長い歴史を誇る、モンキーの横型エンジンとエイプの縦型エンジン。ノーマルの場合、横型は燃費や扱いやすさを重視、縦型はCBの血統を受け継いだスポーツ志向という位置付け。
では仮に両方のエンジンを、原付2種枠ギリギリの125ccまで一気にボア&ストロークアップしたとしよう。果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。パーツメーカーのキタコに聞いてみた。
125ccフルチューンの場合、横型はトルク型、縦型は高回転
— キタコ製エンジンキットを使い、横型と縦型の排気量を125ccまで引き上げたとします。両者の走行フィールに違いは出ますか?
キタコ(以下、キ): 出力特性の違いは、バイク暦やレース経験の豊富なライダーであれば、比較的明確に体感できると思います。キタコ製125ccキットを組み込んだ場合、横型はボア54mm×ストローク54mmのスクエアストローク型に、縦型は57mm×ストローク48.96mmのショートストローク型になる。
横型は底から押し上げられるようなトルク型のエンジン、縦型は高回転まで気持ちよく回せる高回転型のエンジンに仕上がります。キタコ製OHCエンジンキットのMAXパワーは、横型・縦型ともに18psを出力。DOHCエンジンキットは、横型・縦型ともに20psを搾り出す。特性は異なりますが、どちらも互角に戦えるんじゃないかと思います。
— 125ccの場合、低中回転域でのトルクを重視したい人は横型、高回転まで元気よく回したい人は縦型を選べばいいわけですか?
キ: 125ccの場合はね。ただし、横型であっても、ボア54mm×ストロークをノーマル同寸の41.4mmとすれば、排気量は95ccにダウンしますが、上までスムーズに回せるショートストローク型の高回転エンジンになります。
また、軽量アウターローターや軽量クランクに交換すれば、レスポンスも飛躍的に向上。ショートストロークエンジンの醍醐味が、思う存分堪能できますよ。
前部のエンジンマウントによって剛性も確保できる縦型エンジン
— NSF100が登場する前は、NSR50用フレームに縦型エンジンを搭載した耐久レーサーが多数いました。彼らはなぜ、横型エンジンを搭載しなかったのでしょう。
キ: NSR用フレーム&足周りに横型エンジンを搭載した場合、フルブレーキング時に、フロントタイヤとシリンダーヘッドが接触する恐れがある。特に社外製ボアアップキット装着車は、シリンダーヘッドの設計上、エンジンの全長が伸びる場合が多い。
しかし縦型エンジンは、多少シリンダーヘッド頂点までの長さが伸びても、タイヤへの接触の心配がない。また、見た目だけでなく、フレームとの相性、つまり重量バランスが良い。加えて縦型エンジンは、腰下前部とフレームがマウントによってつながっているから、エンジン自体が頑丈なフレームの役割を果たします。
— NSF100が横型ではなく、縦型エンジンを搭載している理由は、そのあたりにもあったんでしょうね。
キ: ロードコースを高速で走り抜ける耐久レースでは、フレームと足周りの高い剛性力が要求される。結果として、NSR用フレーム+縦型エンジンが主流になったのだと思います。
ドラッグマシンに横型エンジン搭載車が多い理由は、なぜ?
– 短距離を競うドラッグレースは、縦型エンジンよりも横型エンジンを採用した車両が多いです。その理由は何でしょう。
キ: 考えられるのは、縦型よりもエンジン自体の重量が軽いこと。また、エンジンの構造上、マシンの重心を低く抑えることができる。
加えて、ベースマシンとなるモンキーがコンパクトなため、フレームに付随する足周りや外装類の軽量化が可能なこと。モンキーのノーマル4速ミッションのレシオが、短距離を走るのに向いているのも理由なのではないでしょうか。
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