ヤマハ XJ400Dは4本マフラーのデラックス版。YICSで燃費効率も23%向上

ヤマハXJ400D

ヤマハ XJ400D……1981年(昭和56年)5月発売 当時の価格:45万2000円

ヤマハXJ400D

バックミラーはステーやジョイント部を変更し、ミラー本体を樹脂の丸型からメッキの角型に変更。また、エンジンは重厚なブラックカラーにアレンジ。写真は初期型のクリスタルシルバー。

ヤマハXJ400は、400ccで唯一4気筒エンジンを搭載したカワサキZ400FX(43馬力)、400ccクラス最高の44馬力を誇るスズキGSX400Eの対抗馬として、1980年(昭和55年)6月、センセーショナルなデビューを飾った。

45ps/10,000rpmという、クラス最高のパフォーマンス誇ったXJ400の発売からおよそ1年後、4本マフラー仕様の「XJ400D」がラインナップ。XJ400Dの「D」は、デラックスを意味する。

エンジンはXJ400用(初期型)をベースにした、燃費を23%向上(運輸省届出値)させる「YICS」を採用(注:XJ400は1981年4月のマイナーチェンジでYICSを導入)。

フロントはセミ・エアサスペンション採用のフロントフォーク、リヤは4段アジャスタブルダンパー採用のサスペンションが新たに導入されるなど、贅沢な装備が盛り込まれている。

価格はXJ400が43万2000円(1981年モデル)、ゴージャスなXJ400Dが2万円高の45万2000円。

メガホンタイプの4本マフラーが「4気筒であること」を主張

ヤマハXJ400D

ヘビーなイメージのリヤフォルム。写真は初期型のニューヤマハブラック。外装パーツには明るいイメージのストライプもデザインされている。

デラックス版のXJ400Dは、多様化する400ccユーザーの要求に応えるべく、装備の充実感だけでなく、外観も750cc並に豪華でハイグレードな仕様にアレンジし、「XJ400シリーズ」の中の1台として追加設定されたモデルだ。

クラス唯一の4-2-2-4という、こだわりの4本出しマフラーを装備したXJ400Dは、4into2タイプマフラーを採用したXJ400に比べ、750cc並の精悍さ・重量感・存在感を引き上げ。4気筒エンジンであることを遺憾なく主張している。

XJ400Dは、インテークマニホールド部に副吸気通路を設け、4気筒分を連結管でつないだYICS(※注1)の採用で、燃費効率を23%向上を実現(※注2)。構造上、最高回転時やスロットル全開時には、YICSの効果は期待できないが、中低速域でのトルクの盛り上がりは明らかに異なり、各ギヤの守備範囲は大幅に広がっている。

(※注2)
XJ400D……60km/h低地走行テストで52km/L。メーカーカタログ値。
XJ400………60km/h低地走行テストで42km/L。メーカーカタログ値。

エアスプリング圧を併用したフロントフォーク、4段調整可能なアジャスタブルダンパーのリヤサスペンションなど、750ccクラス並の豪華な足周りにより、走りに鋭さを加えたXJ400D。特に低中速時のシャープさは、XJ400よりも明確に向上。4本出しマフラーが奏でるエキゾーストノートは、2本出しマフラーよりも、やや金属音を高めたような、弾けるイメージに味付けされている。

176kgのXJ400に比べ、4本マフラーを装備したXJ400Dの重量は、4kg増の180kg。軽量でスポーツ性を重視したXJ400よりも、750ccのような重量感と存在感を重視しているのがポイント(※注3)。

初期型のカラーはクリスタルシルバーとニューヤマハブラックの2色。

(※注3)
暴走族が社会問題化し、1975年(昭和50年)に運転免許制度が改正。1981年当時、国内仕様の最大排気量である750cc(ナナハンと呼ばれた)を乗車できる二輪の限定解除運転免許(今の大型二輪免許)は、今とは異なり、自動車教習所での取得が不可で、運転免許試験場での1発試験のみだった。その合格率はわずか数パーセントで、「限定解除は落とすための試験」と皮肉られ、司法試験(弁護士試験)よりも合格は困難だと揶揄された。この制度は、国ぐるみでビッグバイクに乗ることを阻止した、バイク史に残る悪法として知られる。これらも影響し、当時は400ccで750cc並の存在感を備えたXJ400Dなどのモデルが、ナナハンに憧れるユーザーの間で人気を呼んだ。

(※注1)YICSとは?

YICSとは「ヤマハ・インダクション・コントロール・システム」の略で、ヤマハが独自に開発した4ストロークエンジンの省エネ・低燃費システム。

1:従来の吸気通路の他に、副吸気通路(つまり吸気バイパス)を設け、
2:ひとつの気筒が吸気工程にある時、他の気筒の服吸気通路との間に生まれる圧力差を利用して、混合器をジェット化し、
3:主吸気通路からの混合器と合わせて、スワール(渦巻き)現状を発生させて、燃費効率を向上させるシステム。

従来のエンジンシステムを変えることなく、しかも一切のメンテナンスを必要としない画期的なものとして、世界的に注目を浴びた。

YICSは、市販車導入前から日本経済新聞等でも取り上げられて話題となっており、市販時導入後はヤマハの株価が上昇した。

XJ400シリーズ

ヤマハ空冷4気筒エンジン搭載のXJ400シリーズ。

XJ400発売以降、ゴージャスな4本出しマフラーのXJ400D、アメリカンタイプのXJ400スペシャルが追加ラインナップされた。

XJ400Dの乗り味は?

ヤマハXJ400D

写真は初期型のクリスタルシルバー。XJ400Dのヘッドライトは、明るい60W/55Wのハロゲンを採用。

発進時から、初代XJ400のようなもたつき感がなく、よどみなく加速を開始。コーナーからの立ち上がりも、スムーズに回転がツイてくるから、体感的な速さが感じられる。

エンジンの性能曲線図を読む限りでは、3000回転から5000回転までのトルクは、XJ400の方が太い。しかし実際に乗ってみると、Dタイプの方が太く感じる。これは4本出しマフラーの弾けるようなサウンドに惑わされているためか? もしくは軽快なスロットルグリップによるものなのか? 体感的には、トルクカーブの変動は少なく、5000回転以上のつながりが実にスムーズ。

全体的にはフラットなトルク特性で、1万回転を超えてもトルクの急激な落ち込みがない。そのため、2ストのRZ250やRZ350ほどタコメーターに気を使わなくても、コースに集中した走りが楽しめる。

サーキットにおいて、6速でスロットルを全開にした時も同じで、1万回転を超えてしまう。なお、180km/hフルスケールのスピードメーターの針は、178km/hでピタリと停止。

サスペンションのセッティングは、基本的にXJ400と変わりなく、Dタイプのスプリングセット荷重も柔らかめだが、フルボトム感は少ない。ロングツーリング等でも、極めて疲れが少ない乗り心地だ。

一方、サーキット走行のようなハードランでは、ポテンシャルの高いフロントのセミ・エアサスペンションとリヤのダンパー調整機能が本領を発揮してくれる。

動力性能は、0-400m加速が13.9秒、最高速度が178km/h(ともに社内データ)という、クラストップランクの数値を記録。タコメーターのレッドゾーンは10,500rpmから。

なお、初期型のXJ400の動力性能は、0-400m加速が14.2秒、最高速度が174~175km/h(ともに社内データ)を記録。タコメーターのレッドゾーンは同じく10,500rpmから。

ヤマハXJ400D

写真は1982年モデルのニューカラー。

ヤマハXJ400D

写真は1982年モデルのニューカラー。

ヤマハXJ400D(初期型) 主要スペック

車名 XJ400D
型式 4GD
発売年 1981
発売月 5
全長 (mm) 2060
全幅 (mm) 760
全高 (mm) 1130
ホイールベース (mm) 1405
最低地上高(mm) 155
シート高 (mm) 785
乾燥重量 (kg) 180
車両重量 (kg) 197
最小回転半径(m) 2.3
乗車定員(名) 2
燃料消費率(1)(km/L) 52.0
測定基準(1) 60km/h走行時
原動機型式 4GO
原動機種類 4ストローク
気筒数 4
シリンダ配列 並列(直列)
冷却方式 空冷
排気量 (cc) 398
カム・バルブ駆動方式 DOHC
気筒あたりバルブ数 2
内径(シリンダーボア)(mm) 51
行程(ピストンストローク)(mm) 48.8
圧縮比(:1) 9.5
最高出力(PS) 45
最高出力回転数(rpm) 10000
最大トルク(kgf・m) 3.5
最大トルク回転数(rpm) 8000
燃料供給方式 キャブレター
燃料供給装置形式 BS28
燃料タンク容量 (L) 16
燃料(種類) レギュラーガソリン
満タン時航続距離(概算・参考値) 832.0
エンジン始動方式 セルフスターター式
点火装置 フルトランジスタ式
点火プラグ標準搭載・型式 D8EA
点火プラグ必要本数・合計 4
搭載バッテリー・型式 YB12A-A
バッテリー容量 12V-12Ah
エンジン潤滑方式 ウェットサンプ式
エンジンオイル容量※全容量 (L) 2.9
推奨エンジンオイル(SAE粘度) 10W-40
クラッチ形式 湿式・多板
変速機形式 リターン式・6段変速
変速機・操作方式 フットシフト
1次減速比 2.849
2次減速比 2.875
変速比 1速 2.733/2速 1.947/3速 1.544/4速 1.240/5速 1.034/6速 0.899
動力伝達方式 チェーン
フレーム型式 ダブルクレードル
キャスター角 27°00′
トレール量 (mm) 109
ブレーキ形式(前) 油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式(後) 機械式リーディングトレーリング
懸架方式(前) テレスコピックフォーク
フロントホイールトラベル(mm) 150
懸架方式(後) スイングアーム式
リアホイールトラベル(mm) 100
タイヤ(前) 3.00-19
タイヤ(前)構造名 バイアス
タイヤ(前)プライレーティング 4PR
タイヤ(後) 110/90-18
タイヤ(後)構造名 バイアス
タイヤ(後)荷重指数 61
タイヤ(後)速度記号 S
ホイールリム形状(前) MT
ホイールリム幅(前) 1.85
ホイールリム形状(後) MT
ホイールリム幅(後) 2.15
ヘッドライト定格(Hi) 65W/55W
テールライト定格(制動/尾灯) 27W/8W

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