バイクのクラッチ – しくみと構造

バイクのクラッチ

ボアアップ等でパワーアップされたエンジンは、ノーマルクラッチのままでは「滑って」しまうため、クラッチ板=フリクションディスクの枚数を増やして強化してやる必要があります。では「クラッチが滑る」とはどういう現象なのでしょう? キーワードはズバリ、フリクションディスクの「圧着力」。クラッチのしくみや構造を見ながら解説します。

クラッチのしくみ

クラッチケーブルを介し、クラッチレバーにつながったクラッチカバー側のクラッチアーム。写真下はクラッチを離した状態で、クラッチアームはまだ動作していません。

モンキーのクラッチレバー
モンキーのクラッチアーム

クラッチレバーを握ると、クラッチカバー側のクラッチアームが作動してクラッチが「切れる」。クラッチが「切れる」とは、クラッチレバーを握ると「リフターロッド(下写真参照)」がプッシュされる~圧着していた「フリクションディスク」と「クラッチプレート」が分離・開放される~エンジンの動力が遮断されることです。

モンキーのクラッチレバー
モンキーのクラッチアーム

クラッチの「リフターロッド」

指先で持っているのが「リフターロッド」。このパーツはクラッチカバー裏の凹部分に設置されています。

モンキーのクラッチカバー

▲クラッチレバーを握る~クラッチアームが動作する~クラッチカバー裏に設置された「リフターロッド」がプッシュ(内側に押し出される)される~というしくみです。

モンキーのフリクションディスク交換

▲写真上はクラッチを放した状態。つまりクラッチがつながった状態です。

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▲写真上はクラッチを握った状態=クラッチを切った時の状態。リフターアームが前方に作動し、クラッチリフターロッドがクラッチ側に「にゅ~」っと突き出てきます。

モンキーのフリクションディスク交換

クラッチカバーの裏側に固定されたクラッチリフターロッドの反対側、つまりクラッチ側にもリフターロッドが仕込まれています。このパーツが上下に動く=クラッチが「切れる」「つながる」という構造になっています。

クラッチの構造

写真下は、フリクションディスク(ライニング=摩擦部を備えた金属製の丸い板)を5枚採用した圧着力の高いモンキー用クラッチ(ボアアップ用。スモールパワーのノーマルモンキーはフリクションディスクが1枚)。

モンキー用の社外クラッチには、フリクションディスクを6枚採用してさらに圧着力を高めた、超パワフルなオーバー125ccに対応の6ディスククラッチ仕様もあります。

バイクのクラッチ

出典:SP武川

クラッチが「切れる」とは?

前出の「リフターロッド」がプッシュされる(クラッチレバーを握ると内側に押し出される)と、クラッチスプリングが動作し、圧着されていたフリクションディスクやクラッチプレートが分離・開放されてエンジンの動力を遮断。クランクシャフトのみが空回りし、ギヤ側への回転運動が遮断されます。

クラッチが「つながる」とは?

クラッチレバーを放す(戻す)と、開放されていたフリクションディスクとクラッチプレートが再び圧着。クランクシャフトの回転がミッション~リヤタイヤへと伝わります。

チューニング車にクラッチ強化が必要な理由

ノーマルのモンキー&ゴリラ用クラッチは、フリクションディスクを1枚のみ採用したタイプ。パワフルなボアアップ車の場合、フリクションディスク1枚では、モンスターパワーを抑制すること=確実に圧着することはできません。ディスクブレーキを例に説明します。

モンキーのブレーキレバー

ブレーキレバー=握れば圧着、離せば開放

クラッチレバー=握れば開放、離せば圧着

ディスクブレーキはレバーを握る→ブレーキパッドがディスクローターを圧着してスピードを抑制。

一方、クラッチはレバーを放す→フリクションディスクとクラッチプレートが圧着してエンジンの動力を伝達。

ブレーキパッド=フリクションディスク、ディスクローター=クラッチプレートと考えた場合、両者は目的こそ違えど、非常によく似た存在であるといえます。

モンキーのディスクブレーキ

大パワーを受け止める方法

ディスクブレーキは、ディスクキャリパーに固定した「ブレーキパッド」で円盤状のディスクローターを挟み込む=摩擦によって回転を止めるしくみ。

例えば時速250km/hで走る大排気量のレース用マシンにゴリラ改のキャリパー(NSR50用)を付けたとしたらどうでしょう?

ブレーキの性能が250km/hという超高速で走るヘビー級の大排気量車を抑制できずにコースアウトとなるはず。

「クラッチが滑る」というのは、『ブレーキを掛け続けているけれど、性能が追い付かずに止まらない』これによく似た現象です。

具体的には、エンジンパワー(=スピード)に対し、圧着力が足りずにフリクションディスク(=ディスクローター)が空回りしてしまう状態。

では時速250km/hで走るレース用マシンのディスクローターを3枚に増やし、ブレーキパッドの数を6個に増やせばどうなるでしょう?

ディスクブレーキ

ディスクローターとブレーキパッドの圧着力=摩擦力が高まり、制動力は向上するはずです。

パワーアップしたエンジンのクラッチは、フリクションディスクとクラッチプレートの枚数を増やして圧着力=摩擦力を上げてやる。これが不可欠なのです。

ディスクブレーキの場合、スペースの問題上、ディスクローターの枚数やディスクキャリパーの個数を増やすことはせず、ディスクローターの大径化やディスクキャリパーのピストン数の増加(4POTや6POT等)、ブレーキパッドの摩擦部の変更や面積拡大等により制動力を向上させるのが定番です。

【クラッチの関連ページ・初級編】

→ モンキーとエイプのクラッチの違い

→ これがモンキーに採用の1次側クラッチ!

→ エイプに採用の2次側クラッチ

【クラッチの関連ページ・中級編】

→ 湿式クラッチと乾式クラッチの違いを知ろう

→ レースの観点から見た湿式&乾式クラッチ

→ 自動遠心式クラッチをマニュアル式クラッチにする方法

【クラッチの関連ページ・上級編】

→ クラッチの分解・組み付け

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