ホンダ50ccスポーツの元祖、スポーツカブC110

スーパーカブC100誕生から2年後の1960年(昭和35年)10月、新設計のプレスバックボーンフレームを採用した「スポーツカブC110」が登場。ホンダ50ccスポーツの歴史は、ここから始まった。

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エンジンは細部まで変更

当時の若者に高い人気を誇った、ホンダ初のスポーツ50ccモデル、スポーツカブC110。

フレームはスーパーカブC100とはまったく異なる、新設計のプレスバックボーンを採用。エンジンはC100に搭載のOHV49ccがベース。

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1959年(昭和34年)のマン島TTレース125ccクラスで活躍した2バルブエンジン搭載のGPレーサー「RC141」のデータが反映させているのも大きなポイントだ。

RC141とは

日本のバイクメーカーが初めて世界GPに挑戦した記念すべきワークスマシン。エンジンは4ストロークDOHC空冷2気筒2バルブ、ボア×ストローク44×41mm、ミッションは6速。 

rc141-142

出典:日本モーターサイクルレースの夜明け

ハイカムシャフト、大型フィン付アルミ製シリンダーヘッド、高圧縮型ハイコンプピストン、ギアレシオを見直した手動クラッチ式3速ミッション(64年、4速に仕様変更)などを導入し、スポーツ性能を大幅に向上させている。

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最高速は85km/hをマーク

バーハンドル、セミダブルシート、ニーグリップも可能なラバー付の大型6Lタンク、アップ型マフラーなど、当時のスポーツモデル定番のアイテムをフル投入。

スポーティーな外観はもちろん、走りの方もアグレッシブで、最高速は85km/hをマークした(カタログ値)。

このC110は、2年後の1962年に登場するDOHC49ccエンジン搭載のスーパースポーツ「CR110カブレーシング」の前身ともいうべきモデルである。

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ニーグリップもできる容量6ℓのガソリンタンク。タンクの両サイドにはホンダのウイングマーク、ニーグリップラバーを装備。

スーパーカブC100ベースのOHV49ccエンジン。圧縮比を9.5まで高め、最高出力は5.0ps(C100は4.3ps)までパワーアップ。リッターあたり100psを実現している。

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冷却効果を高める大型フィン付きアルミシリンダーを採用。

■スポーツカブC110の諸元

エンジン形式:空冷4スト単気筒OHV49cc/ボア×ストローク:40mm×39mm/最高出力:5.0ps/9500rpm/最大トルク:0.39kgm/8000rpm/ミッション:手動式クラッチ3段リターン(後に4速化)/最高速度:85km/h/タイヤ:前後2.25-17/重量:66kg/価格:5万8000円(発売当時)※1960年の公務員初任給:約1万800円 

 

1961年には積載性を考慮したシングルシート+荷台装備のスポーツカブC110S(発売当時:5万8000円)がリリース。

1961年にはダブルシートを装備した、二人乗りも可能な54ccの原付2種モデル、スポーツカブC115(発売当時:6万円)が登場。

エンジンはスポーツカブC110をベースに、ボアを40mmから42mmに拡大。パワーは5.5psにアップされている。

C110用エンジンとC100用エンジンの違い

スーパーカブC100のシリンダーヘッドはスチール製。

一方、スポーツカブC110のシリンダーヘッドは、軽量かつ放熱性の高い大型フィンを備えたスポーツモデルならではのアルミ製としている。

また、オイルの通路となるライン(写真下の矢印の管)も異なる。

C100用はクランクケース側からシリンダーヘッド側に直接つながっているが、C110用はキャブレターを経由している(ただし年式によってはC100と同様)。

スポーツカブC110のオイルの流れ。

スポーツカブC110のオイルの流れ。

スーパーカブC100のエンジン。

スーパーカブC100のオイルの流れ。

エンジンオイルがキャブレターを経由している理由

これはPW型キャブレター(PC型の前身モデル)が冷却風によってガソリンをアイシングしやすく、霧化の性能がかんばしくなかったことが原因だとされる。

つまりオイルラインのキャブレター経由は、オイルの熱によってキャブレターを温める=霧化の性能を上げるのが目的だった。このシステムは、1964年発売のスポーモデル「ベンリイCS90」や1965年発売の「ベンリイCS50」にも継承されている。

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マニホールドの長さにも注目

両者は吸気系の違いも明確。スポーツカブC110は、長いインテークマニホールドを備えたフレームマウント型のサイドドラフト式キャブレター。

スポーツカブC110

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スーパーカブC100

一方、スーパーカブC100は、ショート型インテークマニホールドを採用したダウンドラフト式キャブレターを採用。「スポーツモデル=キャブと燃焼室を近づける」という現在の常識とは相反する、C110の吸気系システム。これはなぜだろう?

当時のホンダ小排気量スポーツモデルの多くには、ロング型のインテークマニホールドが採用されていた。

これはトルクを稼ぐためのもの。パーコレーション(ガソリンが気化して噴き出す現象)を防ぐため、ゴム製のインシュレーターを採用して断熱化しているのも見逃せないところ。

   スポーツカブC110のエンジン ※1960年モデル スーパーカブC100のエンジン ※1958年モデル 
 圧縮比  9.5  8.5
 最高出力  5.0ps/9500rpm   4.3ps/9500rpm
 最大トルク  0.39kgm/8000rpm  0.33kgm/8000rpm
 燃費  90km/ℓ(30km/h定地走行)  90km/ℓ(30km/h定地走行)
 キャブレター  ケイヒンPW16FA  ケイヒンHOV13

モンキーCZ100用タンクはスポーツカブ用を流用

 1963年(昭和38年)に登場したモンキーCZ100は、1961年型スポーツカブC111の6ℓメッキタンクを流用してコストダウンが図られた。

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