ホンダ VT250F……1984年(昭和59年)2月発売 当時の価格:44万9000円
1982年(昭和57年)6月に登場したホンダVT250Fは、高性能、軽量、スリム、コンパクトなロードスポーツ車として開発されたモデル。エンジンは新開発の水冷4ストローク90度V型 DOHC(ダブル・オー バー・ヘッド・カムシャフト)8バルブ2気筒の248ccエンジンを搭載。
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ホンダ VT250F(1982年)|250cc世界初の水冷Vツインエンジン搭載
1984年(昭和59年)2月にモデルチェンジされたVT250Fは、吸排気効率の向上とフリクションロスの低減を徹底追求。吸気ポートにエアガイド・フィンを備えたハイ・イナーシャポート(高慣性吸気ポート)の採用などにより、低速から高速まで、全回転域で吸排気効率を向上。
また、コンロッドに特殊な熱処理を加えることにより、軽量で高い強度と剛性を両立。さらに往復運動部品の徹底した軽量化を計ることにより、フリクションロスの低減を実現。
これらにより、40PS/12,500rpmの高出力と、2.3kg-m/11,000rpmの最大トルクを実現させた。
※前モデルの諸元値
最高出力 (PS/rpm) | 35/11,000 | |
最大トルク (kg-m/rpm) | 2.2/10,000 |
車体設計はコンピューター解析により、軽量・高剛性を追求した、角型断面のダブルクレードルフレームを採用。また、新設計の軽量・ブーメラン型アルミスポーツコムスターホイール(フロント16イ ンチ・リア17インチ)、新デザインのインボード・ベンチレーテッドディスクブレーキを導入。
また、乗り心地と路面追従性をより向上させた、新設計のプロリンク式リヤサスペンションを採用。高性能スポーツバイクにふさわしい、充実した装備がポイントだ。
新型VT250Fのポイント
・タンクと一体デザインのボディマウントフェアリング採用
・コンパクトで高吸入効率を得るバイスターター式スラント型二連VDキャブレター採用
・最適な点火タイミングをきめ細かくコントロールするコンピューター内蔵のデジタル式フルトランジスタ・イグニッションシステム採用
・油圧クラッチシステム採用
・クロスレシオ6速ミッションと遊星ギア式チェンジ機構採用
・ジュラルミン鍛造セパレートハンドル採用
・大容量14Lの大型フューエルタンク採用
・大光量60W/55Wの角型ハロゲンヘッドライト採用
レーサーレプリカブームの火付け役、スズキRG250Γの存在
1983年(昭和58年)3月、ハーフカウルを装備したレーサーレプリカモデル「スズキRG250Γ」が登場。スズキRG250Γは、軽量かつ高剛性でしなやかなアルミフレーム(市販車初採用)に、水冷2ストローク並列2気筒247ccエンジンを搭載。アンチノーズダイブ機構、ワークスレーサー「RGB500」ばりの3,000回転から動き出すタコメーター、アルミ鍛造のステップなどを装備した。
当時、スズキRG250Γは、1ヶ月前の1983年(昭和58年)2月に発売されたヤマハRZ250Rの43馬力を凌ぐ、250ccクラス最強の45馬力を発揮した。
バイクブーム真っ只中の1984年(昭和59年)2月にモデルチェンジされたVT250F。時代は「パワーのあるバイクが一番」という、馬力至上主義にあった。
スズキRG250Γの対抗馬は、2ストのNS250R。VT250Fは、あくまでも「乗りやすさ」を重視
そのような時代の中で、VT250Fは、あえて40馬力に設定。ホンダは「250cc最強の45馬力」の役割を、1984年(昭和59年)5月に発売された、水冷2ストロークV型2気筒249ccエンジン搭載の「NS250R」に与えた。
VT250Fの最大のポイントは、高回転域でパワーを稼ぐ(逆に低回転域はスカスカ)、ピーキーな45馬力の2スト勢にはない、4ストならではの圧倒的な扱いやすさ。過激な2ストマシンがひしめく中、VT250Fは低回転域から高回転域まで、全域に渡りスムーズで乗りやすく、「まるで電気モーター車に乗っているようだ」と、誰からも誉められた(2ストのような過激で荒々しい部分が皆無だったともいえる)。VT250Fに搭載された空冷4ストロークV型DOHC2気筒248ccエンジンの完成度は、驚異的に高かったともいえよう。
当時流行のフロント16インチホイール、CBX400Fにも採用された最先端のインボードディスクブレーキ、ハーフカウルを装備したスポーティーで個性的なフォルム、V型2気筒のスリムで扱いやすいボディなど、2代目VT250Fの完成度はパーフェクトに近く、年代性別を問わず、幅広い層に支持された。
公道においてVT250Fは、パワーもトルクも申し分なく、2速か3速にでもシフトしていれば、まるでオートマチック車のように走行してくれた。そのため、中型免許を取得したばかりのビギナーや女性ライダーを中心に、VT250Fは爆発的なヒットとなった。
空前のバイクブームの中で生まれた2代目VT250Fは、「究極の万人向けモデル」を目指し、それを見事に実現した希有な名車。筆者的には、老若男女を問わずに人気の高い、コンビニの“ツナマヨネーズのオニギリ”のような存在だったと感じる。
ホンダ VT250F(1984年モデル) 主要諸元
型式 | MC08 |
全長(m) | 2.015 |
全幅(m) | 0.730 |
全高(m) | 1.155 |
軸距(m) | 1.385 |
最低地上高(m) | 0.140 |
シート高(m) | 0.765 |
車両重量(kg) | 167 |
乾燥重量(kg) | 152 |
乗車定員(人) | 2 |
燃費(km/L) | 45.0(50km/h定地走行テスト値) |
登坂能力(tanθ) | 0.46(約25度) |
最小回転半径(m) | 2.7 |
エンジン型式 | MC08E・水冷4サイクルV型2気筒DOHC4バルブ |
総排気量(cm3) | 248 |
内径×行程(mm) | 60.0×44.0 |
圧縮比 | 11.0 |
最高出力(PS/rpm) | 40/12,500 |
最大トルク(kg-m/rpm) | 2.3/11,000 |
キャブレター型式 | VD6 |
始動方式 | セルフ |
点火方式 | フルトランジスタ |
潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 |
潤滑油容量(L) | 2.5 |
燃料タンク容量(L) | 14 |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン |
変速比 | 1速2.562/2速1.850/3速1.478/ 4速1.240/5速1.074/6速0.965 |
減速比 | 2.821 |
キャスター(度) | 26°20′ |
トレール(mm) | 97 |
タイヤサイズ | (前)100/90-16 54S(後)110/90-17 60S |
ブレーキ方式 | (前)油圧式ディスク(インボードベンチレーテッドディスク) (後)機械式リーディングトレーリング |
懸架方式 | (前)テレスコピック(円筒空気バネ併用) (後)スイングアーム(プロリンク) |
フレーム方式 | ダブルクレードル |
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