ホンダ(HONDA) スーパーカブ/リトルカブ

1958年(昭和33年)8月に登場以来、日本はもちろん世界各国で愛され続けてきたカブ。その変遷を足早に振り返ってみよう。(写真はスーパーカブ初の90ccモデル・CM90)

■取材協力:ホンダコレクションホール

レトロな外観の初期型

レッグシールドを採用した愛らしいフォルム、モンキー用エンジンのベースとなった横型エンジン、クラッチ操作を省いた自動遠心式クラッチ、17インチのスポークホイールなどを備えたカブ。エンジンや足周りの基本設計は、誕生以来変わることなくほぼ同じ。

ただし時代の変遷とともに、ハンドル回り、ライト回り、レッグシールド、リヤの荷台等々、細部のデザインは微妙に変更されている。その中でも初期型は「カブの中のカブ」と呼ばれ、フリークの間では特にリスペクトされており人気が高い。写真は1958年8月に登場したスーパーカブの1号機、C100。

初期型カブのOHVエンジン

C100はOHV(オーバーヘッドバルブ)49ccエンジンを搭載。OHVはプッシュロッドという長い棒を介してロッカーアームを動作させ、バルブを開閉させるのが特徴。現行型のOHCエンジンに比べ、高回転域でのバルブ開閉が安定しにくいという特徴を持っているが、正統派カブフリークにはいまだ根強い人気。

ちなみにこのOHVエンジン。現行のOHCエンジン同様、エンジン自体が非常に頑丈なため、きちんとメンテナンスを行えば年式は古くてもまだまだ元気に動いてくれる。

→ 初代モンキーや初代カブに採用のOHVエンジン

舗装路よりも未舗装が多かった昭和30年代ならではのアイテム、エンジンガードが標準装備。

●スーパーカブC100の諸元(1958年モデル)

エンジン形式:空冷4スト単気筒OHV49cc/ボア×ストローク:40mm×39mm/最高出力:4.3ps/9500rpm/最大トルク:0.33kgm/8000rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ3段リターン/最高速度:70km/h/タイヤ:前後2.25-17/重量:55kg/価格:5万5000円(発売当時)※1960年の公務員初任給:約1万800円

セルモーター付モデル、54ccモデルも登場

1960年(昭和35年)4月、女性でも簡単にエンジン始動できるセルモーター付のC102がリリース(6万2000円)。当初はキックペダルのないセル専用モデル(初期型)だったが、バッテリーなど電気系統の不具合が相次ぎ、セル&キック併用となる(写真・後期型)。

1961年(昭和36年)に道路交通法が改正となり、50cc未満は二人乗り禁止&30km/h走行が義務付け。これに伴いC100のボア径を2mm拡大した54ccのC105とセル付のCD105がデビュー。なお、当時からすでに49ccのC100に、C105用シリンダー&ピストンを流用して54ccにボアアップ。また、シリンダーを42mmまでボーリングして、スポーツカブC115(54cc)用の42mmハイコンプピストンが流用されていたという。

→ 49ccのカブに54cc用パーツを流用

スーパーカブ初の90ccバージョン

1964年(昭和39年)10月、排気量87cc、出力6.5psのOHVエンジンを搭載したCM90(7万5000円)が登場。エンジンはスポーツモデルのC200がベース。パワーアップに伴い、フレームや足回りは強化されている。

クラッチやシフトペダルはカブならではの自動遠心式&シーソー式を採用。

90cc化に伴い、フレームや足回りは強化されているものの、外観はC100とほぼ同じ。

レトロ感溢れる、CM90のセミアップ型ハンドル。

座り心地も重視したCM90の肉厚シート。

エンジンをOHVからOHCに変更

C105の後継モデル、C65(6万3000円)は、スーパーカブで初めてOHCエンジンを搭載したモデル。同車のエンジンを49cc化して1966年(昭和41年)5月に発売されたのが、写真のC50。OHC化により、静粛性、出力特性、燃費のアップを実現した。パワーは4.3psから4.8psにアップ。大型化されたヘッドライト回りやフラットなハンドル回りの形状は、現行モデルに近いもの。1967年7月、カブは生産台数500万台を達成。「世界のカブ」の基礎を築いた。

→ 初代モンキーや初代カブに採用のOHVエンジン

原付一種ながらスピードメーターは100km/hまで表示。

ヘッドライト同様、テールランプとウインカーを大型化して視認性を向上。

●スーパーカブC50の諸元(1966年モデル)

エンジン形式:空冷4スト単気筒OHC49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最高出力:4.8ps/1000rpm/最大トルク:0.37kgm/8500rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ3段リターン/最高速度:75km/h/タイヤ:前後2.25-17/重量:69kg/価格:5万7000円(発売当時)※1965年の公務員初任給:約2万1600円

ヘッドライト下のカバー部に「行灯(あんどん)」を装備

1971年(昭和46年)1月、フレーム構造の見直し、燃料タンクをシート下にレイアウト、フェンダーやレッグシールドの形状を細身にするなどしたスーパーカブデラックスC50が登場。

当時としてはゴージャスだったメタリック塗装も初めて採用された。エンジンの仕様に大きな変更はない。当時の発売価格は6万8000円(※1970年の公務員初任給:約3万6100円)。

やや引き締まったイメージのフロント回り。ヘッドライト下のカバー部に「行灯(あんどん)」と呼ばれるスモールランプを装備。

スピードメーターは80km/hまで表示。

肉抜き処理されたカスタムパーツのようなクラッチカバー。

時代を感じさせる花柄模様のシート。

ポイント式点火からCDI点火に変更

1981年(昭和56年)、点火方式がポイント式からCDI式に、またカムチェーンテンショナーは自動油圧式に変更され、メンテナンス性が大幅に向上。4.2psにダウンされていたC50のエンジンは4.5psにアップされるとともに、リッター105kmを達成する(写真のモデル)。

1983年(昭和58年)、吸排気ポート、吸排気バルブ、ピストン、イグニッションコイルを変更。C50のパワーは5.0psまで引き上げられるが、同年、低中速を重視してトルクを0.51kgmから0.52kgmにアップ、逆に最高出力は4.5psにダウンされた。

→ 6Vエンジンのポイント調整

→ 電装系チューンの定番パーツ、CDI

→ カムチェーンテンショナーのしくみと調整方法

12VのMFバッテリーを新採用

1986年(昭和61年)、安定した電力を供給し、メンテナンス性に優れた12VのMF(メンテナンスフリー)バッテリーを採用。またキー付タンクも新たに導入(写真のモデル)。エンジンの仕様に大きな変更はない。1996年(平成8年)にはパンクを防止するタフアップチューブを新たに採用。こちらもエンジンの仕様に大きな変更はない。

前後14インチのリトルカブ登場

1997年(平成9年)、前後のホイールを17インチから14インチに小径化し、シート高をスーパーカブの735mmから705mmに変更して足着き性を向上したリトルカブが登場。

デザインはスーパーカブの基本スタイルを踏襲しながら、ハンドル周り、レッグシールド、フロントフェンダー、シート、リアキャリアなどの形状を変更。コンパクトで親しみやすいスタイルに仕上げている。エンジンはスーパーカブと共通の4.5ps仕様。

カラフルなレッドカラーもラインナップ。当時の発売価格は15万9000円。

マフラーガードを新採用

1998年(平成10年)、スーパーカブシリーズの全車種にマフラーガードを採用(写真は同年のC50)。同年、セル付のリトルカブが初登場。1999年(平成11年)、新排ガス規制に伴い、C50にエンジンにブローバイガス還元装置を設置。パワーは4.0ps、トルクは0.48kgmにダウンされる。2002年(平成14年)、盗難防止アラーム用配線を新たに装備。

新設計のFIエンジンを搭載

2007年(平成19年)、C50は新排ガス規制に適合するためにフルモデルチェンジ。吸気システムはキャブレターからフューエルインジェクション(電子制御燃料噴射式/PGM-FI)に変更され、マフラーには新たに触媒が装着された。

また、エンジンは低フリクション型のローラーロッカーアームやオフセットクランクを採用した新設計、点火方式はフルトランジスタ式に変更。パワーは3.4ps/7000rpm、トルクは0.39kgm/5000rpmに設定された。50スタンダードの発売時の価格は20万4750円。

→ 新設計のFIエンジン

2007年(平成19年)、スーパーカブ50とともに前後14インチのリトルカブもインジェクション化。発売時の価格は21万円。

エンジン・フレームとも新設計のカブ110

2008年(平成20年)、ローラーロッカーアームやオフセットシリンダーなど新設計の空冷4ストOHC109ccエンジンを搭載したスーパーカブ110が登場。フューエルインジェクションの導入などで、燃費はスーパーカブ90を上回る63.5km/L(60km/h定地走行テスト値)を達成。

クラッチは発進と変速にそれぞれ独立したクラッチ機構を備えた2段クラッチシステムを採用し、変速時のショックを軽減。ミッションは4速ミッションとし、巡航時の快適性の向上。また新設計のバックボーンタイプのパイプフレームや正立フロントフォークを採用することで、剛性の向上に寄与するとともに軽快な走りを実現している。

●スーパーカブ110の諸元

全長:1830mm 全幅:710mm 全高:1040m/エンジン形式:空冷4スト単気筒OHC109cc/ボア×ストローク:50.0mm×55.6 mm/最高出力:8.2ps/7500rpm/最大トルク:0.86kgm/5500rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ4段リターン/タイヤ:前後2.25-17/重量:93kg/価格:23万8000円(税抜/発売当時)

すべてを一新し、価格も大幅に引き下げ

2012年(平成24年)、スーパーカブ110がフルモデルチェンジ。前モデルがベースのエンジンは、0.2psパワーダウンながらトルクをアップさせて低中速域での乗りやすさを向上。剛性に優れたバックボーンタイプのパイプフレームは、前モデルを踏襲しつつフレーム剛性の見直しやホイールベースを20mm延長して荷物積載時の安定性をアップ。

デザインはスーパーカブの伝統的でオリジナリティーのあるスタイリングをベースに、 “丸みのある四角”をテーマとしたものに変更。生産は中国の新大洲本田摩托有限公司で行い、調達から生産まで効率化を図ることで、従来モデルよりも2万円のプライスダウンを実現している。

●スーパーカブ110の諸元

全長:1915mm 全幅:700mm 全高:1050mm/エンジン形式:空冷4スト単気筒OHC109cc/ボア×ストローク:50.0mm×55.6 mm/最高出力:8.0ps/7500rpm/最大トルク:0.87kgm/5500rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ4段リターン/タイヤ:前後2.25-17/重量:98kg/価格:21万8000円(税抜/発売当時)

スーパーカブ110のフレーム&デザインを採用

2012年(平成24年)、スーパーカブ50は「ニューベーシックカブ」をコンセプトにフルモデルチェンジ。ローラーロッカーアームやオフセットシリンダーなどを採用した新設計の空冷4ストOHC49ccエンジン、発進と変速でそれぞれ独立したクラッチ機構を備えた2段クラッチシステム、4速ミッションなどを装備。

フレームはスーパーカブ110に採用の角断面パイプのバックボーンフレーム。生産は110と同じく、中国の新大洲本田摩托有限公司で行い、調達から生産まで効率化を図ることで、従来モデルよりも価格を約5万円抑制している。

●スーパーカブ50の諸元

全長:1915mm 全幅:700mm 全高:1050mm/エンジン形式:空冷4スト単気筒OHC49cc/ボア×ストローク:37.8mm×44.0mm/最高出力:3.7ps/7500rpm/最大トルク:0.39kgm/5500rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ4段リターン/タイヤ:前後2.25-17/重量:95kg/価格:17万9000円(税抜/発売当時)

アウトドアをイメージしたクロスカブ

2013年(平成25年)、スーパーカブ110をベースにしたレジャーモデルのクロスカブが登場。レッグシールドを備えたスーパーカブ伝統の実用的な車体構成を踏襲しながら、タフなイメージのヘッドライト回り、幅広ハンドルなどでクロスオーバースタイルを強調。

エンジンはスーパーカブ110に搭載の空冷4ストOHC109cc。減速比の変更により、低回転域での力強い走りを獲得しているのがポイントだ。フレームは剛性に優れたバックボーンタイプのパイプフレームを採用。前後サスペンションは、「スーパーカ110プロ」に採用しているストローク量の多いタイプとし、アウトドアでもより快適な走行を実現している。

●クロスカブの諸元

全長:1945mm 全幅:815mm 全高:1150mm/エンジン形式:空冷4スト単気筒OHC109cc/ボア×ストローク:50.0mm×55.6 mm/最高出力:8.0ps/7500rpm/最大トルク:0.87kgm/5500rpm/ミッション:自動遠心式クラッチ4段リターン/タイヤ:前後2.75-17/重量:105kg/価格:26万5000円(税抜/発売当時)

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