
(後) MT2.15×18
ブレーキ形式 (前) 油圧式ディスク(インボード・ベンチレーテッドディスク)
(後) 油圧式ディスク(インボード・ベンチレーテッドディスク)
懸架方式 (前) テレスコピック(円筒空気バネ併用)
(後) スイングアーム(プロリンク)
フレーム形式 ダブルクレドール
発売価格 ソリッドカラー仕様車 470,000円
ツートンカラー仕様車 485,000円

ホンダ CBX400F

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